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サイキッカーの異世界調査録(サーベイレコード)  作者: TOMA
第1部 異世界グラスティアの異変 第2章 ルクストリア編
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第31話 ギルドで渡されたモノ

 そんなこんなで、討獣士ギルドへとやってきた俺とシャルロッテ。


 シャルロッテが、出掛けに巻いてきたサマーストールを手で後ろへと送りつつ、ギルドの扉を開く。

 と、俺たちが入ってきた事に気づいたカリンカが、言葉を投げかけてきた。

「あれ? ソウヤさんにシャルロッテさん? サージサーペント討伐の報酬を受け取りに来たんですか?」

 

 ……報酬?

「……あ、そう言えば報酬の事すっかり忘れてたわ」

「同じく」


「ええっ!? 忘れてたんですか!?」

 驚きの声を上げるカリンカ。まあ……なんとなく城に行くのに邪魔だったから倒したって感じだしなぁ、あいつ。ゲームで言うと中ボス的な感じか。

 

「というか……報酬の受け取りではないとしたら、何のご用事でいらしたんです?」

 続けて疑問を口にしてきたカリンカに、俺たちは訪れた理由を告げる。

 するとカリンカは、

「ああ、なるほど……そういう事ですか。――あの後、そんな事があったんですね。ギルド長に伝えて、調査依頼を貼り出すのを少し待ってもらってきます。……あ、あと、すいませんが、少しここでお待ちいただけますでしょうか。おふたりに渡したい物がありますので……」

 そう言って、ギルドの奥へと足早に消え行った。おそらくギルド長の所へ話をしに行ったのだろう。

 

 っていうか、渡したい物ってのはなんだ……? 例の資料はさすがにまだだろうしなぁ……

 シャルロッテに心当たりはないかと尋ねてみると、腕を組んでしばし考えを巡らせた後、

「私一人なら、昨日話に出てきたカリンカの昔の仲間の居場所を書いたメモの事だと思うけど、ふたりにって言ってたから違うだろうし……うーん、なにかしら……」

 と、言ってきた。

 

 そのままふたりして考え込むも、結局、推測の1つも出て来なかった。

 仕方なくカリンカが戻ってくるのを待ちながら、なんとなく貼り出されている依頼を見てみる俺。魔獣討伐とかないだろうか。

 

「うーむ……普通の害獣退治ばかりだな……。お?」

 害獣退治の張り紙の山の中に、妙に目立つ縁取りのされた張り紙があった。


**                      **

*  緊急依頼:魔獣討伐             *

   魔力スポット・ポイント3にて、魔瘴増大中。


   魔獣出現予測時刻:10時~11時。

   現地に待機の上、出現し次第討伐。

   通常の討伐報酬+最低20万リムの追加報酬。

   (出現した魔獣の強さに応じて増額)


*  依頼主:討獣士ギルドおよび共和国議会。   *

**                      **


 と、そんな風に書かれていた。

 なるほど、これが魔力スポットに魔獣をあえて出現させて討伐するっていう奴だな。

 依頼主はギルドに議会……要するに、官民連携っていう事か。


 通常の討伐報酬に加えて、追加報酬が最低でも20万リム――日本円で言うなら、大体20万円か。

 ふむ……瞬殺出来るような雑魚魔獣であってもそれだけ貰えるなら、なかなか良い感じだな。


「あ、それはさっき貼り出したばかりの物ですね。まだ、誰も受けていませんよ」

 というカリンカの声が聞こえる。どうやら戻ってきたらしい。

 

「だったら、私とソウヤで倒してくるわ」

 シャルロッテは、そうカリンカに言うと、俺の方を見て「いいわよね?」と問いかけてきた。

 無論、拒否する理由などない。……というより、俺も受けようと思っていたしな。

「ああ、構わないぞ。ちょうど俺も受けようと思った所だったしな」


「おふたりなら、問題ありませんね。カードを貸していただけますか?」

 というカリンカの言葉に従い、俺とシャルロッテはカードを渡す。

 

 カリンカは、俺たちから受け取ったカードを、スマホのワイヤレス充電器の様な長方形のボードの上に置き、手元のキーボードのような物を操作し始める。

 このボードの方は、アルミナでも見たな。たしかエミリエルが俺のランクをチェックするのに使っていたはずだ。


 と、アルミナの討獣士ギルドの事を思い出していると、 

「はい、記録しました」

 そう言ってカードを返してくるカリンカ。

 

 カードを受け取ると、下の方に『依頼No.1893617753 遂行中』という文字が刻み込まれているのが目に入った。

 ふむ……。どうやらあの装置――魔煌具は、依頼の記録にも使うみたいだな。

 

「現地までの足は用意してありますので、こちらへ付いてきてください」

 と、そんな事を言い、ギルドの裏手へと案内するカリンカ。

 

 俺とシャルロッテは顔を見合わせて首を傾げつつも、カリンカの後を追い、ギルドの裏手へと行くと、そこにはレビバイクが何台か置かれていた。

 

「レビバイク?」

「そのとおり! で、この2台が昨日注文して今日届いたばかりの、ふたり専用の物なんだ。だから、ルクストリアを拠点にしている間は自由に使っていいよ! でも、拠点を移す時には返してね」

 俺の口にした疑問に、カリンカが砕けた口調でそんな説明をしつつ、エンジンキーを手渡してくる。

 素の方で話してくるという事は、『サギリナ本部長』も関わっているという事だろうか?

 

「え? 自由に使っていいの? というか、どうして私たちに?」

「それはもちろん、ふたりに対するサポート――つまり、『ギルドからの支援』だよ。当然だけど『ギルド長の許可』も下りているから、気にせずに使ってもらって大丈夫!」

「なるほど……『ギルドからの支援』ね。でもまさか、ここまでして貰えるとは思わなかったわ」


 疑問が解決して納得するシャルロッテ。

 ふむ……。やはりというべきか、一昨日のサギリナ本部長との話で出てきた、俺たちに対するサポートやフォローの一環、という事みたいだな。

 ……若干、職権乱用な感じもしなくはないが……まあ、レビバイクがあると便利なのはたしかだし、実にありがたい事なのでスルーしよう。

 

「あ、そう言えばお昼にアカツキの料理が食べられるお店に行く予定なんだけど、カリンカも一緒に行く?」

「あー、食べてみたいけど、お昼の時間は色々と詰まっているから難しいかなぁ……。次の休みの日にでも誘ってくれると嬉しいかも」

「じゃあ、次の休みの日にね」

「うん、ありがとう! あ、そうそう……!」


 約束をし終えた所で、カリンカが懐からメモ帳を取り出す。

 花柄の表紙なので、どうやらギルドの職員用の物ではなく、市販の物のようだ。


「これに、昔の仲間たちが住んでいる場所を記しておいたよ! 今の内に渡しておくね!」

 笑顔でそんな風に言い、メモ帳をシャルロッテに手渡すカリンカ。

 

「ありがと。後で確認して、暇があったら訪ねてみるわ」

 シャルロッテは、カリンカに対してそう言葉を返すとレビバイクにまたがる。


「――さて、それじゃ行きましょうか。場所は案内するわ」

 俺の方を見てそう言ってきたシャルロッテに対し、俺はレビバイクにまたがりつつ、それに応じる。

「ああ、わかった。ついていくよ」 


「ふたりとも気をつけてねー」

 というカリンカの言葉を背に受けながら、俺たちはレビバイクで走りだした。

 

                    ◆


「ここからポイント3へ行けるわ」

 と、シャルロッテがレビバイクを道の脇に駐車させつつ言ってきた。


 同じくレビバイクを道の脇に駐車させながらシャルロッテの視線の先を見る。

 ……至って普通の建物だな。よく見ると入口の横に『アパルトメント・星光荘』と書かれていた。

 アパルトメント――つまり、普通の集合住宅らしい。

 

「一見、普通の集合住宅っぽいけど……違うのか?」

「普通ではないけど、集合住宅である事は間違いないわね。ここに住んでいるのは、基本的に大工房に籍を置く研究者や職人よ。特に入りたての見習いの人が多く住んでいるわね。ちなみに、左右の建物もそうよ」

 俺の問いかけにそう説明しながら、左右の建物に対し、交互に顔を向けるシャルロッテ。


「ふむ……一種の社員寮みたいなもんか。ここからなら、大工房まで歩いてもそんなにかからないだろうし」

 ここに来る途中に曲がった交差点をまっすぐ行けば大工房なので、おそらく徒歩でも10分はかからないだろう。立地条件的には最良な気がする。

 

「ま、たしかに社員寮みたいなものね。……で、この3つのアパルトメントに住む人たちの中には、下水道の管理――これも大工房の管轄なんだけど――を行っている人たちがいてね。何か問題が起きた時にすぐ下水道へ潜れるよう、中に下水道へと続く階段が設けられているのよ」

「ふむ、なるほどな……。って事は、ポイント3は下水道にあるのか?」

「正確には下水道から繋がっている地下洞窟ね。そこにポイント3があるわ。まあ、とりあえず行くとしましょ」

「ああ」


 そんなわけで建物に入り、階段を下りていくと、『下水道:問題発生時以外進入禁止』と書かれた鉄扉があった。

 どうやらここから下水道に繋がっているようだ。

 

「随分と頑丈な扉だな……」

「下水道には害獣がそれなりにいるから、地上に這い出して来たりしないために、このくらいの扉が必要なんですって」

「なるほど……。害獣ってのはどこにでもいるんだな」

「ま、だからこそ、害獣と呼ばれているとも言えるわね」

「たしかに」


 とまあ、そんな会話をしつつ、俺は鉄の扉を開くと、そこには更に下へと続く階段があった。

 

 この先が下水道か……。今の所、嫌な臭いとかはしてこないな……。

 まあ、悪臭が漂っているような場所を歩くのは勘弁願いたいので、無論、臭わない方がいいんだけど。


 なんて事を考えつつ、階段を下りていく俺だった――

というわけ(?)で、自分用のレビバイクを手に入れました。

今後の移動は、これを使うのがメインになります(遠出する場合は別ですが)

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