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暴走-5

 香は、光の家の前にいた。一度大きく深呼吸をして、チャイムをゆっくりと押した。

 しばらくして、光が出てきた。光が出てくるまでの時間が香には長く感じられた。光は深刻な表情だった。

「中に入れ。」

 香はうなずき、光の家の中へと入った。そして、光の部屋まで行き、香を中へ誘導させた。その後、光も中に入り戸を閉めた。

「で、何があった?」

 香は話し出した。

「うん。ドックランドから、私は帰ってきたら男の人が母さんと話をしていたの。その時母さんは泣いてた。」

「どうして?」

「分からない。それでね、その男の人の車に乗れって言われて、乗ったんだ。母さんは乗らなかった。そして、車に乗ってしばらくすると、男の人が私のことを由里って呼ぶの。私は誰ですかって聞こうとしたらなぜか、口がいうことを聞いてくれなくて、よく分かったわねって勝手に言ったんだよ。」

「無意識的に?」

「うん。そのあと勝手に会話して、気が付いたら、私は交通事故にあって、倒れていた。」

「え?怪我は?」

「それが不思議で、怪我が一つもなかった。それで、男の人がいないのに気がついて他の人に男の人はどこですかって聞いて、行方不明ですって言われたんだ。その男の人は途中まではいたけれども途中でいなくなったんだって。その人も無傷だったって。」

「そのあとは?」

「そのあとは、家に帰った。家に帰ったら母さんが驚いてた。それで―――」

 香はその後も今さっきあったことをすべて話した。


 光はすべてを聞いてしばらく考え込んだ。あのドックランドで不良男に会った時も香はおかしかった。本人は気がついてなくとも不良男に確実に何かをした。超能力か?しかし、そんなことはできるはずがない。それと、香は勝手に口が動いてしゃべりだしたり、自分の頭の中に話しかけられるかのように、女の人の声が聞こえたと言っていた。つまり、香は二重人格なのかもしれない。話をまとめると、香の中には、超能力を持ったもう一人の自分が存在するのかもしれないということだ。とすると、その男の人が何か知っていそうだな。

「・・・うっうっ・・・。」

 光が香をみると、香が泣いていた。光は香を抱きしめた。

「大丈夫だ。香が悪いんじゃないんだから、そう泣くなって。」

「・・・う、ん。ありがと。」

 光はそうは言ったものの少し香を警戒していた。いつ、彼女がいつ、またもう一つの人格が姿を現すか分からない。もし、いまそいつが姿を現したら、俺は死ぬだろう。光は、そのことだけ警戒していたのだ。


 吉雄は光の家を目指していた。香がそこにいるのは私の勘が当たっていれば、間違いない。これ以上被害を増やしたくはない。死んでもらうぞ。由里・・・。

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