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サイキッカーの異世界調査録(サーベイレコード)  作者: TOMA
第2部 黄金守りの不死竜と調査録 第2章 遙かなる古の遺産編
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第163話[表] 地球・ユーコと甲虫巨人

<Side:Akari>

「グラップルドラゴンは片付いたけど、次は――」

 私はそう口にしつつ、周囲を見回す。

 

 うーん……シャルとロゼは割と余裕そうね。

 倒しきれそうな感じはしないけど、あそこに私とロディが加わってもあまり戦況は変わらないどころか、攻撃がまったく効かない私たちだと、下手したら足を引っ張りかねないのよね……

 あそこに加勢するのは最後にした方が良さそうだわ。

 

 となると……

 蒼夜と蓮司……も、余裕そうね。

 まあ、ふたりがかりだからというのもあると思うけど、何気に少しずつダメージが蓄積していっている感じだし、このままあのふたりだけで倒せそうだわ。

 

 珠鈴は……あ、倒したわ。

 一度瞬殺した相手だってのもあるのかもしれないけど、どうやら、攻撃を無効化されたりするような『強化』ではなかったみたいね。

 で、クーさんの方へ援護に向かっている感じだから――

「――ここは、ユーコの援護に行くのが良さそうね」

 と告げる私。

 

「そうだな。よし、行くぞ」

 ロディのその言葉に頷きつつ、ユーコの方へと走る。

 

 すると、ユーコが敵を翻弄するように動きながら攻撃を叩き込んでいく姿が視界に入った。

 うーん……。きっちり攻撃は入ってるみたいだけど……

 打撃は無効。

 斬撃や刺突はダメージこそ入っているものの、物凄い速度で再生されている。

 ……という感じかしらね。

 

「ユーコ! 援護に来たわよ!」

「あ、ありがとうございます……! このオーラのせいなのか、攻撃が全然効かなくて困っていました……」

 私の声に対し、そんな風に返してくるユーコ。

 

「物理的な衝撃はあの固い殻を突破出来ず、アストラルの刃は突破はするものの、再生速度が尋常ではない……って感じだな」

 私が感じたのと同じ事を口にするロディ。

 そしてそこに私が続く。

「ユーコの手数で攻めるスタイルとは相性が悪そうよねぇ……。1発の威力が高くないと駄目そうだし」

 

「そうですね……。打撃ではどれだけ叩き込んでも効果がなく、連続で斬っても、斬ったそばから再生されてしまっています……。魔弾の連射もさっき試したのですが、やはり再生速度に負けてしまいました」

 攻撃を回避しながらそんな風に言ってくるユーコ。

 そのユーコに対してロディは、

「更に手数を増やすか高火力の一撃を叩き込むか、って所だな。……いや、その両方で仕掛けるのがいいか」

 と言いながら、私とユーコを交互に見た。

 

「そうね。私はチャージショットを叩き込むわ」

 そう返しつつ、私は即座に魔煌弓のチャージに入る。

 

「じゃ、こっちは数を増やすか」

 なんて言うやいなや、全ての剣を浮かせて甲虫巨人へ向かって放つロディ。

 

「ギィッ!? ギギィッ! ギギィィィィィッッ!?!?」

 凄まじい数の剣が次々に甲虫巨人へと突き刺さっていき、叫び声を発する甲虫巨人。

 さすがは霊幻鋼の剣だけはあるというべきか、ユーコの打撃を通さない頑丈な殻をいとも簡単に貫いた。

 

 まあ、これが普通よねぇ……

 あの悪魔みたいなキメラが異常すぎる硬さなのよ。

 

 なんて事を思っている間にも、今度はユーコが素早い連撃で斬り刻む。

「グゲァァァッ!」

 即座に再生する事を認識している、甲虫巨人はダメージに構わず反撃を仕掛ける。

 しかし、その程度の攻撃に当たるユーコではないわけで……その反撃はことごとく回避され、更にユーコからのカウンターを喰らう。

 それでも凄まじい再生速度によって致命打とはならない。

 

 ……それにしても、さっきから気になっていたのだけれど、こいつ……出血もしなければ、靄の放出みたいなのもないわね……

 って、そう言えばあの連絡通路の所で、珠鈴が槍を突き刺した時もそうだったわね……

 出血しないというか、そもそも血が通っていないのは魔獣の類なら全般的にそうだから、こいつも魔獣の類だと考えれば、一応おかしくはない話だけど……

 それならそれで、血の代わりに靄のようなものを噴き出すのよね……

 それすらないってどういう事なのかしら……。中身が機械ってわけでもなさそうだし……

 

 そんな事を考えていると、チャージが完了した。

 

 ……ま、ここで考えてもしょうがないわね。

 さっさと倒してしまう方が良いというものだわ。

 というわけで――

「撃つわよ!」

 と言い放つと同時に、チャージショットを発射する私。

 ユーコが一気に距離を取り、ロディの剣もその場から離れた。

 

 甲虫巨人はユーコを追おうとするが、チャージショットの『吸引』によって阻まれ、防御態勢すら取る事が出来ないまま、まともにチャージショットを喰らう。

 

「ゲギャァアァァァアアァァアァアァァアッッ!!」

 という叫び声が響き渡り、甲虫巨人はその半身を消失させた。

 

「ううーん……。さすがに一撃とはいかなかったわね……」

「それでも、超特大のダメージにはなっています。やはりこの威力であれば再生も追いつかな――」

 私の言葉に続くようにしてそう口にして、そして驚きの表情で固まるユーコ。

 

「おいおい、マジかよ……。この状態から再生するのかよ……っ!?」

 そんな風にロディが言う通り、失われた半身は既に再生を始めていた。

 甲虫巨人の方も半身を失ったまま動いている。私の方へ向かって。

 どうやら、私が一番危険だと判断したようね……っ!

 

「もう一発『もっと強いのをギリギリで撃つ』から、なんとか止めてっ!」

 私のその言葉に、固まっていたユーコが「はい!」と答えながら動き出す。

 

「動きは鈍っている。これならどうにか……!」

 ロディもそう言いつつ、浮かせた剣を一斉に甲虫巨人へと飛ばす。

 

 ――再生しかけている半身への集中攻撃によって、再生を遅延させつつ、私への接近も遅延させるロディとユーコ。

 ロディとユーコの猛攻を受けつつもなお、ダメージを無視して私の方へと徐々に迫る甲虫巨人。

 

「ガアァッ!」

 甲虫巨人が、遂にロディとユーコの攻撃と妨害を振り切り、私へと肉薄する。

 でも――

「残念、ちょっと遅かったわね。狙い通りなのよっ!」

 そう言い放ち、チャージした『スプレッドショット』を放つ。

 それも『発射と同時に拡散する』という形で。

 

 要するに……敵に対して近距離――ゼロ距離とかではない――でショットガンを放つようなもの……かしらね?

 この距離であれば、発射時に大きく広がる『チャージしたスプレッドショット』ならば、完全に再生しつつあるその肉体全てを飲み込めるというもの。

 

 その為に、わざとこの距離までひきつけたわけだし。

 私がユーコとロディに対して言った『ギリギリで撃つ』というのは、『距離』の事であり、ふたりともそれを理解して動いてくれたって感じね。

 

 なんて事を考えていると、目の前に広がる『眩い光』が消え、

「断末魔すらなく消し飛びましたね」

 というユーコの声が聞こえてくる。

 

 そう……放射状に広がった『スプレッドショットの光』は、甲虫巨人を今度こそ消し飛ばしたのだった。

今回は1話でどうにか収まりました……


とまあそんな所でまた次回!

次の更新も予定通りとなります、11月1日(金)の想定です!


※追記

不要な句読点が入ってしまっていた箇所を修正しました。

また、脱字も修正しました。

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