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サイキッカーの異世界調査録(サーベイレコード)  作者: TOMA
第1部 異世界グラスティアの異変 第2章 ルクストリア編
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第16話 サージサーペント・邂逅

「サージサーペント?」

「正式名称、シェルアーマー・サージサーペント。水棲の魔獣で、亀みたいな胴体と長い首が特徴だね。……にしても、まさかこのタイミングで湖に魔獣が出現するなんて……」

 俺の問いかけにそう返してくるカリンカ。

 

 古城へ渡る船に乗るために船着き場へとやってきた所、湖に魔獣が出現するとかで、船の運行が停止していた。

 で、その魔獣というのが、サージサーペントなる存在らしい。

 

「ん、魔獣の出現自体はルクストリアじゃ珍しくもない。うん。だけど、湖に出現するのはレア、うん」

「たしかにそうですね。普通、魔獣は魔力スポット付近に出現するはずですし……」

 ロゼとアリーセがそんな事を言った。

 ……魔力スポットってなんだ?

 

 というわけで魔力スポットとやらについて聞いてみると、どうやらこのルクストリアでは、複数の専用魔煌具を用い、魔獣の好む形に調律された魔煌波で満ちている領域を生み出し、そこに魔獣が現れるように誘導しているらしい。

 ふむ、要するに避雷針みたいなもの……か。まあ、所構わず出現されても困るし、当然っちゃ当然の対策ではあるな。

 

「うーん、どうしましょうか?」

 と、困り顔で問いかけてくるアリーセ。


「ん? 斬ればいい、うん」

「滅すればいいんじゃないかしら?」

「倒してしまえばいいと思うが」


 ロゼ、シャルロッテ、そして俺の3人でそう言葉を返す。


「討伐が前提なんだね……。まあでも、それが一番早いかも……」

 やや呆れ気味な様子でそんな風に言うカリンカ。

 

「じゃあ、ちょっと話をしてくるね」

 カリンカはそう言うと、船着き場の係員に話しかけ、討獣士ギルド職員の証明書を見せる。持ち歩いているのか……

 

 話しかけられた係員は、自分では対応が出来ないと言い、誰かを呼びに走っていく。 そしてしばらくすると、髭面の海賊みたいな風体のドラグ族のおっさんが現れた。

 

「討獣士が来てくれたんなら、話は早ぇな。もちろんこの場で依頼を出させて貰うぜ」

 と、そう言ってサムズアップしながら白い歯をキラリとさせる。なんだこれ……


 その謎のポーズに対し、シャルロッテが自分の次元鞄から刀を取り出すと、それを水平に持ち、おっさんの方へと腕を伸ばす。

「ええ、任せておいて。瞬殺するから大丈夫よ」

 

「おう、頼もしいな。船は俺が操縦すっから安心して戦いに専念してくれや。……っと、すまねぇ、自己紹介がまだだったな。俺はこの船着き場で元締めをしているヴォルフガングってぇモンだ。よろしくな」

 そこで再びサムズアップしながら白い歯をキラリ。……だから、なんなんだそれ。


                    ◆


 まあそんなこんなで、ヴォルフガングの操縦する船で湖へと出た俺たち。

 カリンカも撃破確認のためとかで同行している。

 

 うーん……なんというか、凄く青い湖だな。実に綺麗だ。


 湖に対するそんな感想を心の中で呟きながら、近くにいるアリーセに歩み寄り、

「アリーセ、ほれ」

 と、そう言いながらロゼから預かった魔煌弓を取り出し、それを手渡す。


「あ、はい。ありがとうございます。……って、なぜソウヤさんがこれを持っているんです?」

 という、もっともな疑問を口にしてくるアリーセ。


「ああ、ロゼから預かってくれって渡されたんだ。何かあった時のためにってな。……まあ実際、『何か』あったわけだから、ロゼの判断が正解だったな」

 そう言って肩をすくめてみせると、アリーセが笑う。

「ふふっ、たしかにそうですね」


「そう言えば、サージサーペントの特徴ってなんだ?」

「そうですね……水中にいる時に水と同化出来る事ですかね?」

「うん。そのせいで、気配も感じないのが厄介、うん。私でもギリギリまで感知は無理」

 俺の質問に対し、アリーセとロゼがそう答えてくる。


「気配を感じた時には間近にいて、姿を現す際に大波を引き起こして、船を転覆させにかかってくるのよね」

 補足するようにそんな説明をしてくるシャルロッテ。


「ああなるほど……。それでサージっていうのか」

 俺が納得して頷く。サージは、波打つとか渦巻くって意味だしな。


 ……っていうか、相変わらず魔獣の名前は長いな。

 あと、共通語であるガルド語ではない言語ばかりなのが、なんとも不思議だ。

 ディアーナの話だと、俺の耳に英語として聞こえるのは、ガルド語ではないけど共通語化されている物――外来語らしいし。


 そんな感じで魔獣の名前について考えていると、ヴォルフガングが船を停止させながら告げてくる。

「ここらが、奴の姿が確認された場所だ!」

 

「ふむ……。水と同化しているのなら、とりあえず雷撃でも撃ってみるか。近くにいたら驚いて出て来るだろ」

 というわけで、俺は魔法杖を呼び寄せ、雷撃を湖面にめがけて撃ってみた。

 クレアボヤンスで軽く確認しているので、魚に命中してしまう心配はない。


「……反応ないわね。気配もしないし」

「もうこの辺りには、いないのかな?」

 シャルロッテとカリンカがそんな風に言いながら、湖面を眺める。

 

「んー、もうちょい城の方へ行ってみっか」

 ヴォルフガングがそう言って再び船を走らせる。


 船の上から、クレアボヤンスで湖の中を覗いて見るが何も見えない。……というか、水が青すぎて視界がとても悪い。

 うーん、湖面を見ている分には、めちゃくちゃ青くて綺麗だけど、そのせいで水の中はクレアボヤンスでも湖底まで見えないくらいなんだよなぁ。

 ……それにしてもなんで、この水、『実際に色がついている』んだろうか? なにか混ざっているのか?


 そんな事を首をひねって考えていると、アリーセがどうかしたのかと問いかけてくる。

 というわけで、俺は今思った事を問いかけてみた。


「この湖には、魔獣を介さずに魔煌波が魔石化した魔晶が湖底に多く存在していまして、その魔晶から放出された魔力の影響で、湖の水がいわゆる魔煌精錬水と同じような状態になっているんですよ」

 そんな風に説明してくるアリーセ。


「ちなみに、一番多く放出されている属性の色になるよ。――今日だと水属性かな? 氷属性だともう少し薄い青だし」

 カリンカが船の縁から湖の水を掬いながらそう補足してくる。


「そうですね、青の色が濃いので間違いないかと」

 アリーセはカリンカの言葉に頷き、そう言った所で一度言葉を区切る。

 そして、顎に手を当ててしばし考えた後、

「……もしかしたら、この水属性の強い状態が、サージサーペントが出現した原因の1つになっているかもしれませんね」

 と、そんな推測の言葉を続けた。


 カリンカが立ち上がり、アリーセの方を見て頷く。

「なるほど……たしかにありえるね」


 サージサーペントの出現理由についてあれこれ話をしているうちに、船はクラウディア大橋の中間地点あたりまでやって来ていた。


「うん、それにしても、見当たらない。うん」

「たしかにそうねぇ……。どこに隠れているのかしら」

「ん、今日はもう休み?」

「もしそうだったら、ずっと休んでて欲しいわね」

 ロゼとシャルロッテがそんな事を言いながら周囲の様子を伺う。


「それにしてもデカい橋だな……」

 クラウディア大橋を見上げながらそう呟く俺。


「ん、たしかに大き――んんっ!? 真下に気配! 来る!」

 俺に言葉を返そうとしたロゼが、途中で気配に気づき、慌てた様子で声を上げる。

 

 何の気配なのかは言うまでもない。ギリギリまでロゼに気配を気づかせないような芸当が出来るのは、水と同化可能なあいつのみ。

 

 そう、サージサーペントだ。

戦闘に入るまでが結構長くなったので、一旦区切ります……

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