暴走-4
香は2階の自分の部屋の隣の部屋で寝ている峰子の目の前に立った。手にはナイフが握られていて、月の弱弱しい光が反射していた。目の前には自分をだました者がいる。目の前には父を殺した者がいる。目の前には・・・憎たらしい親がいる。
香はより一層手に力を入れた。そして、峰子に刃を向ける。ユルセナイ・・・!
その刃を香は思いっきり峰子の首めがけて突き刺した。峰子は一瞬大きく眼を見開いて、悲鳴を上げることもなく、寝息を止めた。首から血がベットのシーツに広がる。
「はぁ・・・はぁ・・・。」
香はナイフを落とした。
「あ・・・あぁあ・・・!」
初めて人を殺した。それも自分の親を・・・。さっきの殺意は消え失せ、代わりに恐怖を感じた。ナイフを持っていた手が震えている。何をやってしまったんだ・・・。私はとんでもないことをしてしまった。
香はその部屋から逃げ出した。そして、ケータイが入っているバックを持ち、家までも飛び出した。
しばらく走り続けて、息を切らし立ち止った。いまだに震えている手でケータイを取り出し、電話をかけた。
「もしもし?香?どうしたんだ。」
向こうから光の声が聞こえてきた。
「どうしよう・・・。母さんを・・・殺しちゃった・・・!!」
その声はいつもの声ではなかった。震えている声だった。
「え・・・。」
しばらく、沈黙が続いた。それから、向こうから声を出してきた。
「俺の家にこい。親は友人の家に行ってていないから。」
「・・・うん。」
「そこで、詳しく俺に話すんだ。何があったのかを。」
「・・・わかった。」
「じゃあ・・・な。待ってるぞ。」
「うん。ありがとう。」
香はケータイを耳から遠ざけた。安心した。もしかしたら、嫌われるのかもしれないと思った。しかし、それは違っていた。光に感謝した。こんな、いい人この世に光一人しかいないだろう。
香は、光の家へ向かった。
吉雄は峰子の住んでいる家の中へ入った。何故か玄関の扉には鍵がかけられていなかった。 ・・・手遅れだったのかもしれない。
吉雄は峰子を探した。1階をすべて探した。しかし、見つからなかった。2階へ駆け上がり、真ん中の部屋へ入った。そこには峰子が横たわっていた。暗かったので明かりをつけた。寝ているのではない。それは、首をナイフで突き刺され虚空をみていた。首から血が流れ出していたのか固まった血液がへばりついていた。シーツは赤く染まっていた。
「くそ。遅かったか。」
由里・・・。ついに動き出したな。まだこの殺し方からみると今は香という女性を完全に飲み込めていない。つまり、洗脳をしたのだ。由里なら、人を恨むだけで殺せるはずだ。それなのにナイフで殺害するというところを見ているだけでもわかる。まだ初期段階だ。・・・落ち着け・・・。まだ・・・間に合う。被害者をこれ以上増やすわけにはいかない。由里を完全にケス。俺の手で!!




