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サイキッカーの異世界調査録(サーベイレコード)  作者: TOMA
第1部 異世界グラスティアの異変 第2章 ルクストリア編
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第34話 報告と合流、そしてフリッツの店へ

 地上へと戻ってきた俺たちは、ちょうど通り道だったので、途中で討獣士ギルドに寄って討伐の報告をしておく事にした。

 

「ダークウィングボアですか。結構強めの魔獣ですね。まあ……おふたりなら瞬殺でしたでしょうが」

 俺たちの報告を聞いたカリンカがそう言ってくる。

 

「ふたりっていうか、俺は魔法を撃って地上に叩き落としただけだな」

「私は突っ込んできた所を斬っただけよ」

「いえ、あの……おふたりとも、それは『だけ』ではないですよね?」

 俺たちの言葉に対し、呆れた顔でそんな風に言ってくるカリンカ。

 

「ふむ……言い直すか。6属性の魔法を一斉掃射して叩き落とした」

「突っ込んできた所を霊力を込めた刀で斬り刻んだわ」

「ほらやっぱり!」

 カリンカの口調が、地味に素に戻っているぞ……

 

「っとと……失礼しました。なにはともあれ、討伐お疲れ様でした。報酬は受け取っていきますか? というか、昨日の分も朝渡し損ねたので、まだありますけど」

「銀行に入れといてくれればいいわ」

 カリンカに対し、そう言葉を返すシャルロッテ。

 銀行なんてあったのか。……いやまあ、文明レベル的に考えたらあってもおかしくはないんだけど。

 

「銀行の口座……でいいのか? それってどうやって開けばいいんだ?」

「銀行の仕組みについてはご存知ですか?」

「ああ、一応な」

「でしたら、ギルドの方で代わりに各種手続きをしておきましょうか?」

「あ、ギルドに頼めるのか。なら、よろしく頼む」

「かしこまりました。今から手続きを始めれば、明日中に全ての処理が終わると思いますので、明後日以降にまたいらしてください」


 そんなわけで、カリンカに銀行の口座を開く手続きを任せると、俺たちは、改めて学院へと向かう事にした。

 

                    ◆


「あ、来た」

「待っていたよ」

 学院の前まで行くと、レビバイクを路肩に止めて待っていたジャックとミリアが俺たちに気づき、言葉を投げかけてくる。

 

「そう言えば、レビバイクが4台あるから、アリーセとロゼ、ついでに多分いるであろうエステルも、一緒に行くなら乗せていけるな」

「たしかにそうね。……エステルあたりは、自分で運転したがりそうだけど」

「まあ、何気に2台持ってるしな」


 そのうちの1台を俺とアリーセが使ったんだよなぁ……アルミナで。

 と、あの時の事を思い出していると、ミリアが、

「エステル? 誰?」

 という、もっともな疑問を口にする。

 

「アルミナで魔煌屋をやっている魔煌技師の女性だ。かなり優秀で大工房でも話題になっているらしい」

「あー、どこかで聞いた名前だと思っていたら、あの『遺失(レリクス)技法(アーツ)学士(バチェリー)』殿の弟子という人か。クスターナでも時々話題になるね。弟弟子の人と一緒に」

 俺の説明に対し、ミリアの横で話を聞いていたジャックが相槌を打つ。


「へぇ……他国にまで名前が知れ渡っているのか」

「そりゃね。弟弟子のコウ氏は、レビバイクを初めとした、最先端の魔煌具を数多く生み出して、あのクシフォス帝の再来だ、なんて言われているほどの人だし。もちろん、姉弟子のエステルさんも、高性能な魔煌具を生み出す事で有名だね」

「なるほどな……」


 戦闘用魔法の再現に成功し、その力で世界征服なんて前代未聞の事をやったクシフォス帝の再来、か。なんだか凄そうな人だな。

 って、そう言えば……室長の名前が、たしかコウだったような気がするぞ……

 偶然とはいえ、なかなか不思議な感じだ。室長も発明とか工作とか好きだったし。


「その人が何故ここに?」

「ああ、実は俺が見つけた古代遺物についての調査を依頼しているんだが、なんでも、その弟弟子が持っている学院の設備を使わないと、解析が難しいんだそうだ」

 ミリアの問いかけに大雑把にそう返す俺。

 

 ……少し大雑把すぎたか? でも、他国の人間、それも軍人にありのまま話すってのもどうかと思うしなぁ……

 と、思ったが、ミリアは納得した様子で言葉を紡ぐ。

「なるほど。さすがは、古代遺跡や失われた技術に造詣が深い遺失(レリクス)技法(アーツ)学士(バチェリー)の、弟子だけはある」


「古代遺物かぁ……。そう言えば、エメラダ様の鉄扇も普通の鉄扇じゃなくて、古代遺物だって言ってたなぁ」

「たしか1億5000万年前の物」

「そうそう! 1億5000万年前の物だなんて、意味不明すぎるって……」


 なんて事を話すジャックとミリア。


「あら、そうなの? 私の刀も1億5000万年前の物だから、その鉄扇と同じ時期に作られたって事になるわね」

「「えっ!?」」

 さらっと自身の刀が古代遺物である事を口にするシャルロッテと、それに驚くふたり。

 あまり表情に変化のないミリアも、驚いているのが良く分かる程だった。それほどの衝撃だったのだろう。


「正確に言うと、この刃の部分だけだけどね」

 シャルロッテはそう言って刀を鞘から抜くと、ふたりに見せる。


「……言われてみると、なんとなくこの刃、エメラダ様の持つ鉄扇の刃と似ているような……」

「刃の波紋が似ている。……あの鉄扇も刃部分だけが1億5000万年前の物だったはず」

 ジャックとミリアが刃をまじまじと見つめながら、そんな事を言った。


 ……ふむ。という事は……1億5000万年前に作られたのは、刀と鉄扇ではなく、『刃』であるという可能性もあるな。

 もっともその場合は、どうして刃だけが作られたのかって話になるが。


 俺が考え込んでいると、

「ま、とりあえず中に入りましょ。エントランスホールで待っていればいいって言ってたわよね?」

 と、そんな風にシャルロッテが言ってきた。


 まあ……ここで考えていても答えが出るわけでもないし、詮無いことって奴だな。

 というわけで、俺はシャルロッテに対して頷き、

「ああ、そうだな」

 そう言って、再び学院の門をくぐった。

 

                    ◆


「……いない?」

「うん。さっき見に行ったらいなかった。うん」

 俺の言葉にそう返してくるロゼ。

 

「うーん、どこかに出掛けたのかしらね?」

 腕を組みながら言うシャルロッテ。

 

「もしくは、一旦アルミナに戻ったか、ですね」 

「まあ、アルミナなら半日もあれば行って帰ってこれるしな。……まあ、ほとんどが鉄道の待ち時間だけど」

 なにしろ、2時間に1本だからな。タイミングが悪いとかなり待たされる。


「アルミナ方面は利用者が少ないせいもあって、本数が少ないですからね……」

「南部は人口が少ないし、その先――ディンベル獣王国まで行くのなら、鉄道よりも飛行艇の方が早くつける以上、そこは仕方がないわね」

 アリーセの言葉に対し、肩をすくめてそう返すシャルロッテ。

 たしかにルクストリアに来る時に使ったけど、席が結構空いてたからなぁ……


「ま、普通は早くつける方を使うしな。――っと、それはさておき……。エステルに関しては、いない以上、仕方がないな。とりあえず俺たちだけで行くとするか」

 そう俺が告げると、ロゼが頷き、

「ん、了解。……ところで、そのふたりは? うん」

 ジャックとミリアを交互に見て問いかけてくる。


「ああ、ふたりは魔獣を討伐しに行った際に出会った隣国――クスターナの軍人だ。ふたりもアカツキ料理が食いたいんだってよ。……どうだ?」

「なるほど……。そういう事なら、私は問題ない。うん」

「はい、私もロゼと同じく特に問題はありませんね」


 とまあそんなわけで、ふたりとも問題なさそうなので、6人でフリッツさんの店へ行く事になった。

 ちなみに、色々あったがロゼは俺の後ろに、アリーセはシャルロッテの後ろだ。

 

「ここがそうだな」

 そう言って俺がレビバイクを止める。


「ん、意外と分かりづらい場所にある。うん」

 後ろに乗っているロゼが言う。

「まあ、たしかにちょっと分かりづらいかもな。大通りに面してないし」

 

「大通りから1つ裏手に入った所というのが、なんというか隠れ家みたいですね」

「たしかにそうね」

 アリーセとシャルロッテがレビバイクから降りながらそう言ってくる。

 

「議場からはそんなに離れていない」

「そうだね。徒歩でも10分くらいかな?」

 ミリアとジャックもそんな事を言いつつ、やってくる。

 

「ま、とりあえず入るとしよう」

 俺はそう告げると、店内へと足を踏み入れる。

 

「いらっしゃいませー。っと、アニキの知り合いの討獣士さんでしたか。また来てくれるなんて嬉しいですね」

 中に入ると、フリッツさんがそう声をかけてきた。

 

「まあ、食べ慣れている物の上、どれもおいしいですからね」

「アカツキの人間にそう言って貰えると、料理人冥利に尽きるってもんです」

 フリッツさんが嬉しそうな顔をしてそう言ってくる。

 まあ、実際には俺はアカツキの人間ではないのだが、限りなく似ているし、別にいいだろう。


「今日は他に5人ほど連れて来たんですけど、席の方は大丈夫ですか?」

 言いながら店内を見回してみると、割と人が入っており、6人が纏めて座れそうな席はなさそうに見える。


「ああ、それなら奥の座敷が空いているので、どうですか?」

「座敷なんてあったんですね」

「ま、アカツキの料理を出していますからねぇ。食べる場所もアカツキ風の場所があった方が良いと思って作ったんですよ。もっとも、ここに大人数で食べにいらっしゃるお客さんは、あまりいないので、使われる事は少ないんですけどね」

「なるほど……そうなんですか。じゃあまあ、とりあえず外で待っているメンツを呼びますね」

「確認ですが、全部で6人ですよね?」

「ええ、そうです」

「わかりました。それでは、座布団などを用意しておきますね」


 ふぅ……。どうにか無事に席は確保出来たな。

物語中に関係してくる事はないのですが折角なので……

イルシュバーン共和国の首都ルクストリアから、南のディンベル獣王国の王都ベアステートまで、鉄道だけで行くと、国境での乗り換えを含めて約16時間です(乗り換え時に日付を跨ぐ場合は、国境で一泊する必要がある為、もっとかかります)

対して、ルクストリアからディーグラッツまで行き、そこからメルメディオまで飛行艇を使い、更にベアステートを目指した場合は、約6時間です。

鉄道の本数が少ない理由が良く分かると思います。


前述通り、物語には一切関係しない単なる裏設定ですが、もしソウヤたちが獣王国を訪れる事があるとしたら、おそらく飛行艇で向かう事になるでしょう。

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