第五十三話 暴走
降りしきる雪のなか、[紫色の線光]が再び飛んでくる。
前線に居たヒーラー系が、急いで結界を張るも、間に合わなかった者たちが新たに死傷していく。
その間に、スライムの来夢と、ゴブリンの権蔵が、中央のラミア目掛けて走り出した。
おそらく本能によるものだろう。
それを紫蓮が、
「あ、おい!」
と、追いかける。
「ちょっと、待ちなさいよ!」
と言う幸永歌を筆頭に、永虎たちも後に続く。
馬上の侍王は、
「また、勝手に。」
と、いささか呆れたものの、
「仕方ない、こちらの攻撃が届く範囲まで近づくぞ。」
と千代らを動かしたのである。
一方、敵軍の最後尾では、天蓋付きの煌びやかな椅子に腰掛けている男が、グラスに注がれた葡萄酒を飲んでいた。
玉座にグラスや、身に纏っている甲冑は、金を基調として作られているようだ。
髪の毛や髭が、ところどころ白いその男は、背丈が4Mに達しており、1対の翼が生えている。
50代に見えなくもないが、実際は、500年以上は生きているであろう。
その男が、
「ふむ。」
「奴らの働きによって、戦況が覆りそうだな。」
「南方領主の子らは、なかなかに役立っているようだ。」
と、笑みを浮かべた。
そう、あの三体の“成れの果て”は、餌にされてしまった南方領主の子どもたちである。
「これより最前線に赴く故、準備いたせ。」
と下知した男に、側近らが、
「は!陛下!」
と、頭を下げた。
亡骸や、負傷者の手当てをしている者たちの隙間を縫うようにして、来夢と権蔵がラミアに迫る。
距離を詰めた来夢が、おもいっきりジャンプしながら大風呂敷のように、
ブワッ!!
と広がった。
ラミアの側に構えていた敵兵が、新たにビームを発射させるべく、蛇の体を剣で斬ろうとする。
それを察した権蔵が、口から直径40㎝の“火の玉”を、
ボォウッ!
と、放ち、兵に直撃させたのと同時に、来夢が、ラミアの顔を〝グルンッ!〟と覆う。
窒息させられるのを嫌がったのか?ラミアが両手で来夢を剥がそうとするも、半液体状のスライムを掴めずにいる。
そんなラミアを、権蔵が、すかさず槍で刺したところ、
「グオオオオッ!」
と呻きながら、光線を乱射しだした。
あちらこちらにビームを飛ばしまくるラミアに危険を感じた連中が遠ざかっていく。
鎖を持っていた面子までもが避難した事によって、自由になったラミアが暴れ出す。
「来夢、権蔵、離れろ!」
後方から指示する紫蓮が両手で握り締めている“本物の刀”が、
バチッ!バチバチッ!バチィッ!
と、雷を纏っていくのであった―。




