第二百八十九話 防衛戦・其之陸
何日も前の事だ。
ニッショウ軍は、野営地に幾つかの[物見櫓]を築いていた。
それらでは数人が交替で敵陣を監視している。
[望遠鏡]を用いて。
……、現在。
詳しくは、[オワ-リン軍]が合流した翌朝。
テント(ゲル)の[出入口]に“10代半ばの青年兵士”の姿があった。
どうやら“伝令”のようだ。
「間違いないか?」
こう尋ねた“武士の紫蓮”に、
「はい。」
「確かに帝のみが使用できるという旗を掲げています。」
青年が答える。
「分かった。」
「ご苦労。」
「下がっていいぞ。」
そのように紫蓮に言われ、〝ハッ!〟と一礼した兵士が、小走りで去ってゆく。
「来ましたね。」
“武闘家のランダ―”が声をかけたところ、
「ああ。」
「必ず倒そう。」
テント内の全員に、紫蓮が告げた。
なお、ここには、各サーヴァントやラーザ達はおらず、別の場所で待機している。
とかく。
紫蓮の指示で陣形を整えだす[ニッショウ]と[オワ-リン]の軍勢だった…。
神側も準備を終えたみたいだ。
そうしたAM10:00過ぎ。
〝すぅー〟と息を吸った紫蓮が、
「突撃ぃッ!!」
先頭を駆けてゆく。
勿論、[機械馬]で。
これによって味方が一斉に進みだした。
反応した敵もまた動きだす。
数十秒後、タリアノの前予想どおり、両軍が正面からぶつかり合う。
そうした戦場には、ロンド―たち[遊撃隊]の姿もあった。
ちなみに、連合の右側は[オワ-リン軍]が受け持っており、ラーザに判断を委ねてある。
“黒龍の新羅/ランソワの所のホワイトドラゴン/ランダ―のブルードラゴン”など、翼や羽を有する者らは、宙でバトルを行なっていた……。
一方。
[元・南陸第十二神国]に攻め込んでいるのは、[第三]と[第七]の軍勢およそ16000万である。
迎え撃つは、ここを制圧している[ブンゴ―]と[ヒューガー]であり、敵と同じくらいの兵数だ。
[元・第九神国]を守るは[イッワミー]と[ヒーゼン]である。
そこでは、[第二]や[第五]と争っていた。
主に海で戦っているのは[イッワミー軍]だ。
内陸の[ヒーゼン]には、軍艦が無いため。
この四ヵ国も、だいたいで800万ずつを動員していた…。
別の地にて。
平原で睨み合っている兵達がいる。
どちらも、また、800万ぐらいみたいだ。
空を眺めつつ、
「曇ってきたな。」
「……、まぁ、いい。」
ふと呟き、
「陣太鼓を鳴らすよう伝えてくれ。」
「押して参ろう。」
周囲の家臣たちに告げたのは、侍王の次男にあたる“晴清”であった。
そこは[チークゥゴーン]で、北東の[第六神国]との戦闘を開始しようとしている。
とある[本陣]にて。
「やはり、父上が出張る必要は無かったでしょうに。」
いささか呆れ顔になったのは[ヒーゴンの国主]たる“虎政”だ。
「ふッ。」
「案ずるでない。」
「指揮は全てお前に任せ、儂は余計なことを口にせぬようする故。」
「それに…。」
「歴史的な大戦を黙って傍観しておくなど、実につまらんではないか!」
愉快そうに返す“総帥の清虎”だった―。




