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サイキッカーの異世界調査録(サーベイレコード)  作者: TOMA
第2部 黄金守りの不死竜と調査録 第2章 遙かなる古の遺産編
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第181話[表] 地球・ユーコとクーレンティルナ

<Side:Akari>

「和風聖女……?」

 ユーコの着ている服を見て真っ先に出た言葉はそれだった。

 

「和風聖女などと言われても、意味が良く分からないんですが……?」

「それはまあそうなんだけど、向こうの『聖女』の装束って、そんな感じでしょ? 白いワンピースドレスに装飾の施されたプレートが胸の辺りと腰辺りに付いてるじゃない。帯を模したベルトと連結してる奴が」

 もっともな返事をしてきたユーコに対し、私がそう答えると、

「たしかにティアさんとかは、こんな感じの服を良く着ていたりしますね」

 と、顎に手を当てながら返事をしてくるユーコ。

 

「でしょ? そこに巫女装束の袖みたいなのを付けて、ベルトから赤い紐が垂らして、もうちょっとスカートの脇を赤色にしたら、まさに『同じ』じゃない?」

「うーん……なるほど、言われてみるとその通りですね。でも『それ』は聖女の装束ではなくて、蒼夜さんのデザインした服らしいですよ?」

「あ、そうなの? 私はてっきりあれが聖女の一般的な装束だと思っていたわ。そのくらい『いかにも』な感じだったし」

 私とユーコがそんな話をしていると、

「……その話、もうちょっと詳しく!」

 と、蒼夜の母親が割り込んできた。

 そしてそのまま、

「まさか、蒼夜にデザイン性で上回られるとは思わなかったわ……っ! もうちょっと改良を加えないと……」

 なんて事を言いだした。

 

「え、えっと……。か、紙とペンはありますか?」

 私がそう問いかけると、蒼夜の母親は即座に、

「ここにあるわよ。はい」

 と言って、私に対してスケッチブックとペンを差し出してきた。

 

 ……あれ? 今、どこからスケッチブックが……?

 持ち歩いているようには見えなかったのだけれど……

 

 ……ま、まあ、細かい事は気にしない方がいいわよね。うん。

 

 私は何も考えなかった事にして、スケッチブックとペンを受け取り、

「言葉だと伝えづらいので、実際に描いてしまいますね」

 と告げた。

 そして、転写のサイキックを使ってティアさんとその服装を記憶から再現する。

 

「――こんな感じですね」

「随分と上手いわね。まるで写真のようだわ」

 私が転写した絵を見せるようにしてスケッチブックを手渡すと、蒼夜の母親がそれを見てそんな風に言ってきた。

 

 ……普通に描いたなら最高の褒め言葉だけれど、これサイキックでコピーしているだけだから、素直に喜べないわね……

 なんて事を思いつつ、「あ、ありがとうございます」とだけ返す私。

 

「むむぅ……。まさか巫女服とワンピースドレスをベースにファンタジーな服に仕上げるとは思わなかったわ……。ある意味、私と旦那のいいとこ取りね……」

 蒼夜の母親は私の描いた――転写したそれをじっくり見ながらそんな風に呟く。

 そして莉紗ちゃんも、横からスケッチブックを覗き込みながら、

「あー……言われてみると、そうかも」

 と、そんな風に言った。

 

「たしかに、こういう感じの方が……いえ、もうちょっと和の要素を強くした方がユーコさんには似合いそうね。……ここをこうして……こっちがこうなって……」

 蒼夜の母親はユーコを見ながら何やら呟いていたかと思うと、唐突に、

「――うん、『今から作る』わ! さすがに今日中は無理だけど、後日届けるわね! もちろん代金はいらないわよ!」

 などと捲したてるように告げてきた。

 なんというか、熱が入ったような感じね……

 

「え? い、いえ、その……そ、そこまでしていただかなくても……」

 ユーコがちょっと後ずさりながら遠慮の言葉を述べる。

 しかし、蒼夜の母親はそれに対して、

「気にしないで。私が勝手にやる事だから。まだまだ我が子に負けたくないっていうだけの事だし。受け取って着てもらえれば、それで満足というものよ」

 なんて事を言ってくる。

 そしてそこに更に、

「……こうなると是が非でも作って届けてくるから、大人しく受け取っておいた方が良いと思うよ」

 という莉紗ちゃんの言葉が続いた。

 

「……そ、そうですか。えっと、でしたら、ありがたく受け取らせて貰います」

「ええ。あ、着てもらえれば満足だけど、実際に着てみた感想をくれるともっと嬉しいわ」

「あ、はい。それはもういくらでも」

 

 ――とまあそんなわけで、ユーコは服を1着貰える事になった。

 いいわねぇ……。私もちょっと欲しいわ……

 

 などと思っていると、

「やっぱり、ここに居たんだね。こっちはこんな感じになったよ」

 という蒼夜の父親の声が聞こえてきた。

 

 そちらへと顔を向けると、蒼夜の父親とその斜め後ろを歩くクーさんの姿があった。

 

 クーさんの服はというと、フリル付きオフショルダーのトップスの上に、犬耳フードの付いた白いパーカー。そして黒いプリーツミニスカートというものだった。

 ある意味シンプルだけれど、たしかにクーさんにピッタリな感じね。

 

「凄くクーさんに似合っているわよ」

「はい。まさにピッタリと言った感じです」

 私とユーコがそんな風に言うと、

「色々考えてこれに落ち着いた感じだよ。これなら微調整するだけだったし。個人的には、チャイナドレス風の服をベースにしたものも良いと思ったのだけどね」

 と、そんな風に言ってくる蒼夜の父親。

 

「た、たしかに良い服ではあったですが、あ、あれはちょっと露出しすぎなのです……」

「……そう言われると、個人的にはそっちの服が気になるんだけど……」

 クーさんに対してそう返しつつ、

「というかそのパーカー、珠鈴の着ていたものに似ているわね」

 と、そんな風に言葉を続ける私。

 

「あ、はい。珠鈴さんの着ていたパーカーと同じシリーズなのです」

「なるほどね。うーん……そのパーカー、私も欲しいかも」

 クーさんの返事に対し、私がそう呟くように言うと、

「そうだね。学校の制服っぽい感じの服と合わせたら良い感じになるかもね」

 なんて事を、蒼夜の父親が私の方を見て告げてくる。

 

「でも、それだとただの女子高生になってしまうような……」

「まあたしかにそれはあるね」

 蒼夜の母親に続くようにして、蒼夜の父親もそんな風に言ってくる。

 でも――

「私、高校には行っていないので、それはそれで少し興味がありますね」

 と告げる私。

 

 まあ、正確にはABSFの仕事の都合もあって、『1年遅れで高校に入学する予定』だったのだけど、その直前に向こうの世界へ飛ばされてしまって、結局行かないまま……という感じだけど、ね。

明けましておめでとうございます。

今年もよろしくお願いいたします。


……今年最初の話で服装チェンジの話はケリをつけて温泉に移動したかったのですが、さすがにちょっと長くなりすぎるので区切りました……。あと1話ほど続きます……


とまあ、そんなこんなでまた次回!

次の更新は平時通り……だと、2日間が空いてしまうので、1日前倒ししまして……1月9日(木)の想定です!

なお、その次からは平時通りに戻る予定です。

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