第191話[表] 各方面と銀の王
<Side:Akari>
「随分と大掛かりねぇ……。誰がどこに回るのか決めるのが大変そうだわ」
「そうじゃな。じゃが、これを同時に行わねば、竜の御旗――否、『銀の王』の動きを止められぬ」
シャルのもっともな言葉に対し、エステルが頷きながらそう返す。
「どういう事? アーリオンは、まあ……奴らの拠点と化しているからわかるけど、他のふたつはどういう繋がりが?」
「……エレンディアの方は、アーティファクトメイカーズか」
首を傾げながら問うシャルに対し、エステルに代わるようにして、そう答えるロディ。
アーティファクトメイカーズ……ねぇ。
竜の御旗とも繋がりがあるのはある程度判明していたから、そう言われると納得だけど、今まで動きを掴ませないどころか、『こちら』のお偉いさんも絡んでいるフシがあって、なかなか厄介だったのよね。
「――『黄金守りの不死竜』が動くと決めた以上は、何か進展があったのだと思いますが、何がきっかけになったのでしょう?」
ユーコがそんな風に問いかけると、エステルはユーコを見て、
「おぬしがきっかけじゃよ」
なんて返してきた。
「ほえ?」
理解が追いつかず、素っ頓狂な声を発するユーコ。
……余程想定外の返しだったみたいね。
ほえ? なんて初めて聞いたわ。
「おぬしが地球に飛ばされ、ソウヤたちが地球へ向かう事になったのが、ある種のきっかけなのじゃよ」
「――なるほど。『英語』だね」
エステルの発言に対し、顎に手を当てながらそう返す珠鈴。
英語……。そう言えば、アーティファクトメイカーズって、そのまま英語なんだったわね。
私には普通に聞こえるけど、グラスティアには本来存在しない言語だから、アルファベットも発音も理解出来ないとか、前にロゼたちが言ってた気がするわ。
「その通りじゃ。地球の言語である事が判明した上、おぬしらはその地球へと向かい、そして地球にあるふたつの組織と接触したわけじゃ。つまり――」
「――ABSFと超常現象調査室の持つ情報を……力を借りたという事ですか」
エステルの発言を引き継ぐようにそう口にするユーコ。
「ま、そういう事じゃ。どちらも実に優秀な組織ゆえ、必要な情報をあっさりと集める事が出来たからのぅ。それを使って、奴らの『壁』に穴を開けてやったのじゃよ。奴らも、さすがに地球からの『援護射撃』があるなどとは、想定もしていなかったようじゃな」
エステルが、そう言いながら両手を広げる。
それはまあそうでしょうねぇ……と思いながら、
「まあなにはともあれ、竜の御旗側に加担している地球人がいるのが確定したってわけね」
と、そんな風に言う私。
そしてそのまま、
「……という事は、あの『ターン制の術式』を生み出した人間も、ようやく尻尾を見せたって事でいいのかしらね?」
という問いの言葉を投げかける。
「うむ、その通りじゃわい。といっても、まだ不完全じゃからの。完全にするにはジオフロントのアーティファクトメイカーズの拠点を制圧して、情報を得る必要がある感じじゃ」
「……その感じだと、拠点制圧だけじゃ終わらないわよね? そのままあの『ターン制の術式』を生み出した人間の所へも乗り込むつもりだったりするのかしら?」
エステルの発言に対し、シャルがそんな風に返す。
あ、そこまでやる感じなのね。
と思っていると、
「そういう事になるのぅ。情報を得次第、即座に仕掛けねば逃げられかねんからのぅ」
と言ってやれやれと首を横に振ってみせるエステル。
「となると、そちらは私たち広捜隊がメインになりそうですね」
「そうだな。と言っても、ユーコとアカリはアーリオンだけどな」
ユーコの言葉に対し、頷きつつもそう返してくる蒼夜。
って……え?
「私とユーコはアーリオンなの?」
「ああ。冥界と関係があるのはアーリオンだからな。それに……どうやらアーリオン自体にも、ど『ふたりが必要』で、なおかつ『石化や朔耶に繋がるもの』がある可能性が高い……と、事前の報告で言われたんでな」
私の問いかけに、蒼夜がそんな説明をしてきた。
「なるほど……そうなのね。だとしたら、蒼夜もアーリオン?」
そんな風に問うと、
「いや、俺はオルティリアへ行く予定だ」
「ちなみにー、私も行きますー」
なんていう想定外の返事が返ってきた。
「うん? ソウヤがそっちに行くのは想定外。うん。でも、ディアーナ様が行くのは、もっと想定外……。うん」
「あそこの深奥にはー、グラスティアの人々の魂がー、地球へと流れてしまう現象に関係する何かがー、ありそうなんですよー」
ロゼの発言に対し、女神様がそんな風に返してくる。
あー……。そう言えばそんな話あったわねぇ……
「ちなみにあそこには、グラスティアコロニーで唯一の『ドッキングベイ』があると言われているよ」
「ドッキングベイ……。つまり、宇宙船が直接グラスティアに入る事が出来る場所――港っつーわけか。そしてそれは、鬼哭界の『銀の王』一派が『宇宙船を使って大軍で侵入出来る場所』でもあるっつー事だな」
珠鈴が付け加えるようにしれっととんでもない事を口にするが、そこには特に驚きもせず、腕を組みながらそんな風に言う蓮司。
でも、今ので理解したわ。
そこを竜の御旗――というか『銀の王』に奪われてしまわないよう、『黄金守りの不死竜』が制圧してしまおう……というわけね。
なるほどねぇ……
まだちょっと、どう連動しているのかが良く分かっていないけれど、たしかに3ヶ所ともしっかり関係しているというのは分かったわ。
うーん……
私とユーコはアーリオンみたいだし、他の広捜隊の面々も、ほぼエレンディアだろうからそこはいいけど、他の面々――『黄金守りの不死竜』の戦力を、どういう風に分けるのか……というのが、シャルの言っていた通り、色々と大変そうねぇ……
次の話から、早速各方面の話になります。
とまあ、そんな所でまた次回!
次の更新も予定通りとなります、2月24日(月)の想定です!




