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01 「見つけるあなた」
十二月に入り、暖房を入れなければやっていられない季節になった。
いつものように仕事をこなし、帰宅して酒を飲みながら明日の資料を作成する。
代わり映えのしない毎日に苦笑を漏らしながら、三十路間近の男……新藤優は休憩もかねてマンションのベランダに出た。
酒が回り、火照った体に冬の空気は心地よい。
ゴミゴミした街の中心から離れた住宅街は、いつもよりさらに静寂に包まれている。
休日には近所の子供たちが遊びに来る目の前にある公園も、寂しげに風に吹かれていた。
そこで……ふと目にとまるものがあった。
出歩けば補導されるような時間、ブランコに誰かが腰かけている。
たぶん……女の子だ。表情は俯いて垂れた髪に隠れてよく見えないが、少なくとも楽しく遊んでいるようには見えない。
しばらく少女を観察する。俯いたまま動く気配が全くなく、誰かを待っている様子もない。
「……」
優は最後に残った一口を一気に煽ってから、まだ仕事着だったスーツの上着を手に取った。