一体化-4
「アッハハハハハハハッッ!」
光の心拍数が一気に上昇する。これは、何度も聞いたことがある大切な人の変わり果てた笑い声。香の大きな狂った笑い声だった。
いつの間にか、廊下から人の逃げ惑う音が聞こえなくなっていた。どうなったか。可能性は二つある。一つ目はもうみんな逃げた。二つ目は・・・・・・・・・・・・悲鳴を上げることもなく呼吸をとめたか。
光は、何かを決意したかのように冷たくなりつつある吉雄を置き、目をギラリと光らせて、廊下へ移動する。
何かによって、光の思考回路が変化した。いや、強制的に変化された。
廊下に出ると、香がちょうどこちらへ向かってきていた。しかし、他の教室の中に入り込んだ瞬間だったので、気づかれてはいない。これがチャンスだった。何が何でも香の暴走を止めるというラストチャンス。
「どこにいるのー?デテキナサイヤアハハハハッッ!!」
笑いながら香が俺を探している叫び声が聞こえてくるのがわかる。普通の一般人がこれを見れば、どう考えても狂っている人間の狂声にしか聞こえない。しかし、今の光にはそんなふうには聞こえなかった。まるで、私を助けてとでも訴えかけてくるようにしか聞こえなかった。
光は、香のいる教室から離れるようにして、走った。これは逃げるためではない。香を助けるためだ。
まだ、この鉄のにおいが充満している学校に、生存者がいるかもしれない。まだ生命の糸が切れていない人間がいるかもしれない。その人たちを生かすために、光はわざと大きな音を立てて廊下を駆け抜ける。
「ソオオコオオッカアアアアッッ!!」
狂人と化している香は人を殺したいと必死だ。その愛人を光は外へ導かせるようにルートを計算して走り続けた。
香にこちらの姿が見えなければ、呪い殺すことなんてできやしない。もし、香が音を聞いただけで誰がその音を出しているのが分かり、その音を立てた人を呪い殺せるのならこの作戦は意味をなさない。
昇降口まで走りぬいてきた。呼吸をゼエゼエハーハーと乱し、汗があらゆるところから噴き出ている。走っている途中に倒れている人を何十人も見てきた。正直言って、手が震えた。吐き気がした。躓きそうになった。
だが、それでも香を救うというその思いが光を、光の足を動かしていた。
昇降口から外に出て、グランドまで駆け抜けて光は立ち止った。
時は刻々と動いている。止まってくれと頼んでも、遅くすらなってくれない。
だから、急ぐ。
くるりと光は反転して、昇降口を見据える。しかし、香は出てこなかった。
「な・・・!」
ドウナッテイルンダ。カオルハ、ナゼコナイ?ワカラナイ。
「クソッ!」
光は、再び昇降口に戻った。もしかしたら、他のターゲットを見つけてしまったのかもしれない。そうなれば、光の行動がゴミと化す。そして、そのゴミは焼却炉で焼却されるのだ。
光は、慎重に音をたてないようにして、香を探し始めた。




