第171話[裏] グラスティア一時帰還
<Side:Souya>
俺はディアーナの領域を介してディガルタの遺跡へと移動。
そこで『穴』を維持しているエステルのもとへと向かった。
「えっ? どうしてそっちから現れるんですの?」
エステルの護衛をしているらしいリリアが俺に気づき、そんなもっともな問いの言葉を投げかけてくる。
そしてそれに続いて、
「む? おおっ!? ホントにソウヤではないか。穴を通らずにどうやって戻ってきたんじゃ?」
と、エステルもまた俺に対して問いの言葉を投げかけてきた。
「ユーコは見つかったのー?」
更に近くにいたアメリアも俺に気づき、そう問いかけてくる。
そんな3人に対して俺は肩をすくめてみせながら、
「まあ……とりあえず向こうであった事について最初から話すから、まずは聞いてくれ」
と返し、これまでの事を要約しつつ話し始める。
……
…………
………………
「――とまあ、そういうわけだ」
そう告げて話を締めくくった所で、
「なるほどですわ。『竜の御旗』――正確に言うなら『銀の王』たちは、そっちの世界にも本格的に手を伸ばし始めているんですのね」
と、そんな風に言ってくるリリア。
「で、ユーコは見つけたけど、まだそれへの対処が必要だから、こっちには戻ってきてないってわけだねー」
「ああ。ディアーナの追跡というか逆探知というか……ともかくそれが終わるまでは、俺も含めて向こうにいる感じだ。といっても3日……いや、その後に対策をどうするかとかも話す必要があるからもう少しか? なんにせよ、1週間以内には片付くだろう」
アメリアに対してそう返事をした所で、
「了解じゃ。こちらに残った皆にはそう伝えておくわい。……それにしても、ディアーナ様の領域を介して繋げられるようになるとはのぅ……。そうなると、この穴を開けておく必要はもうなさそうじゃな」
なんて事を、腕を組みながら言ってくるエステル。
「そうだな。閉じて撤収してしまって問題ないぞ」
そんな風に俺が頷きながら言うと、
「まあ……そうだからと言って、もぬけの殻にするというわけにはいかぬし、監視と調査を兼ねた人員をある程度は常駐させておく必要があるじゃろうな。もっと調査を進めれば、あらゆる場所に繋げられるようになるやもしれんしの」
「個人的にはこの遺跡、『それ以外にも』とても興味深いものが多いですし、しばらくはその常駐する人員の中に加わらせて貰いますわ」
と、そうエステルとリリアが返してきた。
「ボクは一度エレンディアに戻るよー。ここの所、ずっと向こう――広捜隊の方を留守にしっぱなしだからねー」
「あー、たしかにそうか。なら広捜隊の面々には、アメリアの方から『ユーコは無事発見出来た』ってのを伝えておいてくれるか?」
「うん、了解ー。あと、ロディとアカリ……それから『銀の王』の動きについても、ちゃんと一緒に伝えておくよー」
「ああ、よろしく頼む」
俺はアメリアに対して首を縦に振りながらそう返すと、
「で、さっきの話でも少しだけ触れた件なんだが――」
と言いながらエステルの方を向き、データカードと大昔の端末について、改めて話をする。
「うむむ……。朔耶もまた、とんでもない事をしておるのぅ……。一体どうやって向こうの世界へそんなものを送ったのやら、じゃわい」
エステルはそんな風に言って、やれやれと首を横に振る。
そしてそのまま顎に手をあて、
「――ともあれ……あの古い端末じゃが、今は大工房の倉庫に保管されておるのじゃ。ゆえに、ディアーナ様にテレポータルで大工房へ送って貰う必要があるのぅ」
と、そう言ってきた。
「なるほどな。それならアメリアをエレンディアに送りつつ、大工房へ行くとするか」
「うむ、そうじゃな。この穴を消して、この遺跡内の他の所にいる者たちに話をしたら、すぐに向かうとしようかの」
俺の発言に対し、エステルはそんな風に答えつつ、装置を操作する。
すると、穴が勢いよく縮んでいき、瞬く間にその姿を消してしまった。
「これでバッチリじゃな。あとはロックして終わりじゃ」
「閉じるのはあっという間だねぇ……。余韻も何もないよ」
「ま、そういうもんじゃわい」
アメリアに対してそう返しながら装置をロックするエステル。
「私はここに残っておきますわね。ここを誰もいない状態にするのは、あまりよろしくないですし」
と言ってきたリリアをその場に残し、俺たちは他の所にいる面々に話をしつつ、オーブが使用可能な場所でディアーナを呼んだ。
そして、そのままアメリアをエレンディアへと送り届けると、大工房へと移動。
どっからどう見ても、かなり昔のPCにしか見えない端末を回収した。
「こやつは専用のエネルギーコンバーターを使って、魔煌波を駆動用のエネルギーに変換してやらぬと動かぬゆえ、研究室にセットするぞい」
と告げてきたエステルに従い、俺は研究室へと端末を運ぶ。
そこであれこれとセットアップも行い、ようやく起動――
真っ黒い画面に、『COMMAND?』と表示され、その下に『>』が追加で表示される。
うーん、久し振りにこの画面を見たな……
「とりあえず問題なく動作しておるようじゃな。ソウヤよ、そのデータカードとやらをそこに挿し込んでみるのじゃ」
エステルが俺の持つデータカードを見ながらソケットに人差し指を向け、そんな風に言ってくる。
「ああ、わかった」
俺は頷きながらそう答えると、ソケットに向かってデータカードを挿し込む。
すると、カチッという音がしてデータカードがしっかりと固定された。
「お、ここで正解だったっぽいな」
俺がそんな風に言った所で、端末……というかソケットのある所――ドライブからカリカリという音がし始め……
『DRIVE:DATA CARD>NOW CHECKING……』
と、そう画面に表示された。
「何かをチェックしておるようじゃな……」
なんて事をエステルが言った所で、
『DRIVE:DATA CARD>NOW READING……』
という表示が直下に追加される。
「読み取り中……という事は、認識したのか」
「そういう事になるのぅ」
俺の呟きに対してそう返してきたエステルとしばし待つ。
……が、5分しても読み取り中のままだった。
「……読み取りに時間かかりすぎじゃないか……?」
「古い端末はこんなもんじゃろう」
「そういうもの……なのか?」
そもそも……これが実際に使われていた『古の時代』に、これは『古い端末』だったのだろうか……?
と、そんな事を思ったが、そこは敢えて口にはしなかった。
そしてさらに待つ事5分――
『DRIVE:DATA CARD>READ COMPLETED』
と、遂に完了を示す文字が表示された。
そしてそれと同時に、『ファイル名』と思しき文字列が、もの凄い勢いで次々に表示され始めた。
「また随分と、膨大なデータが入っておるのぅ……」
と、そんな風に告げてくるエステル。
たしかにこれはあまりにも多すぎて、目当てのものを探すのが大変そうだな……
なんて事を、延々と表示され続ける文字列を見ながら思う俺だった。
真っ黒い画面にアルファベットの文字列という辺りがまさに……(まあ、あくまでも『蒼夜からすると(ディアーナの力で)アルファベットに見える』というだけで、実際の所は、グラスティアの古い時代の言語(要するに古代文字)で表示されていたりするのですが)
とまあ、そんな所でまた次回!
次の更新も予定通りとなります、11月29日(金)の想定です!




