第四十一話 悲しみと怒りの交錯
敵の攻撃に備えて、ラルと、ヴォニ―が、背中を預け合う。
「ごめんね…、私が見境なくした所為で。」
と謝るラルに、ヴォニ―が優しく、
「ま、気にするな。」
と、声を掛ける。
「ふぅ――ッ。」
と息を吐いたラルが、
「向こうに行っても、また皆で仲良く楽しく過ごそうね。」
と、力なく微笑み、
「ああ。」
とヴォニ―が憂いながら頷く。
彼女らは〝もはや助かるまい〟と完全に諦めているようだ。
包囲している連中が〝ジリッ、ジリッ〟と滲みよってきた。
その南側から、幅5㎝×長さ4Mの“雷”が、横一文字で、
ビュンッ!
と、飛んできて、7~8人の敵に当たり、
ビリビリビリビリィッ!!
と感電させたのである。
膝から崩れ落ちていくソイツラの先には、刀を手に鬼の形相で駆けてくる紫蓮の姿が見えた。
その左斜め後ろにはスライムの来夢が、右斜め後ろにはゴブリンの権蔵が、並走している。
更には、永虎・幸永歌・永美香・凛琥が、ほぼ横一列で追っているようだ。
先ほど倒れた奴らの左にいる男の顔に、来夢が左の飛び蹴りを〝ズバン!〟ヒットさせ、その近くにいた別の敵に右かかとでの回し蹴りを〝ガツン!〟と当てた。
権蔵は、右側にいた連中に対して、口から直径30㎝の“火の玉”を放つ。
紫蓮たちに倒されて、
「ぐうぅッ。」
と、呻きながら立ち上がろうとするソイツラの足元に、幸永歌が直径2Mの魔法陣を展開した。
そこから、最小幅20㎝×最大幅2M×高さ4Mの“渦巻く風”が出現して、敵を吹き飛ばしたのである。
そうして出来た道を、クレリックの永美香が通過していく。
いささか呆気に取られている西側の敵たちに向けて、永虎が左の掌を突き出す。
すると、奴らの膝下あたりに、オレンジ色で直径40㎝の球体が〝ス――ッ〟と現れて、次の瞬間には、
ドッゴオォンッ!!
と爆発し、10人ぐらいを弾いたのである。
東側に構えている連中には、凛琥が、右の掌から最大幅10㎝×長さ20㎝でクリスタル形の“氷の塊”を50発くらい発射して、4~5人にヒットさせた。
ちなみに、ダメージを負っているのは、人間だけでなく、獣人や半獣に、サーヴァントの魔物も、含まれている。
紫蓮たちが肉弾戦での乱闘を展開しつつ、幸永歌が火・水・氷・風・雷・土といった魔法を次々に発動させていく。
そんな喧騒のなか、保次とバンヌを診た永美香が、首を横に振った。
「そっか…。」
と、涙を浮かべるラルを、ヴォニ―が、
「まだ終わってないよ。」
「やっぱり私たちは生き残って、彼らを弔ってあげよう。」
「きちんと、丁寧に、さ。」
と促す。
それを受けて、
「……だね。」
「うん!」
「そうしてあげよう!!」
と、活力を取り戻すラルであった―。




