第三百二十一話 紛紜・其之壱
“第一魔王子 ハールストー”と“第四魔王子 イリィターン”それぞれの[連合軍]には、〝足並みが揃うか否か〟という懸念があった。
しかし、〝どちらも魔族の集まり〟なだけあって、取り越し苦労だったようだ。
第一魔王子のほうは、ハールストーや“リーダーの男性魔人”を中心とした幹部達で作戦をまとめている。
このうえで、細かい指示をその場で伝令させていた。
移り変わる戦況に応じて。
第四魔王子のほうは、イリィターンと“副リーダーの女性魔人”を軸とし、“魔術士のタリアノ”による策を用いている。
結果、[北方領]の南側でも南西側でも、連合軍が敵を押していた。
どうやら数的有利というのも影響しているみたいだ。
これらによって、南西では[反乱軍]が退却を始めた。
その様子に、
「妙ですね。」
「敵は陣形が崩れ出したとは言え、退くには早すぎます。」
「何かしらの罠を仕掛けている位置まで、こちらを誘いたいのかもしれません。」
「追撃するのであれば慎重を期したがいいでしょう。」
タリアノが意見する。
〝ん〟と頷いた第四魔王子は、全軍に下知するのだった…。
付かず離れず進んだ約10分後。
眼前に[高さが4Mありそうな草むら]が広がっている。
敵は、草をかけ分けたり、浮遊して、逃げてゆく。
この光景にタリアノが、
「いくらでも“伏兵”を忍ばせておけますね。」
「このまま追えば、あちらの大将の合図で一斉に襲ってくるかと。」
そう推測した。
イリィターンが味方の軍勢を止まらせたところで、
「どうなされます? 殿下。」
「迂回しながら進軍するにせよ、野営していた場所まで戻るにせよ、背後を突かれる危険があります。」
副リーダーが伺う。
「……。」
少し考えた第四魔王子は、
「いっそ、燃やすか。」
「草むらを。」
こう述べる。
その案を、
「かしこまりました。」
冷静に受け入れる副リーダーであった…。
【火炎系の魔法やスキル】が幾つも放たれる。
タリアノが読んでいた通り、草むらには敵が潜んでいた。
炎と煙に包まれだすなか、連中は慌てながら【水】や【氷】を扱い消化を試みる。
これらの【魔法】に【スキル】を備えていない者らは、急ぎ脱出を図った。
そこへ、[連合軍]が【爆発】や【雷】に【風】なども飛ばす。
伏兵たちは対抗しようとするも、20万ほどの数なため、無駄でしかない。
状況を知ったらしい主力が引き返してきたものの、こちらに圧倒され、ただただ焦るばかりだった―。




