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サイキッカーの異世界調査録(サーベイレコード)  作者: TOMA
第2部 黄金守りの不死竜と調査録 第2章 遙かなる古の遺産編
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第203話[表] アーリオン・外での発見

<Side:Akari>

「それにしても、話には聞いていたけれど、とんでもない場所ね」

「そうだね。本当に空に浮いているなんてねぇ……あまり下は覗きたくないけれど」

 美香さんと日向さんがそんな風に言う。

 それに対して、

「まあ、私もこんな場所は初めてみたけれどね」

 と返す私。

 

 どうでもいいと言えばどうでもいいけれど、日向さんはもうその喋り方でいくつもりなのかしら? 敢えて聞いたりはしないけれど。

 

「あら? 『幻燈壁』がイルシュバーンに比べて遠く感じるわね? 地域によって差があるって事なのかしら?」

「あー……どうだったかしら? あまり気にした事がないのよねぇ……」

 美香さんの問いかけにそう返事をしつつ、ユーコにメッセージを送って聞いてみる。

 すると、『その地域の魔煌波が濃いか薄いかで変わります。薄いと遠くに見えます』と返ってきた。

 

「――という事らしいわ」

「なるほど、たしかにそれなら納得だわ」

 メッセージをそのまま読み上げると、文字通り納得の表情でそう返してくる美香さん。

 

「遠くが見えない――地平線が見えないというのも不思議な感じだねぇ。まるで何かを隠しているみたい」

 日向さんがなかなかに鋭い一言を発する。

 

「それはまあコロニーの内壁を隠す為だし」

「……全部ノイズになったって事は、何かあるって事だね?」

 私の発言は当然のように全てノイズ化されたようで、そんな風に返してくる。

 

「……そうね。こればっかりは真実に自力で辿り着かないと解除されないから、これ以上はどうにもならないけれど」

「相変わらず不思議なシステムね。本当に」

 肩をすくめる私に、美香さんが腰に手を当ててため息混じりにそう言ってくる。

 

 それに関しては同意だわ……

 何の目的でこんな仕組みを生み出したのかしら?

 いまだに良くわかっていないのよねぇ……その辺りって。

 『銀の王』たちも、その辺りは把握出来ているわけじゃなさそうだし。

 

 そんな事を考えていると、

「あっ! ここ、下に建物があります!」

「スロープが続いているので、下っていけば行けそうです!」

 という声が聞こえてきた。

 

 その声は、私たちがさっきまでいた建物から少し離れた所にある崖の淵から下を覗き込んでいるふたりの隊員からのものだった。

 下? と思いながらそちらへと歩み寄る私。

 

 すると、たしかにそこ――崖下には建物があった。

 更に隊員の言う通り、その崖沿いに金属製のスロープが作られており、それが崖下の建物の入口と思しき所まで続いている。

 

「あっちの建物に比べると、随分と小さいねー?」

 日向さんが後方にある私たちがさっきまでいた建物と崖下の建物を交互に見ながらそんな風に言うと、

「倉庫……もっと言うなら物置的な所なのかしらね?」

 と、美香さんが続いた。

 

「たしかに大きさを考えたらそういう類の建物であっても良さそうな感じよね。でも、もしそうだとしたら、ちょっと運搬が面倒くさそうな気がするわ」

 私がそう建物を見回しながら言うと、

「そうだねー。逆にいらないものを処分する所とか?」

「ああ、たしかにそっちもあり得るわね」

 と返してくる日向さんと美香さん。

 

「うぐぐ……凜花さんがいれば簡単に中を確認出来るのにぃ」

「そうねぇ……。誰かクレアボヤンス持ちっていないのかしら?」

 日向さんに続いて皆の方へと顔を向けると、

「あ、私が持っていますよ」

 という声が聞こえた。

 

 声の方を見ると、長い黒髪の女性がバイザーを外した。

 そして、

「そう言えば、剣崎さんが持っていたわね」

 と、そんな風に言う美香さん。

 

 美香さんが名字でなおかつ『さん』と付けて呼ぶその女性は、雰囲気的には美香さんよりも少し年上そうな感じだった。まあ、年齢を聞くのは憚られるけれど。

 

「はい。少し視てみますね。この距離ならギリギリ確認出来ると思いますので」

 剣崎さんはそう言いながら崖の淵から建物を視る。

 

 建物までは直線だと100メートルあるかないかといった感じなので、ギリギリとは言うけれど、結構強力なクレアボヤンスね。

 凜花さんも同じくらいだったか、もうちょっと届くかも? という感じだったはず。

 

 ……蒼夜の1キロ先だろうと視てしまうクレアボヤンスが、むしろ理解不能な距離なのよね……

 

「……これは、普通のキメラよりも更に異形……というより、最早何をベースにしているのかが分からない異形すぎるキメラが複数体……いえ、結構な数、牢屋と呼ぶのがしっくりくる狭い部屋に閉じ込められていますね」

「異形すぎるキメラ? 閉じ込める……? 失敗作を閉じ込めている……?」

 剣崎さんの報告に、美香さんが顎に手を当てながらそう呟いて考え込む。

 

「失敗作の中で、処分するほどではないけれど、手に負えない――命令通りに動かない、そんなキメラを閉じ込めておく場所かもしれないね」

「そうね……その可能性はあるわ。あと、処分せずに別の実験や観察に使えそうなキメラとか、ね」

 日向さんの言葉に頷きながらそんな風に返す美香さん。

 

「どちらにせよ、『ロクでもない場所である可能性の高い』確認しないわけにはいかない建物って事ね」

「そうですね。しっかり調査した方が良さそうな建物です。どうも、資料室のような場所もあるようですし」

 私の発言に続くようにして、剣崎さんがそう告げてくる。

 ……それは、なおさら調べないわけにはいかないわねぇ……


「了解。まずはキメラを一掃して制圧する必要があるわね。……その方が良いでしょうし、色々と……ね」

「うん、そうだね……」

 私の言葉に建物を見ながら同意してくる日向さん。

 

 私はすぐにユーコに発見したものを伝えつつ、増援要請もしておく。

 それは、キメラを倒すのに手間取るかもしれないからというわけではなく、キメラを一掃した後に、施設内に残されている物――資料などを調べるのに手間取る可能性を考えての事。なので、戦闘能力よりも調査能力の高い人たちを要請した。

 

「さて、それじゃ行くわよ」

 私は携帯通信機をしまい、皆の方を見てそう告げると、早速スロープを下り始めた――

色々あって、いつもの時間までに半分も出来ていなかった為、さすがにその状態では出せず……

いつもと同じくらいの長さまで追加で書いた為、投稿がいつもの時間よりも大幅に遅くなりました……

次はいつもの時間に出せるようにしたいと思っています。……思っています。


ともあれ、そんなこんなでまた次回!

次の更新も予定通りとなります、4月11日(金)の想定です!

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