第十五話 厄介な相手
ズバッバッバッバッシュッ!!
と、ラットが放った幅4㎝×長さ1Mの〝水の矢〟によって、[ワーバット]が、胸元や腹部であったり、肩や腕に、太腿から、紫色の血を滴らせた。
一拍置いたソイツが〝あんぐり〟と口を開く。
【騎士】のバウンが、
「いけない!」
「皆、耳を塞いで!!」
と指示を飛ばしたことによって、誰もが自身の両耳を手で覆う。
人型蝙蝠の口は、目と同じく白い。
そこから、[超音波]が発せられた。
空洞内の壁に反射して、その効果が倍増していく。
「ぐぅッ!何だコレは?」
と、地面に膝を着きそうになる弥太郎が、苦悶の表情を浮かべた。
他のメンバーも、かなり、しんどそうだ。
それを〝ピタッ〟と止めたワーバットが、〝スゥ――ッ〟と宙に浮き上がっていく。
女盗賊のウィヴが、
「さっきので、やられちまったのかい?」
と尋ねたら、忍者の秀嗣が、
「初見の時は不意を突かれ、何が何だか分からないままに、あれをくらい、全員が方向感覚を失って、眩暈で気持ち悪くなり、しゃがみ込んでしまった。」
「その後に…」
と、説明しかけていたとろ、ラーザが、
「やばい!くるぞッ!」
「皆、壁際まで離れるんだッ!!」
と怒鳴ったのである。
15Mぐらいの高さにいる蝙蝠人間に視線を送ると、下向きにしている両手から直径10Mの〝紫色の魔法陣〟を出現させていた。
「ハッ!」としたA班が慌てたように走り出す。
その光景に戸惑ったB班だったが、「只事ではなさそうだ」ということを悟って、続けざまに岩の壁へと駆けていく。
彼女たちの避難を待たずして、ワーバットの魔法陣から、幅3㎝×長さ30㎝の[紫色の線光]が無数に発射されたのだ。
一斉かつ絶え間なく、
ヒュンッ!ヒュンッ!ヒュンッ!ヒュンッ!ヒュンッ!ヒュンッ!ヒュンッ!ヒュンッ!
と、降り注ぐ線光が、
ズババババババババァアンッ!
と地面に直撃した。
打ち終えた人型蝙蝠が、顔を左に傾けて、
「キ、キ、キ、キ、キ、キ、キィーッ。」
と、不気味な鳴き声をあげる。
土埃が消え去った後の地には、数百もの穴ぼこが生じていた。
秀嗣が、
「多分だが…、あのモンスターは、知能が低い故に、自分から仕掛けてこない。」
「〝やられたら、やり返す〟といった感じだ。」
との見解を示したところ、ラットが、
「うう~ッ、ゴメンよぉ。余計な事しちゃってぇ。」
「絶対に私の所為だよね、コレは。」
「本当に、申し訳ない!」
と両手を合わせながら謝った。
それに対して、ラーザが、
「なぁに、気にするな。」
「今回は、誰も犠牲にならずに済んだからなッ!」
〝ニカッ〟と笑みを零す。
「それにしても厄介だな…。」
と、呟いたのは弥太郎だった。
(確かに。)
と思った[鮮紅の豹一団]が、
(どうしたものか?)
と、それぞれに頭を悩ませていたら、【巫女】の薫が、
「そうだ!紫蓮のとこの、来夢ちゃんだったら、どうにか出来るんじゃない?ハーピーのときみたいに。」
と提案してきた。
更に、バウンが、
「一理あるかも…。」
「だって、その子は、アイツの超音波が、全然、効いてなかったしね。」
と、続いたのだ。
それを受けた紫蓮が、
「まぁ、そもそも、耳とか無いしな…。」
「……、やってみるか。」
と同意する。
当のスライムは、アメーバ状になっている体を〝プニョン プニョン〟と波打たせていた―。




