暴走-3
ガチャッ
香は、玄関の扉の鍵を開け、中へ入って行った。中には峰子がいて泣き崩れていた。その様子は、普通じゃなかった。
峰子は香の存在に気づき、驚いた。
「ど、どうして・・・。」
そう言い、峰子は香に抱きついた。香はえっ?となる。
「か、母さん、どうしたの?それとあの男の人は一体誰?どうして、私はあの男の人に連れ去られなきゃいけなかったの?ねえ、どうしてよ。」
峰子は、しばらくして何かを決心したかのような表情になり、香に向ってこう言った。
「本当のことを言うわ。でも・・・真実を知っても絶対に自分を見失っちゃだめ!わかった?」
「え・・・?う、うん。」
そして峰子は話し始めた。実は香には霊が取り付いていて、それが昔暴走して、父を殺してしまったこと。さっきの男の人は霊能者で、香に取りついている霊を封印したこと。それが、今になって封印がとかれかかっていること。いままで、監視カメラなどで峰子が香のことを監視していたこと。
すべてを峰子は話し終えると香の返答を待った。
香は衝撃的すぎて信じられなかった。特に自分が父を殺してしまったことに衝撃を受けた。今まで、峰子は自分に父は病気で亡くなったと言っていた。しかし、実際は―――
「私が・・・私が父さんを殺したの・・・?」
「香がやったんじゃない。あなたの中にいる霊があなたの身体を利用して、それで・・・父さんは殺されたの・・・。」
「・・・。」
「大丈夫?」
「え?あ、うん・・・。大丈夫だよ・・・。」
香は全然大丈夫ではなかった。もう死にたい気分だった。
香はその後、自室に行った。そして、ベットへバタンと倒れこむと涙が溢れ出てきてしまった。自分の中の霊が憎い。父を殺した霊が憎い・・・。許さない。ゆるさない。ユルセナイ!!!早く、自分の中から出て行ってしまえ。そんなもの!消えろ。消え失せろ!!
突然香の頭の中で声がした。よく聞き取れなく、意識を集中させた。すると、その声がはっきり聞こえた。
(あなたは悪くない。悪いのはあなたの母。さっきの話は私のこと以外全部デタラメ。本当はあなたの母が父を殺したのよ。)
香は、首を思いっきり振った。ちがう・・・。惑わされるな。これは私を利用しようとしているんだ。ちがうちがうちがう・・・。
また声が聞こえてきた。
(なんなら見せてあげる。)
香は壊れたおもちゃのようにばたりと倒れ動かなくなってしまった。
いつの間にか香は自分の家の外にいた。しかし、なんだか家が新しく見える。気のせいだろうか。
香は玄関から中へ入った。すると、大声が聞こえてきた。香はそっと耳を澄ませてみた。
「ふざけんじゃないわよ!!もう金がないの?」
峰子の声だった。
「す、すまない・・・。今月はこれで精いっぱいなんだ!」
「うっさいわね!もっと金を稼ぎなさい!これじゃ、ギャンブルする金が少ししかないじゃない!」
「頼む!お、おい!!のこぎりとって何をする気だ!」
「決まってるじゃない。あなたをコロスノヨ。」
「やめてくれええええぇぇぇええぇえ!!ヴァアアァァアァアア!!!」
「ふふふ・・・。」
そして、何も聞こえなくなった。香は座り込んでしまった。ひどい・・・ひどすぎるよ・・・。これが真実だったんだね。ユルセナイよ。今すぐ行くよ・・・。
香は眼を覚ました。そして、果物ナイフを手に取った。手は恐ろしいほど強い力で果物ナイフを握っていた。生まれて初めて、香は殺意を感じていた。




