第三百十九話 趨勢・其之漆
南に隣接する反逆国――。
先日、魔王に従っている“女魔将軍”が250万の兵を率いて駆けつけた結果、敗れた独立国家だ。
そこでは、第二陣を北上させるべく戦準備を整えていた。
この西側に[第六神国]が在る。
援軍として400万を東に向かわせようとしていた。
が、事態が変わってしまい、計画を一旦ストップさせている。
北の[第五神国]で内乱が起きたからだ。
数日前、あそこの女王が“第一魔王子 ハールストー”に討ち取られたのが発端になったらしい。
後継者だった神も、あの時の戦で亡くなっている。
そのため、生き残っている親族が真っ二つに分かれ、跡目争いに突入していた。
[第六]は、ここに介入しようとしている。
いや、[第五]に接している近隣の神国は、どこも同じことを企みだした。
[第五]を手中に収め、勢力を拡大したいのだ。
それは、北の[第四]と、南西の[第三]や、北西の[第二]である。
こうして、[北陸]の神どもは、大規模な内輪揉めになろうかとしていた。
しかし、その状況を知った“帝王”が〝優先すべきは余らに敵対しておる者どもの撲滅であって、同族での殺し合いではない!〟〝余の許可なく動けば命をもって償わせる!!〟と宣告した事によって、同士討ちが避けられる。
とは言え、釈然としない神々もいた。
これは帝王も理解している。
そのため、第二から第六の[神国]で代表を決めさせ、闘わせることにしたのだ。
〝勝利した所が第五を治められる〟として。
こうなると、どこも、特に強い“王”や“女王”が参加するだろう。
よって、死者が出て戦力ダウンに繋がらないようにすべく、武器は[鉄製]で、【ビーム】の使用は禁止、と定めた。
[第五]に関しては〝それぞれの派閥から代表を選んでよい〟としている。
まぁ、そうしたところで[第五]は最も不利なのだが。
いざこざを早く終わらせたい帝王にとっては、どうでもいい事であった。
なお、帝王の[第一神国]は北陸の最西端に位置している。
ここの[帝都]に、神々の一部が集まりだす…。
神どもの内情からして、南の[反逆国]は、第一魔王子の攻略を見送ることにした。
そうしたところで、こちらも紛争になっていく。
前々からハールストーに付こうと考えていた魔族達が、隙を窺っていたのである。
これは、国の四割ほどだった。
その者らが第一魔王子に援軍を乞う。
魔王への生涯忠誠を誓って―。




