第二百八十一話 防衛戦・其之参
数百の“中級神”が【光線】を放つ。
だが、それらは、[ニッショウ軍]に対してではなく、下方に向けてであった。
つまり、味方を攻撃したのだ。
いや、連中にしてみれば、家畜ぐらいにしか思っていないのだろう。
こうした神どもが、
「戦え!! さもなくば殺すぞ!」
「お前らの町を滅ばされたいか?!!」
といった具合に、何かと脅しだす。
そこへ、紫蓮を先頭にした軍勢が、陸から空から【スキル】や【魔法】に【ビーム】を神々へと発射した。
なお、サーヴァントは、ほんの数十体で、その殆どが[ゴッド・スレイヤーズ]に従っているメンバーだ。
これは、神国に妖怪や魔族が棲息していないからである。
なんでも〝野良の妖魔などは本能的に神を嫌って住み着かないため〟らしい。
もとは神国であった[ニッショウ]も同じなので、サーヴァントを有している人間は皆無に等しかった。
それはさておき。
[ニッショウ軍]は、
「抵抗さえしなければ命は奪わん!」
「おとなしくしてろ!!」
「こちらの狙いは神どもだ!」
「控えてろ!!」
このように、敵側の人々に声をかけている。
板挟みにあう[南陸第十二神国]の兵士達の大半は、どうしたものか判断が付かず、戸惑っているみたいだ。
それとは逆に神たちを畏れた者らは、必死の形相で[ニッショウ軍]に向かってきた。
こうして乱戦となってゆくなか、[GOD SLAYER’S]は中央突破を試みる。
紫蓮達が目指すは、“敵本陣”だ。
それを察した幾らかの神が、阻もうとしだす。
割と近くにいた人間たちも気づき、襲い掛かってきた。
宙では、新羅などが対処している。
こうした状況にて、[紫蓮達パーティー]の背後で、
「国主様がたのために道を切り開け!」
「二手に分かれて押し上がれぇいッ!!」
ある男性指揮官が、自身の部隊に命じた。
彼は、午前にグーランと試合を行なっていた者だ。
その号令によって、およそ5万の兵が最前線に出始める。
更には、すぐ隣の左右に配置されていた二部隊が、これに続く。
それらも約5万ずつみたいだ。
ともあれ。
計15万数あたりが、邪魔だてしていた人々の動きを封じだした…。
敵の多くは統率が取れていない。
ただの“烏合の衆”を蹴散らすかのようにして、紫蓮らが“本陣”に迫る。
一方で、
「何をしている??!」
「早いとこアイツラを喰い止めろ!!」
ある“男神”が焦っていた。
“3M級”なので、中級神に違いない。
20代半ばの容姿ではあるが、実年齢は不明だ。
こうした総大将に、
「む、無理です!」
「王子殿下だけでも、お逃げください!!」
一緒にいる下級神たちが意見する。
「バッ、バカを申すな!」
「そのようなことをすれば、父上の怒りを買い、兄弟姉妹に笑われかねん!!」
「……、いや、しかし。」
「ここは、やはり…。」
総大将が悩みだしたところ、左側より【スキル】と【魔法】が飛んできた。
「なッ?!」
驚いて確認した王子達の目に、1万ほどの軍勢が映る。
それは、[ニッショウの遊撃隊]だった―。




