第四十二話 打開
敵どもを倒していく紫蓮たちに、千代らが追い付いた。
「いきなり走り出して、どうし」と言いかけた千代が、保次とバンヌの遺体に気づき、金時・フーリィ・セルグも口を閉ざす。
更に、彼女たちの後ろから来た清虎が、馬上で、
「なんじゃ、なんじゃ、一体?」
「勝手に行動しおって!」
と立腹するも、即座に状況を理解して、
「成程、の。」
「保次に、バンヌが、逝ってしもうたか…。」
と、哀しんだ。
しかし、感傷に浸る間もなく、〝ハッ!〟とした侍王が、
「金時!結界を張れぃッ!!」
と命令する。
狸の獣人である金時が条件反射的に展開した直径10M×高さ5Mでドーム状の結界に、直径1Mの白い光線が、
ドンッ!!
と、ぶつかった。
ラルとヴォニ―を包囲していた連中を既に一掃し終えている結界内にて、その中心に、皆が集まっていく。
その間にも、保次の命を奪ったあの神が、結界に近づきながら、
「このッ!出て来いッ!卑怯だぞッ!」
「僕が殺してやるから、結界を解けよッ!」
と怒鳴っている。
ズバンッ!
ズドンッ!
と、光線を当てられ続けている結界内で、狼の獣人であるフーリィが、
「やれやれ、なんだか、ただの“ガキンチョ”って感じだねぇ。」
と呆れ顔になった。
「ふぅむ…。」
「ともあれ、あ奴が疲れるのを待つしかなさそうじゃのぉ。」
と、述べる総帥に、〝フ〟と空を見上げたセルグが、
「いや、そうでもなさそうですよ。」
と伝える。
誰もが「ん?」と首を傾げたところ、上空から、
ヒュゥ――――ッ!!
と、斜めに急降下してくる者がいた。
身長は1.9Mくらいだろう。
着物系の黒装束を身に纏っている鷹の獣人が、神の右肩を左足で、右脇腹を右足で、
ドォンッ!
と押して、地面に倒し、そのまま乗っかったようだ。
これに、金時とフーリィが揃って、
「信義!!」
と、声をあげ、総帥が「ほ、ほぉう。」と笑みを浮かべた。
余談になるが…、金時/フーリィ/信義は、もう2体の獣人たちと一緒に、清虎の妻であった彩永に仕えていたそうだ。
彩永が他界した後に、金時とフーリィは侍王の近衛兵となり、アサシン(忍者)である信義は隠密隊に所属した。
他の2体は「2~3年ほど諸国を旅して見聞を広めとうございます。」との理由で、“武者修行”に出ているらしい。
さて、話しを戻そう…。
横倒れで押さえ付けられている神が、どうにかこうにか左手で、
「このッ!」
と放った直径1Mのビームを、鷹の獣人が大きなバックステップで躱した。
上体を起こしつつ、
「くそッ!邪魔だッ!」
と、兜を脱ぎ捨て、
「鳥の分際で生意気だぞ!」
「あの世に送ってやるから、向こうで後悔しろッ!!」
と目をギラつかせる神の背後から、
「お前がな。」
と、誰かが告げたようだ。
「何ッ?!」
と驚いた神が振り返ろうとする。
その首を、後ろから、濃い紫色の煙のようなものを発している刀身で、
ズブシュッ!!
と、刺したのは、隠密隊の指揮官である“影”だった―。




