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サイキッカーの異世界調査録(サーベイレコード)  作者: TOMA
第2部 黄金守りの不死竜と調査録 第2章 遙かなる古の遺産編
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第205話[表] アーリオン・キメラと端末

<Side:Akari>

「これしか方法がなくてごめんね……っ!」

 私はそう言い放ちながらチャージショットを放つ。

 

 そしてそれは一直線に、気味の悪い形をした赤黒い樹のようなキメラへと命中。

「アアァァァ……」

 という消え入りそうな――というか実際に消えていった声と共に大穴が開き、そして爆ぜた。

 

 そう……こいつは、ガルフェン族の少女を取り込むような形で融合していた。

 頭から腹部にかけてが外側に露出し、手足が枝のようなものと張り付いているような、そんな感じだった。

 その部分を切断すれば問題なさそうに見えたけれど、その枝のようなものは、手足から身体の内側に入り込み、腹部にまで到達しており、切断すると生命活動が停止するような、そんな状態だった。

 なので、やはりというべきか救出は不可能。こうして消し飛ばすしか、もう方法はなかった。

 まったく……。本当に、本当にロクでもない技術よね……キメラって。

 

「副隊長、他の場所の『制圧』も完了しました」

 剣崎さんがそんな風に伝えてくる。

 そして、

「……結局、キメラ化した人で、助けられそうな感じの人は0だったね……」

 と、剣崎さんの後からやってきた日向さんが呟くように言った。

 

「まあ、こんな場所に閉じ込められている時点で、そうでしょうね……」

「そうね。そもそもキメラ化した人を元に戻せる可能性自体低いし……。今の子だって一見すると助けられそうだったけど無理だったもの。はぁ……まったくもって陰惨な所だわ」

 横にいる美香さんの言葉に頷きつつ、ため息混じりにそう返す私。

 

「――そうじゃな。じゃがまあ……キメラを元に戻す技術も研究しておるゆえ、ここに残されておるやもしれぬデータなどを回収する事が出来れば、その研究もより進歩する。そうすれば、助けられる人が増えるであろう」

 そんな声と共にエステルが姿を見せる。

 それに対して「あ、もう来たのね」と返す私。

 

「うむ。少しは制圧の支援も出来るやもしれぬと思って急いで来たのじゃが、その必要はなかったようじゃな」

 なんて言ってくるエステル。

 それに対して日向さんが、

「まあ、暴れているのも含めて、『倒す』のは大したことなかったからねぇ……」

 と返す。

 

「そうね。1体だけ結構な怪力のキメラがいたけれど、あのワニよりも弱かったし」

 同意しながらそんな風に私が口にすると、

「それはあなたが強すぎるだけよ……」

 と、やれやれと言わんばかりの表情で美香さんが言ってきた。

 

「ま、いずれ他の者もアカリと同等……とまではいかぬかもしれぬが、今よりも大幅に強くなるじゃろうよ。『黄金守りの不死竜』と……否、蒼夜と繋がりがある以上は、の」

 そんな風に言うエステルに、

「うぅーん……言われてみると、既にちょっと強くなってる気がするかも?」

「まあ、戦闘能力皆無だった日向が、下級のキメラを単独で倒せるくらいだし、そこは否定出来ないわね」

 なんて事を日向さんと美香さんが言った。

 

「皆無って酷くない!? 否定は出来ないというか、だからオペレーターだったんだけど!」

 憤慨しながらそんな風に言う日向さんに続き、

「……たしかに、クレアボヤンスの有効範囲が今までよりも1.5倍くらいに伸びていますね……。ここを外から覗く時、『ギリギリ確認出来る』と言ったのですが、実際に『視て』みたところ、ギリギリどころか建物内全体を視認出来ましたから」

 と言ってくる剣崎さん。

 

「ああ、それであんな詳細に説明してきたのね」

 納得の表情で美香さんがそう言うと、剣崎さんが「はい」と言って頷く。

 

「ま、それはそれとして……ここの制圧は完了したわけだし、次は詳しく調べないと駄目よね。エステル、とりあえずどう分担するか決めましょうか」

「そうじゃな……。そっちにこちらの世界のデバイスやコードに詳しいものがいれば、その者にもデータ系の調査を少し頼みたいのじゃが……」

「えっと……ウチの部隊は、こっちに来て間もない人ばかりだから、さすがに無理だと思うわよ? 私もまあ……デバイスは詳しいけど、コードがどうとか言われたら無理ね。ユーコならいけるけど、今は別行動中……というか、あっちはあっちで見つけた端末を調べているっぽいし」

 エステルにそう返しながら携帯通信機を確認する私。

 そこには、『培養槽のある場所で見つけた端末のデータを解析中です。残存していたキメラの一部が来ましたが、シズクが撃退したので問題ありません』

 なんていうメッセージが表示されていた。

 

 まあ、シズクひとりで護衛は事足りるものねぇ……


「ふむむぅ……たしかにそうじゃよなぁ……。うぅむ、妾たちばかりで調べてしまうと、情報や判断が偏ってしまうのが懸念としてあるのじゃが、まあ仕方がないかのぅ……」

 エステルがそう言った直後、

「あ、私は既にその辺りの学習はばっちりよ。さすがに完全とはいえないけれど、ある程度は出来るわ」

「私も少しなら大丈夫だよ」

 なんて事を、美香さんと日向さんが言ってきた。……え?

 

「そ、そうなの? なんというか、ある意味さすがって感じだわ……」

「ふむ。それならふたりに少し頼むとしようかのぅ。で、他の者たちには、隠されているものがないかの調査と、紙で残されている資料の確認を頼めるかの?」

「ええ、わかったわ。でも、隠し部屋とか隠し通路とかがあったら、既に剣崎さんが見つけているような……?」

 エステルに頷きながら、そんな風に言って剣崎さんを見る私。

 

「はい。一通り確認しまして、隠された金庫らしきものと隠し部屋は既に発見しました。金庫の方は大した物が入っていませんでしたが、隠し部屋の方には端末がありました。日向さんが言うには、その端末は他とネットワークが繋がっていないそうです」

「ネットワークが繋がっていない端末? それって要するに、物理的に外からのハッキングが不可能な状態にしているって事よね?」

 剣崎さんの報告を聞いて、そう私が口にすると、

「うむ、そういう事じゃな。まあもっとも、こんな所にハッキングを仕掛けようとしたら、竜の座のシステムが必要になるじゃろうし、そう簡単に出来るものではないがのぅ」

 と、エステル。

 しかしすぐに、「ふむ……」と言いながら顎に手を当て言葉を続ける。

「……逆を言えば、竜の座に至った者たちからのハッキングを警戒していたという事になるのぅ。……つまり――」

 

「――相当重要な情報が中にある可能性が高いってわけね」

 私はエステルの言葉を引き継ぐようにそう言った。

 

 一体、どんな情報があるのやら……だわ。

思ったよりも長くなってしまったので、一旦ここで区切りました……


とまあ、そんなところでまた次回!

次の更新も予定通りとなります、4月18日(金)の想定です!

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