表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
サイキッカーの異世界調査録(サーベイレコード)  作者: TOMA
第1部 異世界グラスティアの異変 第2章 ルクストリア編
79/764

第18話 アルミューズ城・下層捜索

 サージサーペントが討伐された事がカリンカによって宣言され、アルミューズ城へと渡る船の運行が再開される事になった。

 

 船着き場の管理事務所で、その再開準備を待っていると……

「何だと!?」

 というヴォルフガングの驚きの声が聞こえてきた。

 

 係員らしき人から何か報告されたっぽいが……なにか問題でも起きたのだろうか? そう思い問いかけてみる。

「どうかしたんですか?」


「ああいや……実は、魔獣が出現した報告を受けた直後に、城に残ってた観光客を誘導しつつ、案内の係員を全てこっちに引き上げさせたんだけどよ……1人だけ案内の係員が戻って来てねぇのが発覚したんだわ」

 と、そこまで説明した所で、報告してきた係員の方を向き、言葉を続ける。

「まあ、城内に残ってんなら危険はねぇだろうが……一応、探しに行くとすっか。ちょっくら城まで行ってくるわ。ああ、お前らは再開の準備を進めておけ、問題なさそうなら1時間後に再開すんぞ。もし、それまでに俺が戻らなくても再開だ」


 それを聞いた係員が敬礼し、外へと出ていく。

 

「なら、俺たちも同行しますよ。また湖に魔獣が出現する可能性もゼロではありませんし、ここで待っているだけなのも暇なので」

 そう俺がヴォルフガングに告げると、いつの間にか周りに集まっていたアリーセたちが一斉に頷く。

 

「そうね……湖に魔獣が出現する事自体異常だとも言えるし、もし何かあったら困るから、念の為、同行する方がいいわね。私は討伐宣言と事後処理があるから行けないけど……」

 と、カリンカ。たしかにギルドと何かやりとりしてるみたいだし、無理そうだな。

 

 ヴォルフガングは腕を組んで髭を撫でた後、

「ふーむ、たしかにそうだな。それじゃすまんが、同行を頼むわ」

 そんな風に言って、サムズアップしながら白い歯をキラリとさせた。

 なぜ、わざわざそのポーズを取るんだ……この人は。

 

 ――とまあ、そんなわけで俺たちは古城へと足を踏み入れた。

 古城側の船着き場は、かつて城内に荷物を陸揚げする際に使っていた最下層のフロアをそのまま使用しているため、船を下りると、そこは既に城内だったりする。

 

「ここで待ってんじゃねぇかと思ったがいねぇな……。どこ行ったんだ?」

 周囲を見回しながらヴォルフガングが言う。

 

 道中聞いた話によると、戻ってきていないのはマムート族の女性らしい。

 マムート族はたしか……大人でもヒュノス族の子供と変わらないくらいの身長しかないという、いわゆる小人タイプの種族だったか?

 そう言えば、何気にまだ見かけた事がないな。いやまあ……子供だと思っていた中に実はいた可能性もなくはないけど……

 

「ん、気配も感じない。少なくとも近くにはいない。うん」

「そうね、城内のどっかにいると考えた方がいいわね」

 気配察知能力に優れているロゼとシャルロッテが、結論を述べる。


「しょうがねぇ、城内を探すか……」

 頭を掻きながらそう言って、『下層への通路』と記された看板が立てかけられている通路へと入っていくヴォルフガング。

 そのヴォルフガングに続き、俺たちも奥へと進む。

 

 最下層フロアからはしばらく一本道の通路と階段が続いたが、2回ほど階段を登った所で、『アルミューズ城下層地図』と書かれたプレートが壁に掛けられている部屋へと出た。

 

 ……他に誰もいないからか、なんだか古城のダンジョンを探索している気分だ。

 なんて事を思いつつ、室内を見回すと、プレートの手前の台座には印刷された物と思われる地図が大量に積まれているのが見えた。

 

 地図を手にとって眺めてみると、どうやら下層には『監獄区画』『宝物庫区画』『倉庫区画』『厨房区画』『食堂区画』『水車区画』『地下工房区画』の7つがあり、今いるこの部屋から左右に伸びる通路を進めば、監獄区画以外の6つの区画に行く事が出来るようだ。

 

「中層より上に行っているとは思えねぇから、この層のどっかにいるんじゃねぇかとは思うが……」

 地図を見ながら推測を述べてくるヴォルフガング。たしかにその可能性が一番高い。

 

 というわけで、俺たちは左右にわかれて調べて行く事にする。

 組み合わせは、面倒なので男女でわけた。俺とヴォルフガングが右側の通路だ。


 ……

 …………

 ………………

 

「マリーッ! どこだーっ! 迎えに来たぞーっ!」

 と、ヴォルフガングが叫ぶも反応がない。

 ちなみに、マリーというのは探している女性の名だ。

 

「……こっちじゃなかったみたいですね」

 右側の通路から行ける『倉庫区画』『水車区画』『地下工房区画』の3つは、全て見て回ったのだが、どこにもいなかった。

 

「みてぇだな……。とりあえず中層への階段部屋に行くか」

 というヴォルフガングの言葉に従い、合流地点の中層への階段部屋へと向かう。

 

 が……

「ん? そっちにもいなかったのか?」

「はい。なので、そちらかと思ったのですが……」

 俺の問いかけに対し、そう返してくるアリーセ。


 どうやら、マリーは左側の通路から行ける『厨房区画』『食堂区画』『宝物庫区画』にもいなかったようだ。

 

「まさか中層にいるのか……? いや、一応『監獄区画』も見ておくか……? あんな辛気くせぇ所にいるとは思えねぇが」

 ヴォルフガングが髭を撫でながら言う。

 

「そうね。とりあえず『監獄区画』も見ておきましょ。すぐそこみたいだし」

 と、階段脇の扉を指さしながら言ってくるシャルロッテ。

 

 見ると、扉に『監獄区画』というプレートが貼られていた。

 なるほど、たしかにすぐそこだ。

 

「ん。誰かがいるような感じではないけど、一応開けてみる。うん」

 扉に耳を当てていたロゼが、そう言って扉を開ける。

 

 扉の先は直線の通路になっており、その脇に鉄格子のはめられた小部屋――牢屋が続いている、というシンプルな構造だった。

 クレアボヤンスで軽く確認するが、人影は見当たらない。

 牢屋の隅に隠れていたら別だが、そんな事をしているとは思えないしな。

 

「おーい、マリーッ! いるかーっ!」

 念の為に、とヴォルフガングが呼びかけるも、やはり反応はない。


 ……と、その直後、

「んん? 今、何か聞こえた。うん」

「ええ、かすかにだけど物音がしたわね、奥から。……というか、エルランでもないロゼが良く気づいたわね、今の音に」

「ん、私は耳が良い。うん」

 なんて事を言うロゼとシャルロッテ。

 

 ロゼの方は良く分からんが、シャルロッテ――エルラン族というのは、聴力に優れているようだ。……まあ、耳長いしな。ロゼ――ディアルフ族も長いっちゃ長いが。


「……とりあえず、牢屋の中を確認しつつ奥まで行ってみるか」

 俺はそう言って監獄区画へと足を踏み入れる。

 そして、牢屋を1つ1つ覗きながら一番奥まで行ってみるが、やはり誰もいなかった。


「うーん、物音がしそうな物もないわね。というか……物自体、天井の照明くらいしかないけど、ここ」

 俺の後ろからそう告げてくるシャルロッテ。

 

 シャルロッテの言う通り監獄というだけあって、観光客向けの後付けっぽい照明を除いて他には何もない。

 

「ん、もしかして幽霊?」

 ロゼの突拍子もないその言葉に対し、

「ありえなくはないですね……」

 と、アリーセが返した直後、ガタガタッという物音が響いた。


「今度は俺の耳にも聞こえたぞ。奥の壁の更に向こう側から聞こえたような……」

「うん、多分間違いない」

 俺の言葉に対し、頷き同意してくるロゼ。


「んん? この向こう側には通路も部屋もねぇぞ?」

 ヴォルフガングそう言葉を返してくる。


「まあ、ちょっと見てみるか」

 というわけで奥の壁まで行き、クレアボヤンスで透視を試みる。と――

「ん? この壁の向こう側に部屋があるぞ? 照明がないみたいで暗いけど」


「え? 部屋ですか……?」

「隠し部屋……って所かしらね?」

「うん、そう考えるのが良さそう」

 ヴォルフガングを除いた3人が俺の言葉を聞き、そんな風に話す。


 そんな俺らの事を見ていたヴォルフガングが、

「ちょ、ちょっとまってくれ! なんで兄ちゃんは壁の向こうが見えんだ!? しかも他の3人も、それがさも当たり前だっつー感じで、ごくフツーに話をしてるしよ!?」

 と、意味不明だと言わんばかりの表情で声を上げる。


 あー、そういや説明してなかったな……。うっかりしてた。

第1章の4.5話で各種族についての説明をしてはいますが、

種族解説だけをまとめた物を用意した方が良い気がしてきました……

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ