第164話[表] 地球・消え去るもの、通じるもの
<Side:Akari>
甲虫巨人を消し飛ばした私は、再度復活してきたりしないか念の為に警戒しつつ、周囲を見回す。
あ、蒼夜と蓮司が倒し終わって、クーさんの所にいるわね。
なら、私たちもあそこに――
と思った直後、半分トカゲ半分ワニといった感じのキメラが消し飛んだ。
――って、倒したわね。
となると、残りは……
「シャルとロゼに相手を任せたあいつだけになったわね」
シャルとロゼのいる方へと向き直りながらそう告げた私に、
「ああ。早速向かうとしよう」
「はい。行きましょう」
と、そんな風に返してくるロディとユーコ。
そして、悪魔の如き見た目のキメラへ向かって駆け出した所で、
「それにしても、シャルロッテさんとロゼさんが相手をしても倒せないというのは、なかなか厄介な相手ですね……」
なんて事をユーコが言ってきた。
「そうね。強さはそこそこだけど、単純に固いというかタフというか……HPと防御力が両方とも高すぎるって感じなのよね」
「あいつがいわゆる攻撃役ではなく支援役――要するにバッファーの類であると考えれば、ある意味正しいのかも知れないけどな。味方の強化支援を担っている奴が真っ先に倒されるようじゃ、なんの意味もないし」
私の返答に続くようにして、ロディがそう口にする。
「たしかにそうですね。攻撃を捨てて防御に徹しても、自身が強化している周りの仲間がその分攻撃するのであれば、それで十分ですからね」
「逆を言えば単体になってしまえば、一気に脅威度が下がるとも言えるわね」
ユーコと私がそんな風に言った所で、
「固くてタフなだけなら、大量の攻撃をぶつければいいだけだからな」
「ああ。この人数で攻撃すれば、さすがに倒せるだろう」
「フルボッコなのです!」
「その言葉をクーから聞くとは思わなかったね」
なんて事を蓮司、蒼夜、クーさん、珠鈴が口にしながら私たちに合流してきた。
「というわけで、早速一斉にこうげ……って、なんだ?」
蒼夜は一斉に攻撃と言おうとしたのだろうけど、その瞬間に悪魔の如きキメラに変化が生じた。
「奴とその周囲が……歪んでいる……?」
ロディがそう呟くように言った通り、唐突に悪魔の如きキメラとその周囲がグニャグニャっとうねり始めた。
「良くわからないですが、一気に攻撃した方が良さそうなのです」
「たしかにそうだな。よし、改めて一斉に攻撃するぞ!」
クーさんに対して頷きながら、そう告げる蒼夜。
直後、私たちはその時点で実行可能な攻撃を一斉に放った。
私はチャージショットを放ち、ロディは剣を纏めて飛ばし、ユーコは魔法弾を連射し、蒼夜は融合魔法を放ち、蓮司は火炎を放射し、クーさんは回転しながらハンマーを放り投げ、珠鈴はテレポートした。
更にそこに、ロゼが円月輪を投げつけ、シャルも霊力の刃による衝撃波を放った。
並の敵なら確実に仕留められるどころか、オーバーキル確定な程の途轍もない火力が――飽和攻撃が、悪魔の如きキメラへと殺到。
しかし、攻撃が命中した……と思ったその瞬間、フッとその姿がかき消えてしまった。
「消えた!?」
あまりに唐突すぎて、驚きの声を発する私。
そんな私に続くようにして、
「逃げた……のか?」
そう呟きながら、周囲を警戒する蒼夜。
「……この廃墟のどこからも反応がないね」
「そうね。隠れている感じもしないわ」
珠鈴とシャルが蒼夜と同じく周囲を警戒しつつ呟くように言う。
と、そこで私がその悪魔の如きキメラの後方にあったはずの『歪み』が消えている事に気づき、その事を告げる。
「というか、そこにあった『歪み』自体がなくなっていない?」
「……たしかに消えているのです」
「つー事は……『転移元』に引き戻されたっつー感じか?」
クーさんに続くようにしてそんな推測を口にする蓮司。
「そういう事になるな……。『転移元』から、こちらの状況が見えているのか、それとも単純にタイムオーバー的なものなのかは分からないが」
「ん、でも、外へ逃げた可能性もゼロではない。うん」
蒼夜とロゼがそう言ってきたので、
「一応、周囲の捜索もしておいた方が良いのかしらね?」
と、そんな風に言う私。
それに対してユーコが、
「そちらは専門の部署の方々に任せましょう。私たちだけではさすがに捜索しきれませんし」
と返してきながら、スマホを操作し始めた。
言われてみると、たしかにこの辺りは山……しかも、谷があったり崖があったりと入り組んでいるような、そんな場所だから、私たちだけで捜索するのはちょっと……いえ、かなり厳しいわね。
「転移の追跡……は、無理か」
「ディアーナ様の力なら、なんとか出来そうな気もするけど、さすがにここじゃオーブは使えないわよね……」
蒼夜に対してシャルがそう口にした所で、蒼夜が「一応見てみるか」と言いながら、次元鞄からオーブを取り出す。
すると――
「……凄く、使えそうな感じがするのです」
なんてクーさんが言った通り、オーブは『使用可能な状態』を示していた。
「そ、そうだな。まあ……地球にもこのオーブに適した霊的な力の強い場所のひとつやふたつ、あってもおかしくはない……か」
と、少し困惑気味に言ってから、オーブに向かって呼びかける蒼夜。
するとあっさりと、
「地球からの呼びかけられるとは思いませんでしたー。少し驚きですー」
なんていう女神様の声が、オーブから聞こえてきた。
「思いっきり普通に繋がりましたね……」
「うん、驚き……」
ユーコの呟きに対し、ロゼが頷きながらそう返す。
ロゼの表情からはそうは見えないけれど、驚いているらしい。
それにしても、ついに空間どころか次元まで無視してきたわね……
あ、でも、蒼夜をグラスティアへ引っ張ったくらいだから、こうしてオーブを使って、現在地情報を送れば、接続するのは難しい事でもなかったりする……のかしらね?
と、そんな事を思いながら、オーブを眺める私だった。
なんというか……妙なサブタイトルになってしまいました……(他に思いつかなかったもので……)
ま、まあ、そんなこんなでまた次回!
次の更新も予定通りとなります、11月4日(月)の想定です!




