第三十話 城塞都市
清虎が、此度の戦における、第一功労者を虎政とし、第二功労者を晴清に定めたのである。
更に、第三功労者に選ばれたのは、紫蓮だった。
野営地に即席で設けられた恩賞授与の場にて、片膝を着いた紫蓮に、金貨100枚が渡される。
侍王が、
「その方を、千代らと同列である、儂の近衛兵とす。」
「勿論、そなたの眷属であるスライムとゴブリンも一緒にの。」
と、告げ、
「ありがたき幸せ。」
と返す紫蓮であった。
昼食中に、リスの半獣である“ラル”が、
「凄いね、紫蓮くん!」
「あっという間に出世しちゃって☆」
「何だか、私まで鼻高々だよッ!」
と、我がことのように喜んだ。
「はぁー。」
「立場がねぇ。」
と少なからずガックリしているのは、“保次”だった。
犬の半獣である“バンヌ”が、
「班長は、勤続10年なのに、うだつが上がらないしね~。」
と、述べたところ、褐色肌の“ヴォニー”が、
「まぁ、お前に悪気が無いのは分かるが…、身も蓋もないだろ。」
と諫めたのである。
ラルの、
「それ、フォローになってないよ。」
とのツッコミで、一同に笑いが生じたのだった。
PM13:00――。
清虎が、国主の座を退き、[総帥]になる旨を公表した。
その後、“新国主”となった虎政が、軍勢の半数を率いて帰路に着いたのである。
彼は、先んじて、ヒーゴン国の“旧市街”を視察に行くようだ。
もし、魔物どもが根城にしているのであれば、そのまま一層するためにも、それなりの兵を伴ったのであった。
一週間が経ち、引っ越しの準備が整った城塞都市の住民を、晴清が、待機していた軍に護衛させながら出発する。
そして、侍王を始めとした残りの10万が、その都市に入ったのだった…。
近衛兵となった紫蓮は、城内の一室を貰ったようだ。
とは言え、15畳ほどの4人部屋だったが。
それでも、1人+2体だし、来夢は自身の体を縮小できるので、スペースには割と余裕がある。
彼らの新しい任務は、城内の見回りや、侍王の付き添いとして都市内をパトロールする事だ。
それ以外の暇な時には、城に常設してある訓練場で、千代たちに稽古をつけてもらっている。
以前、指摘されたからだろう、苦手であるにも関わらず、“セルグ”も参加していた。
紫蓮/来夢/権蔵は、滅多に左利きと対峙したことがなかったので、日々、苦戦を強いられていたが、かなり勉強になっているようだ。
一ヶ月後には、完全に冬となっていた。
清虎が、暖炉の側で、
「寒さが身に凍みるのぉ~。」
と、ぼやきながら、グラスに注がれているブランデーを口に運ぶ。
そこに、虎政からの、〝既に旧都市を占拠していたモンスター達の駆逐を終え、民家の多くを修復している〟ことや〝2~3日中には、新たな面子が、そっちに到着するだろう〟との連絡が入ったのであった―。




