暴走-9
月曜日。朝。
光は、午前8時ごろにはもうすでに学校に来ていた。早く来た教師たちも驚いている。なんたって光は、普段スクールバスで登校しているはずだからだ。それが、いつもよりかなり早く、徒歩で来たからには教師たちが驚かないわけにはいかない。
一人の若い男の教師が校門でなぜかそわそわしている光に話しかける。
「君、早く中に入りなさい。それと、今日はどうしてこんなに早く着いたのかい?」
そういって、教師は光の顔を覗き込む。光の眼はうつろだった。そして、無言だ。
「えーと・・・光君だったかな。僕の質問に答えなさい。」
「・・・今日この学校の人々が皆、息絶えるかもしれません。どうにかして、みんなを避難さしてください。」
「はあ?何を言っているんだ。みんなが息絶える?悪い夢でも見たのか?」
校舎の窓から、覗き込んでいる生徒たちが見える。光はその方角を指差した。
「あそこにいる人たちです。早く非難させてください!」
「あそこにいる人たちです。早く非難させてください!」
光は突然大きな声ではっきりと言った。今まで寝不足やこれから起こる恐怖を連想してしまうせいで、教師の声が耳に入ってこなかった。そう、昨日は学校の人たち全員がいれば何とか由里の暴走を止められるかもしれないと思っていた。しかし、それは違っていたのかもしれない。そう思うようになったのは、午前3時に遡ればわかる。
午前3時。
光は恐怖で眠ることもできずに寝返りばかりうっていた。しかし、それもベンチが狭いせいで、あまりうまくできない。そんな光の肩が何者かによって、不意に揺さぶられた。光は目を開け、起き上って揺さぶられた方を見た。誰かがいる。視界が、微妙にぼやけていて顔が見えなかった。
「おきたか。」
その人の眼鏡が月の光でかすかに光った。光は、目を見開いた。がばっと起き上る。
「あ、あなたは!!」
腹部に怪我を負っている。その人はついさっき、光の家で由里にやられそうな所を助けてもらった人だった。
「そうだ。私だ。私の名前は、案山子吉雄だ。・・・っ!」
吉雄といった男は、がくりと倒れた。
「だ、大丈夫ですか!?」
「あ、あぁ・・・。心配ない。これぐらいならなんとかな・・・。」
腹部の怪我が痛むようだ。ど、どうすれば・・・。
「心配しなくていい。それよりもこれだけは聞いてくれ。」
「は、はい・・・。」
吉雄は、香と由里について語った。
「なるほど・・・そうだったんですか・・・。じ、じゃあ!香は死ぬしか選択肢がないんですか!?」
吉雄は難しい表情になって、ゆっくりとうなずいた。
「それとだ、由里はまだ、完全に封印はとかれていないが超能力のようなものを持っている。気をつけるんだ。」
「それはいったい・・・。」
「ある人をAとしよう。そのAが由里に何か恨めしいことをしたとする。すると、由里はその人を恨む。Aは死ぬ。そういう能力だ。」
「え・・・。」
光は勝ち目がないと思った。そんなのと戦って勝てるわけがない。自分は間違っていた。
「まあ、明日は気をつけろよ。」
「・・・。」
吉雄は去って行った。光は途方に暮れてしまった。




