第三百二十七話 紛紜・其之陸
【瞬間移動】を備えているのは、“女性ダークエルフ”を含めた5名である。
彼女らによって紫蓮達が【テレポーテーション】した…。
円形の開けた所に渡っている。
あちらこちらには、魔人や魔物などの遺体が横たわっていた。
周囲から争う声と音が聞こえてくるが、姿はない。
きっとそれなりに離れているのだろう。
他には、いろんな建物が燃えており黒煙が立ち昇っている。
「ここは?」
素朴な疑問を投げ掛けた“第四魔王子 イリィターン”に、
「中央広場にございます。」
こう答えたダークエルフが、
「私たちの代表者に連絡してみますので、少々お待ちください。」
[ブレスレット]を操作しだす。
……、数秒後。
「なんだ??!」
「今こっちは悠長に喋っている暇はないぞ!!」
そのように返ってきた。
どうやら男性みたいだ。
「現在、第四魔王子のイリィターン殿下と一緒です!」
「これより、殿下がそちらに助力してくださるとのこと!!」
女性ダークエルフが知らせたところ、
「おお!」
「実にありがたい!!」
「我々は、北の大通りで戦闘中だ!」
「あとはよろしく頼む!!」
急ぎばやに伝え、通話を切る“魔人”だった。
聞こえていた“騎士のグーラン”が、
「そんじゃぁ、さっさと合流しようぜ!」
皆を窺う。
「あぁ、そうだな。」
頷いた“武士の紫蓮”は、
「号令を。」
第四魔王子に勧める。
これにより、
「行こう。」
そのようにイリィターンが述べた事で、一同は北を目指しだす…。
いくつもの亡骸が転がっている道を暫く歩いていたら、激突している集団が目に映った。
片や、50体あたりの“ガーゴイル”が、宙で動き回っている。
空中浮遊できる魔人などが対応しているものの、こちらは30数ほどのようだ。
地上でも、両部隊がバトルを展開していた。
魔王派は40前後のメンバーで、反魔王派は倍ぐらいだろう。
そのため、味方のほうが押されている。
だが、紫蓮達が加わったことで、形勢が逆転してゆく。
不意に一斉攻撃を浴びた敵どもが慌てだす。
宙にて、
「連中の仲間か?!!」
こう察したのは、他よりも豪華な[騎士の甲冑]を装着したガーゴイルだ。
“総大将”であろうと推測できた。
槍の一種である[パルチザン]を右手に持っている。
「空中にいるヤツラには、俺が当たろう。」
そのように第四魔王子が告げると、
「だったら、飛べる面子は補佐を。」
提案した紫蓮に、二足歩行型になっている“黒龍の新羅”であったりが、首を縦に振って応じた。
「ならば、この表通りは、紫蓮に任せる。」
「構わないか??」
こうイリィターンに尋ねられ、
「……、了解。」
紫蓮が引き受ける。
そこで、
「必ず従えよ。」
念の為、女性ダークエルフらに命じる第四魔王子であった。
「御意。」
ダークエルフたちが頭を下げると、
「では、向かおう。」
イリィターンが上昇を始め、新羅などが続きだす。
こうした状況にて、
「じゃ、それぞれ、好きに暴れろ!」
〝ニッ〟と笑みをこぼす紫蓮だった―。




