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サイキッカーの異世界調査録(サーベイレコード)  作者: TOMA
第2部 黄金守りの不死竜と調査録 第2章 遙かなる古の遺産編
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第190話[表] 冥界と環状諸島、そして……

<Side:Akari>

「それは一体どういう事?」

 エステルの私とユーコの力が必要だという一言に対し、私はそう返す。

 すると、

「――石化した人間を元に戻す。その為におぬしらの血……いや『魂』の情報が必要になるのじゃ。まあ、やる事自体は至って単純での。以前行った冥界探索、あれの『深奥』版を行う……。それだけの話じゃ」

 なんて事を言ってくる。

 

「冥界探索の深奥版……」

「要するに冥界の更に奥へと向かうわけですか。そしてそれには、ヴィストリィ家の末裔――血統であるという『認証』が必要になる、という事ですね」

 私に続き、そんな風にユーコが言う。

 

 ああー……そういうわけね。

 どうやってヴィストリィ家の転生者なのかを読み取っているのか知らないけれど、たしかに私たちであれば、認証を通せたりするわね。

 

「でも、それなら私たちのどちらかひとりで大丈夫なんじゃないかしら?」

 そう私が問いかけると、

「低位の認証はそれでも問題ないのじゃが、高位の認証となると、ひとりでは足らぬのじゃよ。ふたりで揃って認証せねばならぬ」

 と、そんな風に返してきた。

 

 ……ひとりでは足りずふたりなら問題ない……と。大体理解したわ。

 だったら、もう一度こう言えばいいのかしら?

 ああー……そういうわけね。と。

 

 私はそう心の中で呟くと、顎に手を当てながら口にする。

「……つまり、私たちふたりでカローア・ヴィストリィの魂を分割してしまっているから、ひとりだと『魂の強さ』みたいなものが足りないとか、そんな感じなわけね」

 

「ま、そんな感じじゃな。しかし、ただ単に冥界の探索の続きを行った所で意味はないのじゃ。まずは奴ら――『鬼哭界』の連中――いや、古き研究者どもの転移実験を打ち砕きつつ、()の地を制圧、そこを調査せねばならぬ。そこに『冥界で必要となるであろうもの』があるはずじゃからの」

 エステルがそんな事を言いながら、チラリと女神様を見た。

 

「なるほど……。ディアーナ様の追跡というか逆探知というか……その結果の先が判明したという事か」

 納得の表情でそう珠鈴が呟くように言い、

「で、石化の解除に繋がるモンがその先にある、と。だが、それを得るには奴らの実験施設が邪魔で、ぶっ潰す必要がある、と。そういうこったな」

 と、蓮司が続く。

 

「ん。なるほど、理解した。それで……うん、そこはどこ?」

 ロゼがもっともな疑問を口にすると、女神様とエステルが互いに頷き合う。

 そしてそのままエステルが、女神様の代わりに口に開いた。

「――グラスティアの中心。歪みに歪んだ魔煌波によって生じる嵐と磁気嵐……ふたつの嵐と、超重力(スーパーグラビティ)振動波(ウェーブ)に遮られ、何人たりとも立ち入り事の出来ない……はずじゃった場所……。アーリオン環状諸島じゃ」

 

「アーリオン環状諸島……か。存在自体は確認されているが、飛行艇が異常を引き起こしてしまうせいで、いまだに未踏のままになっている、円形に浮遊島が連なっている場所だな」

「それってつまり、奴らはあの嵐と重力波を突破する事が出来るって事よね?」

 蒼夜の言葉に続き、そんなもっともな疑問を口にするシャル。

 

「そういう事になるのぅ。まあ、鬼哭界の『船』はスペースシップとも言うべき代物じゃ。歪んだ魔煌波が生み出す嵐も磁気嵐も……超重力振動波も関係なく進めるのじゃろう」

「そういったモンへの対策が施されている……つーわけだな。……そこんところ、どうなんだ? 姉貴」

 エステルの言葉に、蓮司はそんな風に言って珠鈴を見る。

 

「そうだね……。少なくとも『竜の御旗が普段使っている飛行艇』は、グラスティアで製造されたものだ。まあ、鬼哭界由来の独特技術が、あれこれと用いられてはいるがね」

「なるほどなのです。『普段使っている飛行艇』は、私たち『黄金守りの不死竜』と同じく、一般的な飛行艇を強化、改良したもの……なのですか。でも、その言い回しだと、『別の物』もあるですね?」

 珠鈴の発言に頷いて納得しつつ、そんな風に呟くクーさん。

 それに対して珠鈴は、「うむ、その通りだよ」と返した後、更に言葉を続ける。

「――『銀の王(しろがねのおう)』とその直下の奴らが使っている飛行艇は、それらとは違う。鬼哭界から直接持ち込まれたものだ」

 

「つまり……その嵐その他諸々を突破出来る飛行艇は、鬼哭界でしか作れないというわけね」

「そういう事になるな。鬼哭界にしかない素材を使うのか、それとも秘匿の技術が使われているのか、それはわからないけどな」

 私の言葉に、ロディが同意しつつそんな風に言う。

 

「ま、なんにせよ、奴らはアーリオン環状諸島へ行けるって事だな」

「いまいち良くわからないけど、そんなとんでもない場所へどうやって行けば?」

 肩をすくめながら言う蒼夜に続くようにして、首を傾げながら疑問を口にする莉紗ちゃん。

 

「ふっふっふー。そこは私に任せてくださいー。追跡によってー、座標データは完璧に取得済みですー。テレポータルでー、簡単に行き来する事がー、可能ですよー」

 女神様が何やら得意げな表情でそんな風に言ってくる。

 

「さすが女神様っ!」

「うん。たしかに。なら、戦力を集めて踏み込むだけ。うん」

 莉紗ちゃんに続き、ロゼが頷きながらそう口にする。

 

「そうだな。エステルから『ロゼを救出する為に、鬼哭界のセンチネルビルへ乗り込んだ時の倍以上の戦力』を集めておくように告げられたから、既に部隊編成中だ。編成が完了し次第、乗り込める」

「倍以上? さすがに多すぎない? センチネルビルへ乗り込んだ時も、明らかに過剰戦力だったわよね?」

 蒼夜の発言に、首を傾げながら問う私。

 するとそれに対して、

「まあ、あれは若干血が上っていた所はあるな。うん」

 なんて事を、頬を掻きながら返してくる蒼夜。

 

 若干……? と私は思ったが、そこには触れない事にした。

 ロゼとマーシャがそれだけ大事だというのは良くわかっているし。

 

 そんな事を考えていると、シャルが、

「……要するに、『そこだけじゃない』という事よね? 他に踏み込む場所があるという事よね?」

 と、そんな問いの言葉をエステルへと投げかけた。

 

「さすがじゃのぅ。……その魔法探偵シャルロットそのものな格好をしてから、少し知力が上がった感じがするのぅ」

 エステルがそうシャルに対して返すと、それを聞いていた蓮司と美鈴が、

「服に知力アップの効果なんてねぇだろ……」

「なりきり効果……みたいなものはあるかもね」

 なんて事を呟いた。

 

 ……うんまあ、たしかにちょっとシャルロットっぽいかも。

 ちなみに、防御魔法は既に付与済みらしく、普通にこの格好で戦闘が可能らしい。

 なら、私もあの格好で……と思ったら、ユーコに「駄目です」と言われた。なんでよ……

 

「ん、たしかにシズクあたりは歓喜しそう。うん」

「シズクに歓喜されても、まーったく嬉しくないわねぇ……」

 ロゼの言葉に、そう返して首を横に振るシャル。

 と、その直後、ハッとした表情になり、声を大にして言葉を紡ぐ。

「って! この服の事はどうでもいいのよ! それより、他に踏み込む場所の話よ! 一体どこに踏み込むつもりなのよ!?」

 

「――オルティリアにある、最早大迷宮と呼んでも過言ではない()の遺跡……。そして、エレンディアのジオフロントじゃ」

 エステルがそんな風に告げてくる。

 

 ……って、2ヶ所!?

 アーリオンとかいう所を含めたら同時に3ヶ所に踏み込むって事よね……

 う、うーん……。なかなかにとんでもない事になってきたわねぇ……

3ヶ所同時進行です。

まあ……最近出ていない面々も多いので、ある意味この先で一気に再登場となります。

と言っても、その前にまだもうちょっと説明が続きますが。


といった所で、また次回!

次の更新も予定通りとなります、2月21日(金)の想定です!

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