第四十四話 清虎の実力
「くッ!」
と、左(紫蓮たちからは右)に逃れようとするも、躱しきれなかった神の右の翼に、
ボォワッ!
と引火する。
「一刀では足りなんだか…。」
「皆、すまんが、30秒、時間を稼いでくれ。」
と、告げた清虎に従い、片翼の4割を焼失してバランスを崩し、着地した相手に、紫蓮らが挑む。
しかし、右腰に備えていた鞭で牽制されてしまう。
幅30㎝×長さ5Mの鞭を、左手で縦横無尽に振るう敵によって、地面が、
ドゴォンッ!!
バゴォンッ!!
と派手に削られていく。
その衝撃にダメージを負いながらも、紫蓮たちが、スキルや魔法に武器で対抗していた。
彼らの反撃は一応にヒットしているが、致命傷を与えることは出来ていなさそうだ。
女型の神が、地上10Mの位置に、直径5Mの魔法陣を出現させる。
そこから、幅15㎝×長さ70㎝の白い光線が、100発ほど降り注ぐ。
紫蓮らは一斉に避けたものの、完全には間に合わず、全員が怪我してしまったようだ。
そこを、金時が【癒しの光】で即座に回復させていく。
と同時に、30秒が経ち、リキャストタイム(クールタイム)を終えた侍王が、刀を左手に持ち替え、空いた右手で脇差を抜いた。
「ふぅ――ッ。」
と、息を吐いて、
「どれ。」
と狙いを定めた総帥が、炎を宿した2本の刃を、
「ふんッ!!」
と、突き出す。
1つに重なった“火炎の渦”が、先程よりも速度と威力を増して、紫蓮たちの頭上を、
ヒュゴオオオオオオオオッ!!!!
と通過していく。
直径は4Mぐらいであろう。
それが、神の胸から上に、
ズボォゥワッ!!!!
と、直撃した。
片方の翼を失っていた女型の神は、機敏な動きが出来なかったようだ。
全身の上部が消し炭になってしまった敵が、仰向けで、
ドォオンッ!!
と倒れる。
「ふぃ―ッ。」
と、一仕事終えた感の清虎に、ウィッチである孫の幸永歌が、
「お祖父様、凄ぉ~い。」
と驚き、紫蓮らも目を丸くした。
千代の、
「これが、清虎様の本気…。」
との呟きに、
「ん?」
「今ので、まだ7割くらいじゃぞ。」
と、侍王が返す。
この発言には、誰もが、再び、ビックリさせられたようだ…。
総大将である南方領主の死を目の当たりにした敵兵たちが散り散りに逃げていく。
ヒーゴン軍の中央隊・左翼隊・右翼隊が勢いづき、最後尾も押し上がって来た。
その場に待機しているラルたちに、総帥が優しく、
「ここはもういいから、保次とバンヌを宿営地まで運んでやれ。」
と促す。
ラルが、
「ありがとうございます!」
と、頭を下げ、ヴォニーも会釈する。
「俺も構いませんか?」
「班長らには世話になったんで。」
と窺う紫蓮に、
「うむ。」
「少しでも側に居てやるが良い。」
と、目を細める清虎だった―。




