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サイキッカーの異世界調査録(サーベイレコード)  作者: TOMA
第2部 黄金守りの不死竜と調査録 第2章 遙かなる古の遺産編
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第168話[裏] 地球・朔耶の計画

<Side:Souya>

 玄関で話をするのもどうかという事で、応接間としても使われている茶の間へとやってきた俺たち。

 

「――というわけで、改めてになるけれど……私が朔耶の母の美耶香よ」

 そう自己紹介をしたおばさんに続き、シャルとロゼが自己紹介をする。

 

 珠鈴は前に一度来ていたので、「お久しぶりです」とだけ告げた。

 

 そして俺は、

「それで、本題なんですけど……」

 と言って出てきたお茶を一口飲む。

 そして、どう話すかをある程度頭の中で纏めると、

「どこから話すべきなのか迷うんですが――」

 と前置きしつつ、あれこれ説明を始めた。

 

 と言っても、そのまま話すわけにはいかない部分もあるので、基本的には『異世界で朔耶が良くわからない事をしている』という事にしたが。

 

 その上で、もしかしたら……と思い、

「朔耶の残していった記録によると、コロニー群が今存在している空間が、『時空の停滞状態』になっているのを利用して、地球とかの『他の世界』との繋がり……もっと言うと、人為的に時間的な繋がりを自在化する事で、一時的に外へと魂を流して戻すという事を可能とし、魂の流転と復元をも自在化する……という事をしようと考えていたようです」

 とか、

「簡単に言うと、特定の条件を付けて自由に行える転生法、および一種の時間操作法の確立……とでも言えばいいのでしょうか? ともかく、そんな感じの一見するとトンデモすぎる計画――『リベルム・リーンカルナシオン計画』なんて御大層な名前が付けられていたもの――を、長期間に渡って進めて来ていまして、それを今は自分が引き継いで進行させています。ちなみに、その計画の第5段階まで進んでいる状態ですね。まあ、朔耶の理論は不可能そうなのもあるので、現在は可能な範囲で近しい仕組みを生み出す……という方向性ですが」

 なんていう事まで話してみたが、やはりというべきか、『全て』ノイズになってしまい、伝わらなかった。

 

 当然ながら、シャルたちにもこの発言は伝わっていない。

 

 いやまあ、『ノイズにはなるが言葉に出来た』というのは大きいのだが。

 ふと『朔耶の家』は、朔耶の領域の中であり、そこに住まう者――家族は、俺と同じように『計画が伝わる相手』だと判断されるのではないかと考えたのだが、その考えは半分程度正解だったようだ。

 まあ、残念ながら家族でも『計画が伝わる相手』としては認識されないようだが。

 ……それとも、まだ何か『認識』される為の条件が足りていないだけで、それが満たされればいける……のか?

 

 あれこれ気にはなるが、ここでそれを考え込んでも仕方がないな……

 

 俺はそう結論付けると、

「――色々と話をしましたが、今の状況はそんな感じです。唐突に異世界だのなんだの言って、信じて貰えるかはあれですが……」

 と告げて、説明を終えた。

 

 するとそれに続くようにして、

「とりあえず、この幻影を解除すれば私たちが『何者なのか』が分かりやすいわよね?」

 なんて事を俺に対して言いながら、耳の幻影を解除するシャル。

 

「ん、たしかに。……あ、でも、うん。私の場合、角が折れてる。だから、うん、あまり変わらないかも。うん」

 そう口にしつつ、ロゼも幻影を解除。

 更に珠鈴も、

「――私も以前伺った時は今見えている姿でしたが、今はその『異世界』で色々ありまして、別の姿になっています」

 と、そんな風におばさんの方を見て告げてから、幻影を解除した。

 

「……なるほど。不思議な雰囲気がしたのは『幻』だったわけね」

「ん? 思ったよりもあっさり信じられた?」

 おばさんの反応に、ロゼが首を傾げながらそう口にする。

 ここまで簡単に信じて貰えるとは思っていなかったのだろう。

 

「話している言葉が『ノイズ化される』なんていう時点で、既に『普通ではない』事は分かるというものよ。そしてその姿や幻影――それもまた『普通ではない』わよね? そもそも、幻術や人とは少し異なった姿形をもつ存在……というのは、この世界にも『まったく存在しないわけじゃない』から、異世界の人間である……と断定する事までは出来ないけれど、それでも、そういった存在自体が『幽世』だの『魔界』だのと呼ばれる領域に属している事を考えたら……ねぇ」

 などと言ってくるおばさん。

 

「ふむ……。言われてみるとこの家は、代々悪鬼妖魔を調伏する生業も担っていたな……。今思うと、『竜の血盟』の連中は、遥か大昔に地球へと渡ってきている。おそらく、奴らが生み出したキメラ、あるいは何らかの召喚術式などで喚び出した魔物が、そういった悪鬼妖魔の類だとされたのだろう」

「幻術の方も、奴らの使う『すり抜ける壁』のようなホログラムや、何らかの機器を通さずとも『肉眼で視る事が出来る』高度なAR技術だと考えられるしな。あと、擬似的あるいは召喚を介した限定的な手段によって魔煌波を生み出す事で、本当に『一部の魔法』を使えるようにもしていた……というのが、奴らの残していった記録にあったし」

「なるほどねぇ……。それって要するに――」

 珠鈴と俺の説明を聞いたシャルが納得顔でそう口にすると、おばさんの方へと顔を向け、

「昔から小規模ではあるけれど、キメラや魔物と交戦したり、魔法の類が実際に使われた記録が残っているから、私たちの話も別に荒唐無稽だとは思わない……という事ですか?」

 なんていう問いの言葉を投げかけた。

 

「ええ、そうね。簡単に言えばそういう事になるわ。この家……というか、この『生業』には、そういう記録が数多く存在していて、私も実際に見た事があるし」

 おばさんは頷きながらそう返事をすると、そのまま、

「それにしても……あの子は、一体何を考えて何をしようとしているのかしらね?」

 という、ある意味もっともな疑問の言葉を紡いだ。

 

「ん。それに関しては、本当にさっぱり分からない。うん」

「そうねぇ……。必要な情報を得ようにも『ノイズ化』という現象に阻まれてしまうし……」

 シャルとロゼはそんな事を口にすると、揃って何か言いたげな表情で俺の方を見てきた。

 

 まあ……さっきの俺の発言は、シャルたちも『初めて聞いた』わけだし、そういう反応になるだろうなぁ……

 と思っていると、シャルがおばさんの方へと顔を向け直し、

「もしかしたら、こっちに何かヒントがあったりするのかもしれませんね」

 という言葉を続けた。

 そしてそれに頷いて見せるロゼ。

「ん。たしかになにかありそう」

 

 いやぁ……さすがに何もないんじゃなかろうか……と思っていると、

「……そう言われてみると、前に朔耶の部屋を掃除していたら、見た事もない箱があったわね。いつの間にこんなものを? と思ったのだけれど、もしかしたら……」

 なんて事を口にするおばさん。

 

 ……待て。まさか本当に『何か』がこの家にあるのか?

 というか……もしそれが、朔耶が向こうから地球へ送ったものだとしたら、どうやってそんな事を……?

しれっと『計画』の大雑把な内容の初登場となりました。

まあ、今回は本当にざっくりとした全体像の触りの部分を、軽く話した程度ですが……

とはいえ、これで『少しずつ詳細を語っていくフェーズ』にようやく入れた感じです。


とまあ、そんなところでまた次回!

次の更新も予定通りとなります、11月18日(月)の想定です!

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