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目覚め-4

 峰子はため息をついた。最近はずっと監視カメラの映像を見たり、影で隠れて香のことを見ていたりするばかりだ。もううんざりだった。きっとこのことを香が知ったら嫌われるだろう。しかし峰子は、嫌われてもいい理由があった。

「・・・どうしてうちの子が・・・うちの子だけが・・・。」

 香には父親はいない。なぜなら、・・・あぁ、思い出したくもない。あの時のせいで、香は悪くないのに、父は・・・父は・・・。


「がんばってください。」

 ここは病室だ。峰子は脂汗を掻いていた。そして思いっきり力を入れる。

「オギャーー!!!」

 病室内で甲高い赤ん坊の声が響き渡る。峰子は力を抜いた。看護婦たちが峰子にこういった。

「生まれましたよ!」「がんばりましたね。」「おめでとうございます!かわいいですよ。」

 そして、峰子に手渡してきた。この赤ん坊の名前は・・・そうだ香にしよう。自分の腕の中にはまだ元気に泣いている自分の子の姿があった。

 その病室へまた1人の人間が来た。

「生まれたか?」

 その人は入るや否や、大声でそういった。汗を掻いており、息を荒げていた。

 それを見て、峰子は微笑む。

「えぇ、生まれましたよ。ほらーお父さんでちゅよー。」

「あははは・・・。」

 父、信男はもう泣き止んだ自分の子を抱いた。目には涙がにじり出ていた。 

「この子の名前はね、香って名前にしようと思ってるの。」

「ははは、そうだな。おまえがそれでいいならそれでいい。」

 そうして、しばらくこの楽しい話は続いた。

 5ヵ月後、峰子と信男はまだ生まれて間もない香と一緒に家で過ごしていた。

「香ー、高い高いだぞー。」

「・・・。」

 初めて信男は香を高く持ち上げた。しかし、香は、ただ信男のことを見つめている。ずっとこうだ。香は何一つ笑ったりしない。

 そこで、信男は少し回転した。

「ほら、くるくるくるくる〜〜。」

「し・・・ね・・・。」

「へ?」

「しねよ・・・。」

「な・・・。」

 信男はあんぐりと口をあけた。閉じることが出来ない。香は初めてしゃべった。しかし、どこでそんな言葉を覚えたのか、初めてしゃべった言葉は・・・死ね。しかも、赤ん坊がしゃべり始めるには時期が早すぎる。

 香はにんまりと笑った。そして、こういった。

「信男・・・死ね。」

 その瞬間信男は倒れた。香も一緒に落ちた。

「おぎゃあああああ!!!」

 香が今度は泣き出した。その声が峰子に届いたのか、峰子が物音をたてながら、やってきた。

「どうしたの?」

 そういって、峰子は来たが、凍りついたように動かなくなった。

「あ、あなたあああああ!!!!」

 涙をこぼす。峰子の隣には香がいた。そして、楽しげに笑っている。

 峰子は急いで、救急車を呼ぶためにケータイを取り出す。そして、電話をかけた。

「もしもし、父が、父が大変なんです。ええと、場所は・・・。」

 峰子は場所を言い、ケータイを耳から離し、閉じた。

 まさか。いや、そんなわけがない。ありえない。あんなことが・・・あんなことが・・・。あれは、ただのインチキだと思っていた。それは、1ヶ月前のまだ春になったばかりのときだった。

 ピーンポーン。インターホンのベルが家内に鳴り響く。

「はいはーい。」

 峰子は玄関に出る。外に出ると、一台の黒い車が止まっており、そこに男の人が1人立っていた。

「どなたですか。」

 明らかに怪しいその男の人はめがねをかけている。そして、そのめがねを手で少しほんの少しだけ持ち上げながらこういった。この時、めがねは少し光った。

「私、こういうものなんですが。」

 そういって、名刺のようなものを渡してくる。そこには、霊能者、案山子吉雄と書かれている。

「霊能者?それがうちに何の御用で?」

 その男の人は目を少し細めた。さっきのめがねの光よりも強く感じらされそうな光を目から放っているように見えた。

「お宅のうちに何か悪いものがいます。今それをどうにかしないと大変なことになります。」

 峰子は思い当たることがなく、吉雄に質問をした。

「大変なことはなんですか?それと、悪いものとは?」

 一気に二つの質問をして、少し困った表情をしていたが、口をゆっくりとあけてこういった。

「もうすぐ、この家に不幸が訪れるでしょう。それと悪いものとは・・・現時点ではよくわかりませんが、何か特殊な力を持っている人がいます。・・・うーんその子はまだ赤ん坊ですね。おや、しかも女性だ。」

 峰子は気味悪がった。女で赤ん坊ときたら、香しかいない。そして、同時に疑った。赤ん坊が、まだ1歳にも満たない幼い赤ん坊が子の家に不幸何てもたらすわけがない。さらに、この男は信用できないだろう、と思った。

「どうか、あがらせてください。ふふ、大丈夫ですよ。お金は決してかかりませんから。私は、フリーでこういうことをしているんです。つまり、ボランティアですよ。」

「帰ってください。」

「え、いや、ちょっと!」

「お引取りください!」

 峰子は無理やり吉雄を押し通した。そして、思いっきりドアを閉める。ガタンッ!という大きな音が響き渡った。あんな怪しい男を信用してたまるかと思った。しかし、なぜか峰子は名詞を捨てなかった。ベビーベットの上で香はずっと峰子を無表情で眺めていた。

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