↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
サイキッカーの異世界調査録(サーベイレコード)  作者: TOMA
第1部 異世界グラスティアの異変 第2章 ルクストリア編
91/764

第29話外伝1 The Torment of Charlotte First Part

(ダーク)ファンタジー感を出す為(?)に、サブタイトルを英語にしてみました。

<Side:Charlotte>

「成人の儀が終わったら、また会いましょうね」

「じゃあ、その成人の儀っていうのが上手くいくように、このお守りを貸してあげるっ」

「ふふっ、ありがと。終わったら返しにくるわね」

 そう言って、他の里に住むいとこのお姉さんは去っていった。

 

 ……けれど、お姉さんともう一度会う事はなかった。

 別のいとこのお姉さんもそうだった。更にべつのいとこのお姉さんも。

 誰も、私があげた銀製のお守りを返しに来る事はなかった。

 

「なんで、みんな来ないの?」

 私が両親に尋ねると、皆、成人して紋章士としての仕事を始めたばかりで、忙しいからだと言われた。

 

「来なくなって数年が経っている『始めたばかり』ではないお姉さんもいるけど?」

 という疑問をさらにぶつけてみると、両親はなにやら困った顔をした後、里には『絶対誓約』という名の、掟のようなものがあると教えてくれた。

 なんでも、生涯仕えたいと思える主を見つけたら、その主の言動を他の全てよりも優先して従うというものらしい。


 絶対誓約、生涯仕えたいと思える主……かぁ。

 うーん……私の前にも、そんな人がいつか現れるのかなぁ?

 

 なんて事を思っている内に、自身が成人の儀を行う年齢になった。

 私の国は、成人とされる年齢が他の国よりも早いので、思ったよりもすぐだった。


 それにしても……いくら『絶対誓約』というものがあるからとは言え、まったく里に帰って来ない人がいるのが、どうにも腑に落ちないわね。だって、ちゃんと帰ってくる人もいるし。

 ……今日の儀式で、何かわかればいいのだけど……

 

 儀式の日の朝、そんな事を考えながら家を出ると、

「お姉ちゃん、どこかいくの?」

 と、隣の家に住む少女が声をかけてきた。

 

 えーっと……名前は、クー…………なんだったかしら?

 長くて、いつもクーちゃんとしか呼んでいないから、フルネームを忘れてしまったわ……

 ま、まあ、それは後で思い出す事にして――

 

「これから成人の儀っていうのを受けにいくのよ」

 私がそう言葉を返すと、クーちゃんはそれがなんなのかよくわかっていなさそうな表情で、

「ふーん、そうなんだぁ。それじゃあ、帰ってきたら一緒に遊ぼう?」

 なんて言ってきた。

 私はそれに対し、「ええ、いいわよ」と答え、儀式の場へと向かう。

 

 ――成人の儀が執り行われるのは、里の外れにある紋章窟(もんしょうくつ)と呼ばれる洞窟の中。

 幾重にも封印魔法が施されており、儀式の時以外、入口が開かれる事はない。

 

「貴方、成人の儀を受けに来たの?」

 先客の少女がそう問いかけてくる。

 

 私がそれに対して頷くと、

「私もよ。よろしくね」

 そう言って手を差し出してきた。

 

 私も同じく手を差し出して握手をした所で、準備が出来たという声がかかる。

 

「儀式の場までは秘匿すべき物が多い。すまないが行きは目隠しをさせて貰うぞ。ああ、担架で運ぶから目隠しのまま歩くような事にはならないから安心してくれ」

 儀式を担当するであろう男性のその声と共に、私とその少女は目隠しをさせられ、そして担架に乗せられた。

 

 そんな状態で洞窟の中を進んでいくと、周囲からなにやら声になっていない声……呻き声に近い物が、私の耳に聞こえてくる。

 

「あの……周囲から何か呻き声らしき不気味な声ものが聞こえるんですが……」

 私がそう問いかけると、

「儀式用に使う害獣が唸っているだけだ。気にしなくても大丈夫だぞ」

 という答えが返ってきた。

 

 ……人間の呻き声にような唸り声を上げる害獣?

 ああそう言えば、人を喰らう植物系の害獣には、人の上半身の様な姿を持ち、人の様な声を出す奴がいるというのを学んだ気がするわ。

 

 そんな事を考えているうちに、担架の動きが止まり、どこかに降ろされた。

 と、同時に何故か手と足に枷が嵌め込まれる。

 

「えっと……どうして枷を?」

 横からさっきの少女の声が聞こえる。うん、私も同じ事を思ったわ。

 

「儀式の最中に紋章を刻むのだが、これが少々痛いからな。暴れても大丈夫なようにするための安全策だ」

 なんて事を言いながら、猿ぐつわまでしてくる。

 

 ……そう言えば、紋章を付与する方法の1つとして、直接肉体に刻み込むというのがあったはず。紋章の能力を高く引き出せる代わりに付与する時に結構痛いとか……

 う、うーん……痛いのは嫌だわ。

 

 なんて思っていると、目隠しが外され、石造りの天井が目に入ってきた。

 どうやらここだけ人工的な造りになっているらしい。

 

 そんな部屋の中央に並べられた寝台の1つに私が、その隣の寝台にもう一人の少女が寝かされていた。

 他の寝台には誰もいないため、今日はどうやら私たちふたりだけのようだ。

 

 どの寝台もシミで黒ずんでおり、床もシミだらけ。

 なんというか、この場所が長い間使われて来たのであろう事がよく分かる感じね。

 

「それでは成人の儀を執り行う」

 という男性の宣言と共に、幾つものなにかの液体が入った瓶が、女性たちによって運ばれてくる。

 

 そして、男性はそれらの瓶から液体を掬い、別の容器へと移しながら、混ぜ合わせていく。

 うーん、どれもこれも赤黒くて嫌な色だわ……

 

 そうこうしている内に、トゲトゲのある大きな印章が運ばれてくる。

 どうやらあれを押し付けて刻み込むみたいね。

 たしかにあれを押し付けられたら少し痛いだろうけど、暴れる程の痛さではないような……。トゲトゲもそこまで鋭いわけじゃないし、あの数なら分散されるはずだし。

 

 なんて事を思っている間にも準備は進み、混ぜ合わされた液体に印章が漬けられる。

 

「では、これより紋章を刻む」

 その言葉と同時に私と隣の少女に、印章が押し付けられる。

 

 ……っ!

 

 たしかに痛みが走ったが、大した痛みではなかった。

 こんなもので暴れたりはしな――いぎっ!?

 

 印章が押し付けられた部分が、何かで焼かれたかのような痛みを発する。

 

「……っ! ……っ!? ……っ!!」


 隣の少女が声にならない悲鳴をあげる。

 と同時に、私の腕――肉の中を何かが這い回りながら、引き千切っているのではないかと錯覚するような、そんな痛みが走り、それが全身へと瞬く間に広がる。

 

 ぎ……あああああああああああああああああああああああああああああああああっ!?!?

 痛い、熱い、苦しい、痛い、痛い、熱い、熱い、苦しい、苦しい、痛いっ!?


 皮膚を切った時のような痛み、どこかにぶつけた時のような痛み、なにかに刺さった時のような痛み、何かで焼かれた時のような熱さ、何かで呼吸を塞がれた時のような苦しさ、ありとあらゆる痛みと熱さと苦しさが同時に襲ってくる。

 その圧倒的な耐え難さに私も同じく悲鳴をあげるが、猿ぐつわのせいで声にならない。

 

「……っ!? ……っ!! ……っ!?」

 あぎぃ、あぁあぁっ!? がっ、ぎひぃっ! ひぐっ、ふぐぅ!? いぎぃいぃぃっ!!


 襲ってくる痛みが、変化を繰り返す形に変わり、目まぐるしく変化する痛みに、声にならない悲鳴をあげ続けながら、更に心の中でも悲鳴を上げる。こうでもしないと耐えきれる気がしない。

 そして、ひたすら悶え、耐えながら、原因であろう印章が押し付けられた腕を見る。 すると、刻まれた紋章から紫色の蛇が複数生えているのが見えた。

 な、何……これ……っ!?

 

 延々と続く痛みで狂いそうになりつつも、同じ紋章を刻まれた隣の少女の方へと顔を向ける。あの少女も同じ状況なのだろうか、と。

 すると、涙と鼻水でグシャグシャになっている少女の顔と、私の物よりも大きく長い蛇どもが暴れているのが見えた。

 

 そして暴れる蛇は、遂にその牙を少女に突き立て始める。

 喰らいつかれた場所から大量に出血。鮮血が服を染め、寝台を染め、床までをも染めていく。……もしかして、寝台や床のシミって……

 

「っ! っ!? っ!!」


 少女の身体が大きくのけぞったかと思うと、そのまま静かになった。蛇もその姿を消したようだ。

 気絶したのかしら? ……それで消えるなら、むしろ私も気絶したいわ。

 

 そんな私の方はというと、そういった事を悠長に考えられるくらい、先程まで激しい痛みは急速に治まり始めていた。

 ……そしてしばしの後、遂に一切の痛みがなくなる。

 その事に安堵しながら、腕に視線を向けてみると、あの蛇の姿も消えていた。……なんだったのかしら、あれ……

 

「ふむ、成人になれた者が1人に、なれなかった者が1人か」

 後ろに控えていた老婆がそう呟くようにいった後、私に印章を押し付けてきた男性が、私の猿ぐつわと枷を外しながら告げる。

「おめでとう、君は成人の儀の第一段階を終えた」


 ……どうやら紋章が定着し、成人の儀の第一段階とやらが終わったらしい。

 ……ふぅ。これをもう一度とかいうのは、勘弁願いたいわね。こんなもの、一生に一度で十分だわ。

 でも、第一段階でこれって、第二段階とか何をするのよ……ホント。

 

「あ、ありがとうございます。……あの、そっちの子は?」

 ピクリともしないその姿に、どうにも気になった私がそう問いかける。

 

「……残念ながら、心臓の鼓動が停止している。紋章を受け入れられなかったようだ」

 なんて事を言ってくる男性。


 ……え? 

 それって、死んでいるって事? 気絶しているだけじゃ……なくて……?

 そう声に出そうと思ったが、声にならなかった。

 

「我ら一族は、この絶霊紋を継ぐ事が使命の1つ。継げぬ者は必要ない」

 老婆が言うと、担架を持ってふたりの男性がやってくる。

 

 ふたりは隣の少女の枷を外すと、その身を担架に乗せ、部屋の奥へと向かう。

 ……奥? 

 

 不思議に思っていると、部屋の奥で、ふたりはおもむろに担架ごと少女を放り投げた。

 

「んなっ!?」

 私は男性たちの所業に驚き、部屋の奥へと走る。

 

 すると、寝台の上からでは気づかなかったが、部屋の奥は大きな縦穴になっている事が判明する。

 そして、その縦穴の底には大量の人骨が散乱しており、腐敗した死体まであった。

 ふと、そんな中にきらりと光る物が見える。……ん?


 …………え?

 

 目を凝らして見えたそれは……()()()()()()()()()()()()()()()()()だった。

 

「うぐ……っ」

 吐き気に襲われた私は、口元を手で押さえてしゃがみ込む。

 

 なんとかこみ上げてくるものを抑え、叫ぶ。

「これは……これは一体、なんなのよっ!?」


「一族の面汚しどもの残骸だ。そやつらに墓など必要ない」

 と、老婆が冷静に冷酷に淡々と言葉を返してくる。


「ふざけないでっ! 貴方たちは、人の命をなんだと思っているのよっ!?」

「まあ、それを見た者の半数以上が同じ事を言うけど、儀式が全て終わる頃にはそのような事を言う者はいなくなるわ」

 瓶を運んできた女性が、淡々とした口調で、私にそんな言葉を返してくる。


「それって、頭の中をいじくるって事じゃ……ないわよね?」

「なに、脳の一部にも紋章を刻み込むだけだ」

 私の問いかけにそんな風に返してくる私に印章を押し付けた男性。


 ……全然『だけ』じゃないわよ!? それ!?

 ああ……もしかして、この人は既に頭の中をいじられている?

 

「そんなのは、まっぴらごめんよっ!」

 そう言い放ってその場から逃げる私。

 

 しかし、部屋の出口は1つしかない。

 あっさりと出口を塞がれ、男性に羽交い締めにされた。

 

「そのように逃げようとする者も多いが無駄だ」

 そう老婆に告げられた直後、手に持った杖から電撃が放たれる。


「ぎぁ……っ!」

 私はその電撃をまともに食らい、一瞬にして視界が明滅。

 そのまま視界も思考も、その全てが黒く塗りつぶされ、意識を失った。

 

 ……その直前、何やら激しい物音が洞窟の入口の方から響いてきたように感じたが、それがなんであるのかは、わからなかった――

(ダーク)ファンタジー色の強いシャルロッテの過去話は、もう1話だけ続きます。

Firstとか書いてありますが、Secondで終わります。Thirdはありません。


追記1:記述のミスがあったので修正しました。

追記2:脱字があったので修正しました。ご報告ありがとうございます!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
クーちゃん!!シャルロッテと知り合いなのか。
[良い点] クー? やっぱり異世界拉致ですね
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。