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サイキッカーの異世界調査録(サーベイレコード)  作者: TOMA
第2部 黄金守りの不死竜と調査録 第2章 遙かなる古の遺産編
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第177話[裏] 地球・ロゼと珠鈴と竜の御旗

<Side:Souya>

「うん? ミスズはお嬢様?」

 もっともな疑問を抱いたロゼが、首を傾げながら問いかける。

 

「お嬢様……。うーむ……そうと言えばそうな気もするし、違うと言えば違うような気もするし……。まあ、『朔耶の家と同じ』ように、代々続いてきた『名家(めいか)』ではあるが」

 腕を組んで考え込みながらそんな事を言う珠鈴。

 

 『朔耶の家と同じ』という所と『名家』という所を強調して喋っている時点で、昔から『竜の血盟』に対抗してきた一族である事は推測がつく為、

「ん、なるほど……。代々『何かを守ってきた』……。つまり、うん、『戦う貴族』とか『戦う令嬢』みたいなもの、と。うん」

 なんて事を呟くように言うロゼ。

 

 表現はロゼらしいというか……ちょっと分かりづらい気がするが、一応ロゼなりにボカシているのだろう。

 

「まあ……そういう事になるのかな?」

 ロゼに対して頷きつつ、ちょっとだけ首を傾げて答える珠鈴。

 しかしすぐに顎に手を当て、

「……ふむ。だが、正直言ってロゼの方が私よりもお嬢様だと言えるのではないだろうか? あのような大きな屋敷に住んでいる上に、父君はこっ……国の重要な地位に就いているし」

 と、そんな風に言葉を続けた。

 一瞬『国家元首』って言おうとしたな……

 

「うん? ……うーん……? ……そう……かも?」

 ロゼはいまいちピンと来ていないと言わんばかりの表情でそう返すと、そのまま考え込む仕草をしながら、

「でも、うん、私はどちらかというと『影のお嬢様』だと思う。うん。『本当のお嬢様』は、アリーセだし」

 なんていう言葉を続けた。

 

 影のお嬢様ってなんだ……? 『影武者』的な意味合いか?

 

「――なんだ? もしかしてロゼは、いまだに『実の娘ではない』みたいな事を思っているのか? ランゼルトの一件で実の娘じゃなくても娘だと思っている事は理解しただろう? 実際、『連中』にロゼが捕まった時のアルヴィンスさんは、アリーセの時と同じ……いやそれ以上の怒りに満ちて、取り乱していたしな」

 そんな風に俺が言うと、

「ん……。それは分かってる……。うん。お父さんは私を実の娘同然だと思ってる。私もお父さんを実の父親同然だと思ってる。うん、それは間違いない。でも……それは『家の中』だけでいい。『家の外』での私は、影でいい。ううん、影になりたい。並び立ったら駄目。うん」

 などという返事をしてくるロゼ。

 

 ……どういう事だ?

 あくまでもアリーセが一番であり、自分は二番でありたいとかそんな意味か?

 ロゼの事はそれなりに分かっていたつもりだったが、まだまだなようだ。

 

 そんな風に俺が思っていると、

「うーん……。状況はさっぱり分からないけど、ロゼがアリーセって子の事が凄く好きだというのだけは分かったよ」

 と、莉紗。

 更にそれに続くように、俺の父親が、

「そうだね。そんな風に言うという事は、それだけアリーセさんという人の事を優先したいと考えているわけだからね」

 なんて事を言った。

 

 ああ……。そういう事……か。

 

 どうにかロゼの言いたい事が分かってきた俺だったが、そこで、

「でも、なんでだろうね? その根幹にウチの息子が関係していそうに感じるんだよね……」

「あ、それは私も思った。そのアリーセって子も、もしかしてロゼさんと『同じ感情』を抱いていたり……する?」

 などと、俺の父親と莉紗が言った。

 

 ……うん? どういう事だ? 特に莉紗の強調した部分は一体……

 と、そんな風に疑問に思った所で、ロゼが無言で小さく頷く。

 

 あー……うーん……あー……

 

 鈍感気味だと自分でも思っている俺だが、それでもなんとなく『察した』

 だが、そこはまあ……なんというか……反応しづらいな。

 

 ……いずれどうにかしないといけないが、今は鈍感のまますっとぼけておこう……

 

 なんていう逃げ気味の思考を俺がした所で、

「……そ、そう言えば、ロゼが『間違って』捕らえられてしまった時は大変だったよねぇー。あの御仁が『国』の全戦力――いや……『援軍』も含めて投入する勢いだという情報を得て、さすがにそこまでの『大規模な事変』に発展するのはまずいという事で、『こちら』も色々と計画を調整して支援することになったくらいだしさぁー」

 と、唐突に言ってくる珠鈴。

 

 うーむ……? なんというか、妙に捲したてているような感じだし、口調もちょっと――いや、かなりおかしいし、無理矢理にでも話題を変えようとしているようにしか感じないというか、珠鈴らしくないが……どういう事だ?

 理由も意図も良くわからないが、まあ……ここは助け舟だと考えて乗っておくとするか。

 

 というわけで、

「ああそうだな。あれで色々と『大きく動いた』からなぁ……」

 と、そんな風に返す俺。

 

 ……しかし、なるほど。

 珠鈴が所々強調していた所を踏まえて改めて考え直してみると、『竜の御旗』としてもあの一件は、色々とイレギュラーだったようだな。

 そしてその上で、どうにかして大事(おおごと)になる前に事態を収拾しようとしたようだ。

 

 あの手際の良すぎるシズクの助太刀――乱入とも言うが――や、『銀の王(しろがねのおう)』の方から俺たちへ『接触してきた』のは、どうやらその辺りの『事情』が関係していそうだな。

 おそらく『イルシュヴァーン共和国やその他の国の軍勢』が、鬼哭界に乗り込むような事態は回避したかったのだろう。

 

 その情報をどこからどうやって得たのかは良く分からないが、奴らもグラスティア各地に展開しているわけだし、そのくらいは難しい事でもないのだろう。

 

 まあ、あの時は俺たちで落ち着かせたし、普通に考えたらそんな事態にはそうそうならないだろうが、どうやら奴らは俺たち『黄金守りの不死竜』の動き――情報までは掴めなかったようだし、そうなると当然だが、『放っておいても問題ないと断定する事は出来ない』わけで、何らかの『予防策』を打ってくるというのは、至って自然な流れだと言えよう。

 『銀の王(しろがねのおう)』――もっと言うなら『ディアドコス』は、まがりなりにも『鬼哭界の住人』の未来の為に動いているのだから、鬼哭界――あの船で暮らす人々に被害が出るような状況になる事は、是が非でも避けたいはずだからな。

 

 そう……竜の御旗が一枚岩ではない――内部に複数の派閥が存在する――というのは既に判明しているし、『銀の王(しろがねのおう)』の中には『ディアドコス』の支配下から脱しようと考えている者もいるくらいだ。

 であるにも関わらず、あの一件では足並みが揃っていた。

 それは、大軍があの船に足を踏み入れただけで『住人に被害が出る』可能性がある事を全員が『理解していた』からだろう。

 

 ――グラスティアから多くの人間があの船に入り込むという事は、当然ではあるが、相当数の雑菌やウィルスもまた一緒に入り込むという事になる。

 なにしろ、グラスティアはあの船とは違って『そういったもの』も、普通に存在している……というか、『かつて人が住んでいた惑星と同じくなるように調整されたコロニー』だからな。

 

 あの船の現行の滅菌システムでは、それだけの量が一斉に流入すれば、処理が追いつかなくなるのは確実だ。

 そして、無菌室で育ったも同然である……と、そう言っても過言ではない今のあの船の住人にとって、その状況は確実に身体に、健康に、悪影響を及ぼす。

 ……いや、もっと大規模な――パンデミックな事態を引き起こす危険性すら普通にありえる。

 

 だからこそ、それぞれの思惑や計画を曲げてまで大きく動いたわけだ。

 もっとも……珠鈴の言ったように、その影響で、色々な所に『歪み』が生じたようだが。

 珠鈴が『こちら側』に来たのも、珠鈴やシズクの所属していた『派閥』が、色々と『計画を前倒し』しなければならなくなったから……という理由みたいだしな。

 

 結果的に見れば、俺たちにとって有利な状況となったわけだが……その代償を考えると、あまり喜べる事ではないな……

 まあ、『その代償を払った当人』が思ったよりも強くて、今ではまったく気にしていないから、必要以上に悲観的になるものでもないんだけど……な。

思った以上に長くなりました……(前半の会話をもう少し削る事も出来たのですが、削ってしまうと説明だらけになってしまうのでそのままにしました)


とまあ、そんな所でまた次回!

次の更新ですが……色々立て込んでいる関係で、平時よりも2日多く間が空きまして、12月22日(日)を予定しています……

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