第202話[表] アーリオン・外へ
<Side:Akari>
「――これで全部かしらね?」
私が周囲を見回しながらそう口にすると、
「そうみたいですね。もう残っている敵の姿はなさそうです」
と、ユーコが返してくる。
「あの竜、再生しまくってくるから思ったよりも面倒だったけど、どうにかなったしね。いやぁ、なかなか高難度な命令をしてくるもんだねぇ」
と言いながら私を方を見てくるシズク。
そんなシズクに対して蓮司が、
「再生しまくってくる奴をどうにかするとか割と無茶苦茶だけどな」
なんて事を呆れ気味にそう言って肩をすくめてみせる。
「まあ、シズクなら周辺の雑魚さえいなければ、問題ないだろうと思っただけよ。実際倒せたわけだし」
「そう言えば、周囲の敵が減るにつれて再生が弱まっていた気がするね。もしかして気づいていた?」
私に対し、シズクがそんな風に言ってくる。
当然、気づいてなどいるわけもない。単なる偶然。でも――
「なんとなく妙な流れがあったから、カンでこう……もしかしたらって思っただけよ。実際、その通りだったのかまでは謎だけれどね」
と、適当な事を言っておく事にした。
そしてそのまま、ユーコと蓮司を交互に見て言葉を続ける。
「それで、次はどうしようかしらね?」
「他の面々の動き次第って所だろうな」
「そうですね。この施設自体はそこまで広くなかったようで、既に9割方制圧済みのようです。あとは隠された領域などがないかを調べるのがメインになるようですし、私たちは施設外へ出る方が良さそうです。外――この近辺には、まだ別の施設があるようですし」
ユーコが蓮司に同意し、携帯通信機を確認しながら言う。
私も同じように携帯通信機を確認すると、たしかにユーコの言っていたような情報が記されていた。
「なら、うちもそうすっか。出口は……見える所にはねぇな」
「ざっと確認した所、奥に続く通路しかなかったわ。とりあえず、そっちへ進んでみる?」
蓮司に続いて、美香さんがそんな風に言ってくる。
「そうしましょうか」
「それしかないな」
ユーコと蓮司が同時にそう言って頷く。
――というわけで、通路を進んでいくと、残っていたキメラが数体襲ってきたものの大した強さでもなかったのでシズクに瞬殺され……
「うっわぁ……まさにファンタジー世界だねぇ……」
なんて事を日向さんが言った通り、大きな窓から外が見える所までやってきた。
窓の外には地面と空が広がっており、まさにファンタジー世界と表現した通り、その空には『浮いている島』がいくつも見えていた。
「出口が良く分からんな……。面倒だし、窓を割って外に出るか」
蓮司がそう言うと、
「これ、強化ガラスみたいですけど……。それも凄い硬いです」
と、日向さんがガラスをコンコン……いえ、ゴンゴンとPACブラスターで叩きながら言う。
なるほど、たしかに硬そうね。でもまあ――
「それくらいならチャージショットでぶち破れるから大丈夫よ」
と告げる私。
そしてそれに続くようにして、
「それでもいいが、通り抜けられる人数が少なくて面倒だな。スプレッドチャージショットだったか? 拡散する奴で穴を開けまくってくれねぇか?」
なんて言ってくる蓮司。
「スプレッドチャージショット? まあ、あれでも穴は開けられると思うけれど……人が通れる程の穴にはならないわよ?」
「なに、穴さえ開けば後は俺がどうにかする」
「まあ、良く分からないけど、撃つだけなら別にいいわよ」
私はそう返事をすると、
「……という事だけど、窓を割る方向性でいいかしら?」
と、ユーコの方を見て問いかける。
「そうですね。一応奥も確認しておきたいところですので、私はもう少し先へ進みます」
ユーコが私に対して頷きつつそう返し、シズクの方を見る。
「シズクは私の方についてきてください」
「了解だよ。ま、私とユーコなら外へ出るのも簡単だしね」
「うん? ユーコが外へ出るのが簡単なのはわかるけど、なんでシズクも?」
シズクの言葉に対し、私が首を傾げながら問いかけると、
「え? 壁を斬ればいいだけでしょ?」
なんて事をサラッと言ってきた。
「……そうね。まあたしかにその通りではあるわね」
間違ってはいないのだけれど、そんな事が出来るのはシズクだけよ……とは、心の中でだけ呟いておく。
「なら、私たちは外に出たら通路に沿うようにして進むとするわ」
「だったら俺たちは反対方向へ向かうぜ」
私と蓮司はそう言うなり、窓ガラスに攻撃を叩き込む。
私はスプレッドチャージショットで、蓮司が広範囲に放出された炎ね。
私の攻撃によって無数の穴が空いた窓ガラスに炎がぶつかり、窓ガラスは粉々になった。
炎でどうして砕けるのか良くわからないけれど。
「どうして炎で砕けるんですか!?」
同じ疑問を抱いたらしい日向さんが驚きながら問いかけると、
「あれは『炎の振動波』だ。炎で発生する『振動』を開いた穴で発生する空気の流れを使って増幅させて、対象物を内側から粉砕するような感じ……か? 専門家でもなんでもねぇから、説明が難しいが」
なんて返してくる蓮司。
……うん? どういう事?
「極限定的な範囲に小さい爆発を発生させている……とかそんな感じなんじゃないかしらね?」
「あー、なるほどぉ……」
美香さんの補足するような発言に納得する日向さん。
それってつまり、蒼夜の持つ『いまだに良く分かっていない力』で、蓮司のパイロキネシスが炎を生み出すだけじゃなくなってるって事よね?
まあ、私たちも似たようなものだから、そういう進化変化が生じていても別におかしくはないのだけれど。
特に蓮司は、私たちよりも蒼夜と共に行動していた時間が長いわけだし。
私はそんな事を考えつつ納得し、
「まあ……とりあえず粉々になった事だし、外に出て移動を開始するとしましょうか」
と皆に告げた。
思ったよりも長くなってしまったので、ここで一旦区切りました……
とまあ、そんな所でまた次回!
次の更新はいつも通りに戻りますが、ちょっと間が空いてしまいまして、4月7日(月)の想定です!




