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サイキッカーの異世界調査録(サーベイレコード)  作者: TOMA
第2部 黄金守りの不死竜と調査録 第2章 遙かなる古の遺産編
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第199話[表] アーリオン・隠れ潜むモノ

<Side:Akari>

「――すいません、通信を聞いていたかもしれませんが、ちょっと『隠れている奴』を倒してくるので、残りの1体の方、お願いしてもいいですか?」

「はい、お任せください。そちらもお気をつけて」

 私の問いかけに対し、頷いてそう返してくる蓮司の部下。

 

 私はそれに対して頷き返すと、『感じ取った』方へと走る。

 それと同時にユーコに対して通信で、

「今、向かっているわ。距離的にはちょうど中間と言った感じね」

 と投げかけた。

 

「そうですね。ですが、そちらは敵に行く手を遮られた場合、移動速度が落ちるのでは?」

「それに関しては大丈夫よ。車輪斬して進むから」

 ユーコの問いかけに対し、そう答える私。

 

 水平回転兜斬りだと、『縦回転』なのに『水平』なのがどうなのよって感じだから、車輪斬に改名してみたのよね。

 なにしろ、あれって私自身が車輪になっているようなものだし……

 何かに発音が似ているけど、そこは気にしない。

 

「シャリン……ザン? よくわかりませんが、まあ速度が落ちないのなら同時に到着出来そうですね」

「ええ、すぐに行くわ」

 私はそう返事をすると通信を終え、迫ってきた空飛ぶイグアナもどきを斬り上げながら中空へと跳ぶ。

 

 そして『感じ取った』方を素早く再確認すると、前方へと高速移動。

 ……からのっ! 縦回転斬り――

「車輪斬っ!」

 

 空飛ぶイグアナもどきを斬り裂きながら、一直線に突き進む。

 

「また、とんでもない技を編み出しましたね……」

 そんな通信が入ってくる。

 という事は、間近にユーコがいるというわけで……

 私は回転を停止させ周囲を確認。

 

 上下左右に素早く動きながら私の方へとユーコが近づいてくる。

 ……まあ、ユーコは普通に『飛べる』から便利よね……

 

「一撃で倒せる相手なら、今ので突き進めるから楽よ」

「まさに車輪ですね。私よりも若干早く着きましたし」

「で、それはそれとしてこの辺りのはずだけど……」

「……そこですね」

 降下しながら見回す私とは対象的に、下を見てそう呟くように言うユーコ。

 そしてユーコは、そのまま魔法弾を床めがけて放った。

 

 すると、魔法弾が床に触れる直前に、バチィッ! というスパーク音と共に『何か』に衝突し、そして掻き消えた。

 

「「床下にいるようです!」」

 うん? ユーコの声が二重になっている?

 ……って、片方は携帯通信機からね。でも、なんでこの距離で通信?

 

「おう、任せろ!」

 その声と共に、蓮司が渦巻く炎を纏った刀を構え、ユーコの魔法弾が掻き消えた辺りに向かって、床スレスレの超低空跳躍――縮地とか言っていた気がするわ――で踏み込んでいくのが視界に入る。

 

 っと、それはそれとして……なるほど、そういうわけね。

 でもまあ、蓮司の部下がいて、蓮司自身がいないわけがないんだから当たり前よね。

 蓮司ならば『さっきの』を感じ取れているだろうし。

 

 なんて思っている間に、ユーコの魔法弾が掻き消えたまさにその場所に到達した蓮司。

 その蓮司に対し、「そこです!」と告げるユーコ。

 

 「了解だっ!」と言い放ちつつ、蓮司が刀を勢いよく床へと突き立てる――というか、突き刺す。

 

「グゲギャァァアァァアァァァッ!?!?」

 業火で床が赤熱すると同時に叫び声が発せられ、唐突に発生した強烈な風が私たちを薙ぐ。

 いえ、風というか……衝撃波? 何かが爆発した?

 

 そんな事を思いながら着地した所で、

「やっぱりお前たちも来たか」

 と言ってくる蓮司。

 

「それはこちらのセリフでもあるわね。ユーコは気づいていたみたいだけど」

「まあ、飛び回っている時に『こちらに向かって直進してくる大きな火の玉』が見えたので、おそらく蓮司さんだろうと」

 私に続いて、そんな風に言うユーコ。

 直進してくる大きな火の玉って……

 

「火の玉のなったつもりはねぇんだが、俺の周囲に炎を発生させながら一直線に突進してきたのはたしかだな」

「ある意味、灯と同じ方法ですね。こちらは地上ですが」

「ああ、グルグルと車輪みてーに回転しながら中空を移動してたな」

「……あ、なるほど。だから車輪斬なんですね」

 蓮司の言葉で名前の意味を理解したらしいユーコに、

「今更理解したの!?」

 という突っ込みを入れる私。むしろ、突っ込みを入れざるを得ない。

 

 そして突っ込みを入れ終えた所で――

「……それはそれとして、さっきの叫び声だけど、あれで『倒せた』のかしらね? 何も感じなくなったけど」

 という問いの言葉を続ける。

 

「そうだな。気配のようなものは感じねぇし、空飛ぶイグアナもどきの動きが乱れてんな」

「はい。一斉にこちらに襲ってきても良さそうなものですが、その兆候がありません。つまり、倒せたと考えて良いのでは――」

 ユーコ蓮司の発言に頷き、そんな風に言葉を紡いでいる途中で状況が変わった。

 

「っ! 一斉に動き出したわよっ!」

 突然、空飛ぶイグアナもどきがこちらに向かって殺到し始めた事に気づき、そう警告を発する私。

 そして、それに反応するようにユーコと蓮司は、

「再び存在を感じられます!」

「復活したってのか!?」

 と、それぞれ言いながら空飛ぶイグアナもどきに対して攻撃を仕掛けた。

 

 ふたりの炎と魔法弾、そしてそれに少し遅れて私の魔法の矢が、空飛ぶイグアナもどきを撃ち落としていく。

 その最中、蓮司が何かに気づいて上を向きながら言い放つ。

「……っ! 上だっ!」

 

 蓮司の声に反応して顔を上に向けると、その直後、

「グ……ガ……。ミヤブル……。デンジャー……。タイショ……。キル……」

 何故か日本語と英語の入り混じったカタコトの言葉が、私の耳に響いてきた。

 

 いやまあ、正確にはグラスティアの言語であって、日本語と英語ではないのだけれど。

 たしか、日本語に聞こえるのがグラスティアの標準語で、英語に聞こえるのが旧共通言語――他のコロニーも含めた共通語……だった気がするけど……ま、それは今はどうでもいいわね。

 

 そんなどうでもいい事を考えていると、ユーコが「そこですね!」と言いながら魔法弾を連射。

 と、唐突に何もいないはずの空間が、パリィンというガラスが割れたかのような音と共に砕け散った。

 ――かと思うと、エルラン族、ディアルフ族、ガルフェン族、カヌーク族、ルビーサ族の『頭部』が、ひとつの巨大な『肉塊』にくっついたような奴が姿を現す。

 そして良く見ると、もうひとつ……ヒュノス族だかセレリア族だかマムート族だか判別出来ない『頭部』が黒焦げた状態で垂れ下がっていた。

 

 うっわぁ……なんか肉塊がドクドクと脈打ってる上に、いかにも毒ですと言わんばかりの黒い体液みたいなのが『頭部』と『頭部』の合間から滴ってるし……

 気色悪いというか、こう……グロい系のホラーに出てきそうな奴が現れたわねぇ……

もうちょっといきたかったのですが、さすがに長くなりすぎるので、ここで区切りました……


とまあそんな所でまた次回!

次の更新も予定通りとなります、3月24日(月)の想定です!

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