第170話[裏] 地球・記憶媒体と端末
<Side:Souya>
朔耶の手紙はなかなかの長さだったので、途中からは一気に読んでしまい、後から内容を纏める事にした俺たち。
そして、全部読み終えた所で――
「なんとも長い手紙だったわねぇ……。とりあえず要点を纏めていきましょうか」
なんて事を肩をすくめながら言ってくるシャル。
俺はそれに頷いてみせると、
「まず計画の進行に役立つであろう情報が、このデータカードに入っている……と」
と告げながら、8インチのフロッピーディスクに似ているらしい代物――データカードを手に取った。
するとそこでシャルが、
「これって、どういう風に中に入っている情報を引き出すのかしら?」
という、もっともな疑問を口にする。
「……正直わからん。こんな記憶媒体、地球にもグラスティアにも存在していないからな。似た物はあっても、そのままというわけではないし」
「んん? だとしたら、うん、朔耶はこれをどうやって……?」
俺の返答に対し、こんどはロゼがそんな風に言ってくる。
「それもわからんな……。だが、もしかしたら『今のグラスティア』に存在しないだけなのかもしれん」
「うん? 今の?」
「大昔――古代アウリア文明や、あるいはそれよりも遥か昔にあったであろう、あのコロニーを建造した文明……。そういった時代に使われていた代物なのかもしれないって事だ」
「ん、なるほど……。たしかにそれはあり得る話かもしれない。うん」
俺の説明にロゼが納得の表情でそんな風に言うと、それに続いて、
「それで言うと、今では冥界や混沌界などと呼ばれるようになってしまった、別のコロニーの滅びた文明のものである可能性も考えられるね」
という推測を口にしてくる珠鈴。
「そうだな。なんにせよ、こいつの中身を見る事の出来る端末を見つけなければ駄目というわけだ」
そう俺が言うと、シャルが顎に手を当てながら、
「そうなるわね……。でも、朔耶はどうしてわざわざそんなものにデータを残したのかしら?」
と、ある意味もっともな疑問を呟く。
「これの中を見る事が出来る端末を手に入れる、あるいは、その端末がある場所へ行く事も重要である……という事なのかもしれないね」
「あー、なるほどね。たしかにそれは十分に考えられる話だわ」
シャルは珠鈴の推測に対し、得心がいったらしくそんな風に返す。
そして一呼吸置いてから、
「だとすると、これについて調べる必要があるわね。ディアーナ様やエステルたちに調べて貰うのが良いと思うけど……。というか、ディアーナ様なら案外何か知っているかもしれないわね」
と言ってきた。
「ああ、たしかにそうだな。とりあえず話をしてみるか」
俺はそう頷きながら答えると、おばさんの方へと顔を向け、
「話が前後してしまったのですが――」
と告げて、ディアーナやオーブについて話し始める。
……
…………
………………
「なるほどね。そのオーブは、異世界の女神様のいる場所と繋ぐ事が出来るけど、霊的な力に満ちている場所じゃないと使えない……と、そういうわけなのね」
「はい。なので、神社の境内――可能ならば、参拝客が入ってこないような場所を借りたい感じです」
おばさんに対して頷きながら、そう告げる俺。
するとおばさんは、「うーん、そうねぇ……」と言いながらしばし考え込み、
「――社務所の関係者用の休憩室とかを使ったらいいんじゃないかしら? あそこなら境内にある上に、各種行事で使うものを保管している場所とかもあるから、霊的な力も十分あると思うわ」
と、そんな風に言ってきた。
「あ、なるほど。たしかにあそこはちょうど良さそうな気もしますね。……でも、おじさんに話をしなくても良いのですか? というか……今更なんですが、おじさんはどこかに出かけているんですか? 姿が見えませんが……」
「ええ。ちょうど『会合』に行っててね。1週間は戻って来ないわ。まあ、あの人には、私の方から夜にでも連絡しておくから大丈夫よ」
「あー、そういう事ですか。それでしたら、ありがたくあの場所をお借りします」
おばさんの言葉に納得してそう返事をすると、おばさんは、
「ええ。貸す代わりに……といったらあれだけど、朔耶が何をしようとしているのか調べて、その尻尾を掴んで、ついでに『首根っこを押さえて連れてきてくれると』助かるわ」
なんて事を言ってきた。
しかも、『首根っこを押さえて連れてきてくれると』の所を強調しながら。
俺はそれに対して、
「そ、そうですね」
と返しつつ思う。
……次に地球へ来る時は、朔耶を連れてきたい所だ。
本来の姿でな……と。
◆
「――よし、バッチリ使えそうだ」
社務所の休憩室へとやって来た俺は、オーブを確認しつつそんな風に皆に告げる。
「休憩室だけあって、座って話が出来るのがいいわね」
「うん、たしかに」
などと座布団の上に座りながら言ってくるシャルとロゼ。
「早速呼んでみたらどうだい?」
と言ってきた珠鈴に対して俺は頷いてみせると、早速ディアーナの事を呼んでみる。
すると、
「なんというかー、もの凄く神秘的な力を感じる場所ですねー」
という声と共に、テレポータルが開かれた。
まあそうだろうなぁ……と思いつつ、俺はディアーナにこの場所について説明し、さらにデータカードについても話す。
すると、
「なるほどー。そういう場所なのですねー、納得ですー。それにしてもデータカードですかー。随分と懐かしいものが出てきましたねー。それは遥か昔ー、ここ……このグラスティアが『造られた』頃に使われていたものですしー」
なんて事をさらっと言ってきた。
「ん、ソウヤの言ってた通りだった。うん」
そうロゼが呟くと、シャルが「そうね」と同意。
そのままディアーナの方へと顔を向け、
「だとしたら、これの中を見る事が出来る端末についても何か知っている感じですか?」
と、問いかける。
「そうですねー。データカード自体はー、当時の端末ならばー、大体どれでも読み取る事が出来ると思いますー。ただー、まだまともに動くものがあるかというとー、ほとんどないような気がしますー」
「まあそうだよなぁ……」
ディアーナの返答に対して、俺がそう口にした所で、
「当時の端末……? そう言えば以前、大昔の『端末』が大量に残されていた場所があったわよね?」
なんて事を言ってくるシャル。
「大昔の端末というと……あのかなり昔のPCに似ていた奴か。たしかにあれならいくつか回収して調べもしたな。残念ながら、どの端末にもデータは一切残っていなかったんだけど」
「その端末で、これを読み込めたりはしないのかしら?」
「あー……言われてみると、たしかにあれには何かを……いや、『何か』じゃないな。『このデータカード』を挿し込むのにちょうど良さそうな大きさのソケットがあったな」
シャルの言葉に、俺はそんな風に答えるとデータカードへと視線を向けた。
そして、それを見ながら思考を巡らす。
……あの端末は、たしかにグラスティアでも相当昔のもののようだった。
とはいえ、シャルの刀や例のプラネタリウム装置ほど昔というわけでもない。
まあ……ものは試しというしな。
エステルにあれを引っ張り出してきてもらって、こいつを挿し込めるかどうか試してみるか。
と。
思ったよりも会話が長くなったので、一旦ここで区切りました……
とまあ、そんなこんなでまた次回!
次の更新も予定通りとなります、11月25日(月)の想定です!
※追記
誤字と言い回しのおかしな部分があった為、修正しました。
それに伴い、会話の一部で前後の繋がりがおかしくなった為、調整しました。




