3 願い事
ルリはルシアを背負って、村まで帰って来た。もう、暗くてほとんど何も見えない。闇夜を照らしてくれるのは、月だけになっていた——。とりあえず、ルシアの家に……!
「はあっはあっ。」
だんだん疲れてきた……。誰か、助けてくれる人は……今は夜だから誰もいないか……。
つ、着いた!
「誰か!大変なんです!今、ルシアが気を失ってて……。」
「え⁉︎」
そう言って出てきたのは、ルシアのお母さんだ。酷く驚いた顔をしている。ルシアを見てからは、顔が真っ青になっていった。
「一体どうしたの⁉︎ちょっと待っててね!ルリのお母さんも呼んでくるから!」
お母さんが来ると、ルリは今までの事を話した。星の砂が売っていなかったこと。ルシアがそれを取りに、海へ行った事。ルシアが波のせいで沖に流されそうになった事。様子を見に行ったら、気を失っていた事——。
「「ルリ!もう、海なんて行っちゃダメよ!」」
お母さん達が顔を真っ赤にして怒っている。それも当然か……。
「……はい……。」
「すみません。こんなことになって……。」
「いえ、こちらこそ、本当、ルリが迷惑をかけました。ほら、ルリ、謝りなさい。」
ルリにはそんな二人の会話は聞こえていなかった。でも、代わりに聞こえてきた声は——。
「今から星祭りが始まるって!」
外から聞こえた声だった。
「あ、そうだ。今日は星祭りだ……。行かなくちゃ。」
「ルリ、待ちなさい!」
そんなお母さんの声を聞き流しながら、ルリは教会へと向かった。
★ ★ ★
ルリは教会に着いた。空ではたくさんの星がキラキラと輝いている。綺麗だなぁ。……っと!そんな事を考えてる場合じゃない。大丈夫。星の砂は持ってる。じゃあ、聖壇に置いて……。ルリの願い事はただ一つ。
ルシアが、目を覚ましますように。
そう祈った時、星の砂がキラキラと消えていった。本当に消えた……!綺麗だなぁ。……あれ?目眩がす……る……?
ドサッ
「おい!大丈夫か!おい!」
そんな声を最後に、ルリの意識は遠くなっていた。
★ ★ ★
それからの事は、よく覚えていない。ルリは、追いかけて来ていたお母さん達に連れて帰られたらしい。
そして、目が覚めると家で寝ていた。お母さんによると、三日ほど寝ていたらしい。ルリは起きてちょっとしたらお母さんに怒られた。でも、病み上がりだからとすぐに終わった。ルリには大したキズはなく、疲労で倒れていたらしい。ルシアはというと……今もまだ気を失っている。ルリはその事を聞いた瞬間、お見舞いに行こうとした。でも、まだ目が覚めて一日目だからと、次の日に行くようにと言われた。
そして、今日がその日。
「お母さん!お見舞いに行ってくる!」
そう言って、ルリはルシアの家に急いだ。
ルシアの家に行ってルシアの部屋に行くと、ベッドでルシアが寝ていた。その顔色は、あの日よりも悪くなっているような気がした。とりあえず、熱がないかみなきゃ。額に手を当てて……よし、熱は無い。よかったー……。
「うっ、ううっ」
そんな時、ルシアのうめき声が聞こえた。
「ルシア⁉︎」
そう言ったけど、ルシアからの返事が無い……。ルシアが良くなるには、祈るしか無いのかな?……とりあえず祈ろう。
ルシアが、目を覚ましますように。