第十九話 侍王
丸坊主の男性は、65歳ほどであろう、鼻の下と顎に蓄えた髭や、眉は、白髪交じりで、痩せ型である。
赤色が基調の、黒色と白色とが模様が交じり合った、派手な着物に、黒色の袴と、草履といった装いで、左腰には刀と脇差を帯びていた。
鷲や鷹などの猛禽類みたいに鋭い目は、黒い。
馬の手綱を掴んでいる20代前半の女性は、身長165㎝ぐらいの華奢なタイプで、背中あたりまでの長さがある黒髪を一つに束ねており、前側は眉の上で〝パッツン〟にしている。
白いワイシャツに、ベスト/パンツ/革靴/ネクタイは黒色だ。
そのネクタイは緩めており、ワイシャツのボタンは一つ外していた。
腰にぶら下げているレイピアは、鞘も持ち手も銀色である。
馬の後ろには、狸型と、狼型の、獣人が控えていた。
狸の方は、背丈が175㎝程のオスで、白の着物に、明るい青緑の袴や、草履といった、宮司のような井出立ちをしており、刃を含めて2.5Mある薙刀の柄を肩に掛けている。
彼と同じくらいの身長である狼はメスで、毛並みはライトグレーだ。
ピンク色を基調とした武闘家の道着姿であり、左手には折りたたんだ赤色のヌンチャクを握りしめている。
最後尾には、人間の男性がいた。
背丈は170㎝といったところだろう、ブラウンの髪と顎髭は短い。
手綱持ちの女性とお揃いの服装だが、ネクタイは着けておらず、ワイシャツは胸元あたりまで開いている。
両方の袖を、肘の下まで捲っており、腰の右には、中剣を帯びていた。
2人の門兵が、
「これは、清虎様!」
「出かけておられましたか!」
と、慌てて最敬礼する。
「ひょっとして…、この爺さんが、“侍王”か?」
と窺う紫蓮を、
「バ、バカ野郎!」
「態度が悪すぎるぞ!!」
と、その二人が怒鳴りつける。
だが、どこ吹く風の紫蓮は、[清虎]と呼ばれた男性に、
「あんたが侍王で間違いないければ…、俺を家臣に加えてくれ!」
と願い出た。
女性と狸に狼が、〝無礼者!〟と言わんばかりに、構える。
一番後ろにいる男性だけは、右の胸ポケットから取り出した煙草に火を点け、静観しようとしていた。
馬上の主が、
「まぁ、待て。」
と、1人+2体を宥め、
「…小僧よ、何故、儂に仕えたい?」
と訊ねる。
これに対して、紫蓮が、真っすぐに、
「強くなりたいから。」
と、答えたところ、
「その理由は?」
と更なる問いが返ってきたので、
「神を殺すために!」
と、気おくれせず、堂々と発したのである。
スライムとゴブリンは然も当然といった感じだったが、他は呆気に取られてしまった。
しかし、次の瞬間には、
「ふははははははッ!!」
と豪快に笑った清虎が、
「うむ!その理由も、決意に満ちた表情も、なかなか見所がある。」
「我が直属の末席に連ねてやろうぞ!」
と、許可してくれたのだ。
承諾してもらえたのが意外だったのか、紫蓮は少なからず拍子抜けしてしまった。
そこを、あの門兵たちに、
「コラ!感謝いたさぬか!」
「そうだぞ!この、戯けめが!」
と叱られて、〝ハッ!〟とした紫蓮が、
「よろしく…、お願いします。」
と、頭を下げる。
互いに顔を見合わせた来夢と権蔵も、それに続き、お辞儀したのであった―。




