第三百三十二話 大規模戦・其之弐
ソイツは、もともとは“中級神”であった。
しかし、[北陸第五神国]の王に即位したとき、“上級神”に進化したのである。
そんな“新王”は、憤っていた。
自分の許しを得ずに撤退した[第二/第四/第六]の神どもに。
しかも、連中が前もって命令していたようで、人間が次々に投降している。
その様子を空中で確認しつつ、
「おぉのぉれぇ~ッ。」
〝ギリッ!〟と歯軋りした“第五の王”に、二発の【光線】が同時に放たれた。
王は、
「むッ?!!」
体を捻って避ける。
これらは、“女性機工士 スリア”の[鳥型ロボット]が、背中に搭載されている左右のビームライフルから撃ったものだ。
下ばかり見ていた王は、正面から敵が近づいて来ていたことに、ようやく気づいた。
それは主に[GOD SLAYER’S]と[PEACE MAKER’S]の“サーヴァント達”である。
王に従っている“五十柱の中級神”に“千柱の下級神”も状況を理解し、“黒龍の新羅”などの突撃を防ごうと、急ぎ構えだす。
こうしたところに、陸地から、幾つもの【スキル】や【魔法】に【ビーム】などが飛んできた。
[ゴッド・スレイヤーズ]と[ピース・メーカーズ]によるものだ。
そちらに注意を奪われた神どもへと、新羅たちが【スキル】を扱う。
この事態に、神々が慌てだす。
(ん??)
(かなりパニクってねぇか?)
素朴な疑問を抱いたのは“男性騎士のグーラン”である。
いささか離れた位置では、“男性武士の紫蓮”が、
(さてはアイツラ、戦い慣れてねぇな。)
そう睨んだ。
実際のところ、この推理は正しかった。
もともと[北陸第三神国]で暮らしていた彼奴らに、本格的な戦闘経験は無い。
それは、[第一]と[第二]もだ。
長いこと国境付近で魔族と争ってきたのは[第四/第五/第六]である。
これら以外の神どもは、割と平穏に生活してきた。
個の強さはあっても、組織になると弱い。
上手く連係できないがために。
そんな神々を、紫蓮達が攻める。
これに、“第一魔王子 ハールストー”の[先陣]が続く。
他の各部隊は、捕虜を捉えていた。
そうしたなか、
「くッ!」
「致し方ない…。」
「退却だ!!」
「立て直すぞ!」
“第五の王”が決断する。
これによって、神どもが逃げ始めた。
そこへ、新羅が【黒雷】を用いる。
何十柱かの神は、これが背中にヒットした。
そのなかには王もいたようだ。
結果、墜ちてくる。
これが視界に入り、
「でかした。」
〝ニヤリ〟と笑みを浮かべる紫蓮だった―。




