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サイキッカーの異世界調査録(サーベイレコード)  作者: TOMA
第2部 黄金守りの不死竜と調査録 第2章 遙かなる古の遺産編
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第211話[表] アーリオン・碑文、円環、そして顕れしモノ

<Side:Akari>

「これはまた実に『薄ら寒いもの』を感じるね。いや、これは『威圧』……とでも言えばいいのかな?」

 シズクがそんな事を言いながら碑文を見上げる。

 そしてそれに続くように、

「ひえぇ……『あの時』の幽霊みたいなのを感じるぅ……」

 なんて言いながら美香さんの後ろに隠れる日向さん。

 

「たしかにこの碑文、見ているだけでもよくわからない圧迫感というか……妙に全身がゾクゾクするわね……」

「シズクが『威圧』と言ったのも、ある意味納得ですね。凄まじく強い存在に敵意――殺意を向けられているような、そんな感覚がありますし」

 美香さんとユーコがそんな風に言う。

 

 まったくもってその通りだわ……

 と思いつつも、念写。

 

 エステルがカメラだとノイズが入ると言っていたけれど、念写なら問題ないわね。碑文の文字までしっかり見えるし。

 当然というか、念写した『絵』の碑文からは皆が言うような者は感じないし。

 

「念写出来たわ。これ以上は近づかずに撤収した方が良さそうね」

「うんうん、逃げよう逃げよう」

 私の言葉に、日向さんがブルブルしながらそう返してきた。

 ううーん……。トラウマを刺激してしまったかしら……

 

 と、そこで――

「……昏き波は彷徨わん。故に誘いの闇黒の標にて呼び寄せん――」

 そんな呟きが耳に響く。……え?

 

 驚きと共に声のした方へと顔を向けると、そこにいたのは剣崎さん。

「――昏き波は魔の道。幻魔の門と成りたるは呪にして印なる円環……」

 そう口にしつつ、『円環』を越えて碑文の方へと歩んでいく。

 

 ……って!

「まさか、クレアボヤンスで……!?」

「視てしまったようですねっ!」

「アレに魅入られたってわけだね……っ!」

 私の言葉に、ユーコとシズクが続く。

 

 と同時に、そのユーコとシズクが剣崎さんを止めようと左右から抑え込む。

 しかし――

「って! うわっ!? ち、力が強いっ!?」

「くぅっ……っ! これ……は……っ!?」

 ズルズルと剣崎さんに引っ張られる形となってしまうふたり。

 

「っ!」

 私が制止に加わろうとすると、

「駄目です! アカリはこっちに来ないでください!」

 というユーコの声。

 

 そういうわけにも――

「そうだね。中に踏み込んだから分かるけど、アカリの魂が『コレ』に触れたら駄目だね。『悪化』するよ」

「……っ!」

 

「なら、私たちが!」

「ひ、ひえぇ……! で、でも放っておくわけには……っ!」

 私の代わりにとばかりに、美香さんや日向さん他、数名の仲間が剣崎さんの抑え込みに加わるが、それでも止まらず……

 ついに碑文に手を伸ばす剣崎さん。

 

「――魔出りし門……開かれん」

 剣崎さんのその言葉と共に碑文が光り……剣崎さんは糸が切れたように脱力した。

 

「ぐぅっ!? も、戻って! すぐに!」

 私は円環の内側――地の底から噴き上がる強烈でどす黒い波動のようなものを感じ取り、そう叫ぶ。

 

 即座にユーコたちが剣崎さんを引っ張って戻って来る。

 と同時に、碑文から光の線が四方八方に伸び始め、円環の内側全てに瞬く間に広がった。

 

「これは……まるで魔法陣……」

 そんな呟きを誰かが口にする。

 そして、その呟きの通りだった。

 

「この感覚……暁で異界の魔物が出現する時に少し似ているね……。魔法陣じゃなくて『空気』の方だけど」

「こっちから地球へ飛ばされる直前に相対した奴……。あれが顕れる時もこんな感じでしたね……」

 シズクとユーコがそんな事を言った直後、

「ヲヲヲヲヲヲヲヲヲヲッ!!」

 声とも風とも言えない、奇妙な空気の振動する音と共に、円環全体から黒いオーラが立ち上った。

 

「……これは、ちょっと『大きい』のが来るわね……!」

「ま、そうだろうねっ!」

 私とシズクがそんな風に言いながら得物を構える。

 ユーコたちもそれに続き、全員が戦闘態勢に入ったその刹那、ドォンッ!という轟音と衝撃波が発生。

 

 同時に、何か黒い塊のようなものが『地面から飛び出し』て来て、円環の上――空中で膨れ上がった。

 

 素早く見上げると、それは黒い波動……いや、黒い球状の靄。

 直後、その靄が弾け飛んだかと思うと、その中に居た存在が顕になる。

 

「く、黒い翼……」

「赤黒い……角……」

 そんな呟きの通り、実にわかりやすい『シンボル』を持った茶褐色の……鎧? いえ、甲殻? ともかくそんな奇妙なもので全身の大半を覆った、黒寄りの紫の肌を持つ魔物。

 

「あ、悪魔……?」

「そうね……。そう表現するのがしっくりくるのはたしかだわ」

 日向さんに対し、美香さんがそんな風に返事をする。

 

 そう……。それはまさに悪魔。

 悪魔といっても色々いるけれど、それでもそう表現するのが一番妥当に感じられる。これはそんな魔物。

 

 前に、同じように悪魔と言える奴と出くわしたけれど、あれよりもこっちの方が『格が上』に感じられるわね……

 

「……さすがに、これはちょっとだけ厄介そうだね」

「ちょっとだけ、ではなさそうだけど……まあ、出てきてしまった以上は倒すしかないわね。どう考えてもやる気満々だし」

 シズクに対してため息混じりにそう返した所で、

「そうですね。あれは『門』の向こう側で『待ち構えていた』ようなものでしょうし」

 と、そんな風にユーコも言ってくる。

 

「となると……剣崎さんを『操った』のは、こいつの可能性が高いわね」

「つまり、そういう力を持っているってわけだね」

「そうなりますね」

 そこまで話した所で、「グオオォォオォオォォォオンンッッ!!」という咆哮が響き渡り、顔がこちらへと向けられた――

数週間空いたりはしませんと言いつつ、空きました! ごめんなさい!


色々あって間が空いてしまう事も告知出来ませんでした……

次こそ通常通り更新したい所なのですが、ちょっと難しい状況に……


というわけで次の更新なのですが『 8月2日(土) 』を予定しています。

変則的&少し空きますが、どうにかこの日に更新したいと思っています……

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