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サイキッカーの異世界調査録(サーベイレコード)  作者: TOMA
第1部 異世界グラスティアの異変 第2章 ルクストリア編
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第11話異伝1 珠鈴とオートマトン <前編>

今回と次回は異伝(過去の話)になります。

時系列的に言うと、1つ前の異伝(第1章第32話異伝)よりも前の話になります。

「むむう……。さすがに食い止めるのも厳しくなってきたな……。というか、そもそも私は銃器の扱いは苦手なんだが……」

 珠鈴が部屋の入口の脇に隠れつつ、通路へ向けてアサルトライフルを撃ちながら、そんな事を言ってくる。


 俺たちは今、『竜の血盟』の息がかかった工業施設の奥で、奴らが生み出したオートマトンと呼ばれる、俺の身長の半分程度しかない小型自律機動人形兵器――要するにロボットアニメに出てきそうなロボットの小さい奴――の群れに、追い詰められていた。


「発射された弾丸は、俺がサイコキネシスで微調整してるから大丈夫だ。それなりに命中してるだろ?」

 と、そう告げる俺。

 

 敵は通路上を進んでくるだけなので、アサルトライフルの連射力なら当たりはするのだが、装甲の厚い所に当たっても意味がないからな。

 サイコキネシスで軌道に干渉――要するに弾丸をカーブさせる事で、関節部や武器といった破損させやすい場所に着弾を集中させ、少ない弾丸で撃破していけるようにしていた。……弾丸も無限じゃないし。

 

 まあ、アサルトライフルの弾丸は重量が大した事ないから出来る芸当とも言える。

 とはいえ……発射された弾丸全ての軌道を変えるのは、ちょっとばかし消耗が激しいので、操作するのはある程度の数に留めてはいるが。


「そんな事していたのか……。なるほど、道理でいつもよりも良く命中するはずだ。――それにしても、なんとも器用なサイキックの使い方をするな、蒼夜は」

 顔をこちらに向け、感心の表情を見せてくる珠鈴。

 まあ、性能の低さを補うための方法なのだが、そこは敢えて言うまい。

 

「さすがは蒼夜君ですね。出来れば、その器用さでこの状況をなんとかする手立ても考えて貰えると凄く助かるのですが……」

 アサルトライフルを背負った室長が、そう言いながらこちらに近づいてくる。

 

「む……調べ終わったのか?」

 珠鈴が室長に問いかけると、

「ええ。今、終わりましたよ。あとは脱出するだけ……なのですが」

 そう歯切れ悪く言葉を返す室長。

 

「……すまん。私がミスしたばっかりに……」

「いえ、珠鈴君のせいではありません。――私の調査不足でした」

「だが――」

「――ここで、責任がどうこう言っていても状況は解決しません。なんとかする事を考えましょう」

 珠鈴の言葉を遮りそう返す室長。

 

「まあ、こうなったら撃破しながら突破するしかないんじゃないか?」

 俺はオートマチックタイプのマグナムを取り出しながらそう告げる。


 ……これだと、1回の射撃で倒せるオートマトンは1体だけだからなぁ……。しかも、反動をサイコキネシスで押し返す事で抑えて撃つ都合上、精神集中が必要だしな。


「……そうだな。だが、あのロボットども、次々に押し寄せてきて途絶える様子がない。突破するには弾薬が厳しいのではないか? ――他に脱出路はないのか?」

 珠鈴がサブマシンガンのリロードを行いながら問いかける。

 

 その交換の隙を突き、小型ミサイルを発射しようとしていたオートマトンは、俺がサイコキネシスで壁にぶつけてふっ飛ばした後、マグナム弾をブチ込んで壊しておいた。

 っていうか、屋内で小型ミサイルとかヤバすぎるだろ。いや、ガトリングの方も十分ヤバいんだけど。部屋の壁に穴が空いてるし……

 

「……あと、これはついでに……というかグチのようなものだが、『竜の血盟』はキメラの研究と開発をしている組織ではなかったのか? なんであのような、戦闘ロボットどもが作られているのだ?」

 と、問う珠鈴。……たしかにそうだな。

 

「――まず前者ですが、この部屋の出口は正面のそこだけです。通気口の類もありません。後者は、多重のパスワードでロックされていたデータベースにアクセスして得られた情報から、この施設のカムフラージュに使われいた企業と秘密裏に取引をしていた事が確認出来ました。おそらく、その関係でしょう。詳しくは戻ってから調べてないとわかりませんが」

 室長がさらりとそんな事を言ってくる。

 

「多重のパスワードでロックされていたデータベースにアクセスって……どうやってやったんですか?」

「簡単ですよ。端末にサイコメトリーを実行して、使用した人間の残留思念から読み取っただけです」

 俺の問いかけに対し、室長は眼鏡をクイッと押し上げながらそう答えてきた。

 なんともまあ、強力なサイコメトリーだな……ホント。並のサイコメトリーではそこまで出来ない事の方が多いって聞いたぞ、俺。

 さすがは室長をやっているだけはある、というべきか。

 

「それで? この部屋に他に脱出路がないのはわかった。だが、他に脱出する手段は見つからなかったのか?」

 アサルトライフルを撃ち続けながら、再度問う珠鈴。

 

「ここを突破さえ出来れば脱出路は幾つかあるんですけどね……」

 室長は、そう言ってタブレット型端末を取り出し、それを操作する。

 と、ディスプレイに地図が表示された。

 

「これは、この建物の地図です。今いる場所がここで……ここからこう進み、この階段を下ると試作開発エリアと呼ばれる場所に入れます。で、このエリアに入るとすぐに外へ出る事が出来る場所があります」

 ディスプレイ上を指でなぞって説明してくる室長。

 

 試作開発エリアは直進して左に曲がって次の所を右に曲がって……か。距離的には300メートルくらいか? 

 ただ、試作開発エリアの手前にある空中通路部分が、身を隠せる場所が一切ないため、オートマトンどもを迎撃しながらっていうのは、ちょっと厳しいな。そっから飛び降りるというのは現実的じゃないし。


「ちなみに……ここに警備司令室があるので、ここを制圧するという手も、一応ありますが……」

 と、再度ディスプレイ上を指でなぞる室長。

 

 ふむ……警備司令室はここから左回りか右回り、どちらかぐるっと通路沿いに回り込んで南東へ行く感じになるな。

 左から回り込むと距離が長い上に、身を隠せる場所がない通路を通る事になるから、このルートを進む意味は一切ない。

 右回りなら身を隠せる場所が多い上、左回りよりも距離的には近いが、試作開発エリアまでの距離と比べると少し長い。

 ……しかも、オートマトンは警備司令室から来ている。つまり……制圧はオートマトンの殲滅と同義という事だ。

 警備司令室の制圧を狙う利点は…………ん?

 

「……この部屋、隣り合う形で別の部屋があるんですね」

 地図を見て、隣にも部屋がある事に気づき、そう口にする俺。

 

「ええ、そうですね。このあたりは、壁越しに幾つもの部屋が連なっていますからね。しかも、大半は室内で繋がっています。――この部屋も、以前は別の部屋と繋がっていたらしいのですが、その部分はコンクリートで塞がれてしまったみたいですね」

「それで、こんな一直線の通路からしか行けない状態になっていたのか」

 ダンジョンじゃあるまいし、構造に欠陥がありすぎだろうと思っていたが、どうやらそういった理由があったようだ。


「まあ、塞がれた理由はおそらく、ここに機密情報へアクセスする端末が置かれているから……ではないでしょうか」

「なるほど……たしかにそう考えるのが一番しっくり来ますね」

 俺は室長にそう言って頷き、地図を見る。

 

 ……うーん、この『口』の形をした通路を上手く使えないものか……

 『口』の左上が試作開発エリアへの入口、右下が警備司令室だろ……

 左回り右回り、どちらからでも警備司令室に行ける。もっとも、左回りをする利点はないが。

 ついでに言えば、試作開発エリアへも左回り右回り、どちらからでも行けたりする。無論、こちらも右回りをする利点はない。

 ……と、そこまで考えた所で、ふと1つの策――の案のようなものが脳裏をよぎった。


「――室長。室長は、銃器って扱えます? 主にそれ、ですが」

 俺は室長が背負っているアサルトライフルを指さす。


「アサルトライフルなら、少なくとも珠鈴君よりは上手く扱えると思いますよ。一応、銃器の扱いは全般的に得意ですよ。あ、ハンドガンなら、全弾を的の中心に当てる事も出来ますね」

 俺の質問に対し、少し得意げにそう返してくる室長。へぇ、そうなのか……。なんだか意外だな。

 

「珠鈴のテレポーテーションって壁をすり抜けられたっけか?」

「うん? 向こう側を視認出来る壁なら可能だな。私のテレポーテーションは、見える所にしか跳べないからな」

 珠鈴のサイキック――テレポーテーションについて尋ねてみると、そんな答えが返ってきた。

 

 ふむ……と、考えながら部屋の壁を見ると、入口から直線上に位置する壁の部分が、通路から放たれているバルカン砲の銃弾によって、穴だらけになっているのが見えた。

 しかも、壁に空いた穴にクレアボヤンスで視界を近づけてみると、壁の向こう側の部屋が見えるような状態になっていた。

 ……まあ、あんだけ連射されてたら、さすがに貫通するか。もっとも、今の状況からすると、ある意味好都合なんだが。

 

「珠鈴、あの穴から壁の向こう側の部屋を覗いて、テレポーテーションは可能か?」

「それは可能だが……あんな所で奴らに背を向けていたら、跳ぶ前に蜂の巣にされるのが関の山ではないか?」

 俺の問いかけに対し、もっともな回答をしてくる珠鈴。

 

「そこは俺がどうにかするから問題ない」

「――蒼夜君が、そんな風に言うという事は……何か策を考えついたのですね?」

 室長が俺のその言葉に食いついてくる。

 

 それに対し、俺はこう言葉を返す。

「ええ、一応ですけどね――」

追記

誤字を修正しました。

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