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サイキッカーの異世界調査録(サーベイレコード)  作者: TOMA
第2部 黄金守りの不死竜と調査録 第2章 遙かなる古の遺産編
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第150話[表] 地球・キメラと霊力

<Side:Akari>

「ま、さすがにこれだけの数をいっぺんに飛ばす必要があるような事態には、そうそうならないだろうけどな」

 ロディがそう言いながら、浮かせている剣を全て自身の次元鞄へとしまい込む。

 

「そんな事態がそうそうあったら困るわよ……」

 私が肩をすくめながらそんな風に返した所で、

「むむむ? 通路が分かれているのです」

 と、クーさん。

 

「たしかに左と右に分かれているわね……」

 私はそう言いながら、左右の通路をそれぞれ確認する。

 

 左は……天井の一部が崩落していて、上の階へそのまま登っていけそうな感じになっているわね。逆に下の通路を進むのは難しそうだわ。崩落した天井を消し飛ばせばいけるかもしれないけど。

 右は……少し先で曲がっていて、その先がどうなっているのかは分からないわね。

 

「メッセージに添付されていた見取り図によると、右はオートマトンの製造ラインがあった場所――要するに工場だった場所のようだ。左は倉庫があるようだが、あの感じだとそこへは行けそうにないな。上の階は……ここで働いていた者たち用の休憩室とか仮眠室とかがあるみたいだな」

 ロディがスマホを見ながらそんな風に言ってくる。

 

「キメラが潜んでいるとしたら、その工場の方……かしらね? まさか、休憩室で休憩していたり、仮眠室で仮眠していたりはしない……わよね?」

 言いながら、なんだかちょっとシュールな光景を思い浮かべてしまう私。

 ……休憩室でくつろいでいるキメラという、その光景を。 

 

 ……うん、我ながらアホな事を思ったものだわ……。そんな光景、ありえるわけがないでしょうに……と、心の中で自分で自分に突っ込みを入れた直後、

「ううーん……。知能が高くて人型に近いキメラならば、ありえないとも言い切れないのです」

「まあ……こんな狭い建物内じゃ大型のキメラはいないだろうし、人型のキメラがいる可能性はゼロじゃないよな。実際、こっちの世界でウェアウルフやコボルトみたいな姿をしたキメラと戦った事があるし」

 なんて事をクーさんとロディが言ってきた。

 

 ……あれ? 可能性あるの……?

 

「なら、上に行ってみる?」

「うーむ……。特にアテがあるわけじゃないし、それでもいいか」

 私の問いかけにロディがそう返してきた所で、

「あれ? でも、この工場部分ですが、外壁に沿って2階――というか通路があるのです。そして、そこからも休憩室や仮眠室の方へ行けそうな感じになっているのです」

 と、ロディと同じくスマホを見ながらクーさんが言ってきた。

 

「あ、本当だわ。これだったら、工場の方を確認しながら上に行くのが良いんじゃないかしら?」

 私は自分のスマホで見取り図を確認し、そんな風に提案する。

 

「そうだな。そうするか」

「はいです。それで良いと思うです」

 ロディ、クーさん共に異論はないようなので、私たちは右へと進んでいく。

 

 すると、角を曲がってすぐに両開きタイプの鉄扉が見えてきた。

 と言っても、半分しか残っていないので、壊すまでもなく普通に通過出来たりするのだけど。

 

「ううーん……。なにやら妙な霊力をこの先から感じるのです」

 鉄扉に近づいた所で、クーさんがそんな風に言ってきた。

 

「妙な霊力? キメラの?」

 私がそう問いかけると、クーさんは手をこめかみに当てながら、

「それが……なんとも言い難いのです。こう……たしかにキメラっぽいというか、魔物の類が有する霊力といった感じではあるですが、どうにも霞んでいるというか……単純に『霊力が弱い』のとは違う、不自然な『希薄さ』があるのです」

 と言ってきた。

 

「霊力が弱いわけではないのに、薄く感じる……という事?」

「はいです。そして、何故そのように感じるのかはさっぱりなのです」

 私の再度の問いかけに対し、そんな風にクーさんが答えると、

「まあ……とりあえずいきなり飛び込まずに、そーっと覗いてみるか」

 と、そう言ってくるロディ。

 

 私とクーさんはそれに頷き、3人揃ってそーっと移動。

 半分だけ残っている鉄扉の裏に隠れつつ、工場内を覗き込んでみる。

 

 工場内には何に使うのかさっぱり分からない機械が所狭しと並べられており、その機械群の合間を縫うようにしてベルトコンベアーが設置されていた。

 

「……思ったよりも製造に使っていたと思しき機械が残っているわね……。どれがどの工程で使われるものなのかとかは全然わからないけど」

「これだけの規模のものとなると、解体するのも大変だろうし、放置しておくしかなかったんじゃないか?」

「なるほどね……。でも、これだけ機械が残っていると、その裏にキメラとかが潜んでいる可能性は十分にあり得るわね」

 ロディに対して頷きながらそう返した後、私はクーさんの方を向き、

「クーさん、霊力ってどの辺りから感じるの?」

 と、そんな風に問いかけた。

 

「複数あるですが……一番近いのは、あのクレーンのような巨大装置がある所なのです」

 と返事をしつつ人差し指で工場の一角を指し示す。

 

 そちらへ顔を向けてみると、たしかにクレーンのような形状をした装置がそこにはあった。……あれでオートマトンとか資材とかを持ち上げていたのかしらね……?

 なんて事を考えていると、

「ちょっと確認してみるか」

 と言って、そのまま工場内へと足を踏み入れるロディ。

 

 私とクーさんも、その場に留まっていても仕方がないので、ロディに続くようにして工場内へと足を踏み入れる。

 

「……キメラが潜んでいるなら、もうそろそろ仕掛けてきてもいいと思うんだけど……」

「何も近づいてきていないのです。霊力も動いていないのです」

 私の呟きに対し、クーさんがそう返してくる。

 

 まさか、本当に隠れているだけ……だったり? などと思いつつも、クーさんが『霊力を感じる』というクレーンのような巨大装置へと歩み寄る私たち。

 

 その直後――

「っ!? 来やがったかっ!」

 というロディの声と共に、私たちの前に魔法障壁が出現する。

 

 え? と思った時には、まるで振り子のようにクレーンのアーム部分が動いてこちらへと迫ってきている所だった。

 

 バチィッという音と共に障壁に弾かれたクレーンのアームが、そのまま停止する。

 

「クレーンが……勝手に動いた……?」

「……いえ、違うのです。あのクレーンに……キメラが『憑依していた』ようなのです」

 私の言葉に対し、クーさんがそんな風に言ってくる。

 

 憑依……? キメラがクレーンに憑依……? そんなキメラがいるなんて初めて知ったわ……

 と、そう思った直後、複数の機械の駆動音が一斉に鳴り響いた。

 ……って! ちょ、ちょっと待って……!? こ、これってまさか――

妙なキメラが現れたようですが……?


とまあ、そんな所でまた次回!

次の更新も予定通りとなります、9月16日(月)の想定です!


※追記

サブタイトルに 地球・ がついていなかったのでつけました。

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