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サイキッカーの異世界調査録(サーベイレコード)  作者: TOMA
第2部 黄金守りの不死竜と調査録 第2章 遙かなる古の遺産編
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第161話[表] 地球・強化グラップルドラゴン

<Side:Akari>

「こっちは攻撃がちゃんと通るみたいね。……かすり傷程度だけど」

 シャルがそんな風に言いつつも、やれやれと言わんばかりの表情でため息をついた。

 

「こっちもちゃんとダメージが入ってるな」

「そうね。シャルと同じくかすり傷程度だけど、チャージショットならもう少しいけるかもしれないわね」

 ロディに対してそう返しつつ、魔煌弓を構え直す私。

 その直後、

「ん、仕掛ける」

「なら、チャージの時間を稼ぐとするか」

 ロゼとロディが同時にそんな風に言って動き出した。

 

 ロゼは飛来する鎖を回避しつつ巨大化させた円月輪で『直接』斬りかかり、ロディは飛翔させた剣でグラップルドラゴンの動きを阻害する。

 

「うん、効いてる手応えはある。でも、うん、深くまで入らない」

「純粋に固いわねぇ……こいつ」

 なんて事を言いながら、私がちょっと対処に苦労した鎖を、あっさりと回避しつつ斬りかかっていくロゼとシャル。

 

 シャルは最小限の動きで回避しながらの反撃、ロゼは意味不明な速度で常に場所を変えながら鎖を完全に置き去りにしての猛攻……と、それぞれ違うものの、どちらも身体能力が凄まじいのは間違いない。

 まあ、シャルはどっちかというと動体視力だけど。

 

 そして、グラップルドラゴンの方はというと、ロディの剣が周囲を舞いながら、私の方へと接近するのを完全に防いでいた。

 今もグラップルドラゴンがこちらへ向かってブレスを吐こうとしてきたが、分離状態の剣18本がその口と顔を狙ってに飛来し、その動作を阻止された。

 

 更にそこへ右横と後ろからも分離状態の剣が6本ずつ飛来。

 前後、そして右……。15本――分離状態で30本――という大量の剣による弾幕。

 それに対してグラップルドラゴンは斜め後ろへの回避を余儀なくされる。

 

 結果、私へ再度ブレスを吐こうにも届くような位置ではなくなった。

 しかも、そこから突進するというのも、階段にぶつかってしまうので難しい。

 

 まあ、こっちも射線から少し外れてしまっているのだけれど、そこは問題ない。

 なぜなら、『引き寄せ』られる範囲だから。

 

 うーん……。回避させる先、そして引き寄せの範囲まで、完全に計算されているわねぇ……これは。

 普段の戦闘では私を含めた周囲のメンツが大雑把に攻撃してしまうのであまり目立たないけど、こうしてふたりで相手をする状況だと実に分かりやすい。

「さすがは、無駄とも思えるくらい細かい所まで調べ上げるロディならではって感じだわ」

 ……まあ、いつもはもっと細かい所まで調べ上げるジャンさんがいるから、やっぱりあまり目立たないけど……

 

 ロディって何気に縁の下の力持ち――いえ、縁の下の器用貧乏よね。

 なんて事を思った所で、

「……なんか今、凄い失礼な事を考えなかったか?」

 と、ロディが私の方を見て言ってくる。

 

 ちょっ!? そ、そんな事ないわよ?

「なんでわかるのよっ!」

 

「……思っている事と口にしている言葉が違ってないか? 『その前も』だけどよ」

「はっ! う、うっかり……っ!?」

「ま、たしかに無駄とも思えるくらい細かい所まで調べるタチなのは否定しようもないけどな。灯が良く行くスイーツショップとかな」

「ちょっと!? 何を調べてるのよ! 何を!」

 肩をすくめながら言ってくるロディに対し、そんな突っ込みを、驚き半分焦り半分で入れる私。

 

 そして、そのせいで同時にチャージショットを放ってしまった。

 それも『少し斜め上』に。

 

 あっ! この軌道だと、いくら『吸引』があっても外れる……っ!

 

 と、思ったものの――

「グガアァァアァァアァァッ!?」

 という苦悶の悲鳴が響く。

 

 えっ? と思いながら顔をそちらに向けると、『いつの間にか跳躍して襲ってきていたグラップルドラゴン』に、チャージショットが直撃していた。それはもう、吸引の必要がないくらいのクリーンヒット。

 

 もっとも……そんな見事なまでのクリーンヒットであっても、クリティカルヒットとまではいかず、吹き飛ばして天井に激突させた程度だったりするのだけれど……

 

「……ロディ、これ狙った?」

「いや、さすがにそれは無理というものだ。偶然だ、偶然」

 私の問いかけにそう返してくるロディ。

 ……本当かしらねぇ。ロディなら狙っていそうな気もしなくはないけど。

 

「それより、あのチャージショットの直撃を食らっても吹っ飛んで天井に激突するだけとはな。ダメージは十分与えられているが、一撃必殺とはいかなかったか」

「……たしかにね。でも、あの感じなら攻撃を続けていけば、普通に倒せそうな気がするわ」

 天井から落下してくるグラップルドラゴンを視界に捉えながら、そんな風にロディに対して返事をする私。

 

「そうだな。いくらシャルとロゼが圧倒しているとはいえ、あの悪魔のような奴は倒すのが大変そうだ。予定通り、さっさと数を減らしてしまわないとな」

「ええ。そうじゃないと交代した意味がないというものだし、ね」

「というわけで、《翠天の風靴》! 《朱焔の剛刃》!」

 ロディが唐突にバフ……じゃなくて、強化魔法を発動させる。

 

「そう言えば、薄いとはいえ魔煌波がある状態だから、普通の魔法も使えるんだったわね……」

「皆、あまりにも強すぎて、魔法とかまったく使っていないが、本来の力が十全に発揮出来ない今の状況ならこういう『底上げ』は有効だろ?」

 そんな事を言ってくるロディに対して私は、

「まったくもってその通りね」

 などと肩をすくめながら答えると、

「それじゃ、このまま一気に押し切ってしまうわよっ!」

 と、そんな風に言葉を続け、魔煌弓を再びチャージし始めた――

今回は概ね本来想定している長さなのですが、普段超過しすぎるせいで短く感じますね……


とまあ、そんなところでまた次回!

次の更新も予定通りとなります、10月25日(金)の想定です!

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