表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
サイキッカーの異世界調査録(サーベイレコード)  作者: TOMA
第2部 黄金守りの不死竜と調査録 第2章 遙かなる古の遺産編
699/764

第147話[表] 地球・廃墟調査

<Side:Akari>

「この廃墟は?」

 廃墟を見回しながら、私がそんな疑問の言葉を投げかけると、

「かつて、『竜の血盟』によって――正確に言うと、その息のかかった企業によって――オートマトンが生み出されていた工業施設だな」

「朔耶がいきなり戦闘ヘリを操縦していた場所でもあるね」

 なんて言ってくる蒼夜と珠鈴。

 

「戦闘ヘリを操縦って……」

 と、呆れ気味に私が呟くと、

「まあ、うん、朔耶は『超展開メーカー』とか言われてたくらい、無茶苦茶だった。うん」

 などとロゼが言ってきた。

 

 ……ちょ、超展開メーカーって……

 たしかに話を聞く限りでは、そうとしか言えないような人物ではあるけど……

 

 そんな事を思っていると、

「というか、その戦闘ヘリは一体どこから? 超常現象調査室は所持していませんよね?」

 という、もっともな疑問を首を傾げながらユーコが口にした。

 そしてそれに対し、

「ああ、ちょいとばかり作っている所から拝借した」

 なんていう返事をする蓮司。いや、拝借って……

 

「作っている所からの拝借って……それ、ただの強奪じゃ?」

「いやいや、そんな事はないぞ。作っていたのは、ここでオートマトンを作っていた企業と同じだ。要するに『押収物』だよ」

 腕を組みながら呆れ気味に問いかけたシャルに対し、蓮司が首を横に振って否定しながら、そう返事をする。

 

「……諸々の手順をすっ飛ばしていきなり踏み込んで『押収』というのも、なかなか無理のある話だけどな……」

 今度は蒼夜が呆れ気味にそんな事を口にする。

 ……たしかに無茶苦茶ね……

 

「まあ……その後、室長さんが大変そうだったのは覚えているのです」

 やれやれと言わんばかりの表情でため息混じりにそう言って、首を横に振るクーさん。

 

「そう言えば、あの時には既にクーもいたんだったな」

「はいです。もっとも、あの頃は引きこもっていたですが……」

 クーさんが蒼夜の言葉に頷きながら、ちょっと肩を落とし気味にそう口にすると、

「状況を考えれば仕方があるまい。むしろ、しばらく見ない間に随分と変わっていて驚いたくらいさ」

 なんて事を言って微笑してみせる珠鈴。

 

「ま、たしかに大分変わったな」

 蓮司は珠鈴に続くようにして、肩をすくめながらそう言うと、一呼吸置いてから、

「……で、それはそれとして、ここのどこを調べればいいんだ? ここって、最終的にウチじゃなくて警察――というか、公安の連中が調べたから、いまいち良く分からねぇんだよなぁ……」

 と、そんな風に言葉を続けてユーコの方を見た。

 

「あ、はい。ここではどうやらオートマトンだけではなく、キメラの一部も生み出していたようで、そのキメラを生み出していた区画の方を調査する感じです。ここを監視している方が、怪しい熱源を複数感知したと報告してきたそうでして……」

 ユーコがそんな風に説明した所で、

「なるほどね……。……そこで報告にとどめて、足を踏み込まなかったのは、ある意味正解かもしれないわね」

「ん、たしかに。殺気……というか、うん、獲物を見つけた獣のような視線を感じる。うん」

 なんて事を言ってくるシャルとロゼ。

 相変わらず、とんでもない察知能力ねぇ……

 

「うむ。……やれやれといった感じだが仕方がないな」

 珠鈴がそんな事を口にした直後、その姿が消えた。

 ……あれ? どこへ?

 

 と思ったその直後、

「グギャァァアアァァァッッ!?!?」

 という、明らかに異形の存在と思われる『何者か』の断末魔の悲鳴が響いた。

 

 そして程なくして、

「とりあえず、こちらを監視していたキメラっぽい奴は倒してきた。……が、すまない、上手く一撃で仕留められず、声を上げられてしまった」

 と、申し訳なさそうに言いながら、珠鈴が再び姿を見せた。

 

 ……いつの間にか倒してきてるし……

 

 なんて事を思いながら私は、

「まあ……どの道、私たちの存在は既に察知されているんじゃないかしらね?」

 とだけ返した。

 

「そうだな。別にひっそり忍び込みに来たわけでもないし、大した問題じゃない」

「はい。室長さんたちからも、可能ならば一掃しておいて欲しいと言われていますから、倒す事を優先していただいて大丈夫ですよ」

 蒼夜とユーコがそれぞれそんな風に私に続いて言葉を紡ぐと、

「いや、むしろ今の声で『逃げられたらどうしよう』と思っているんじゃないか? 姉貴は……」

 などと、肩をすくめながら言う蓮司。

 

 するとそれに対して珠鈴が、

「うむ、その通りだ。逃さず殲滅せなばならない所で、あのような声を上げさせてしまっては、恐れをなして逃げ出す奴も出てしまう可能性があるだろう? 私はそれを懸念しているのだ」

 と、頷きながら告げてくる。

 

 あ、そっちの心配なのね……

 

 ちょっとだけ呆れ気味にそんな事を思った所で、

「ま、まあ、施設の外へと通じる出入口は、監視の人がしっかり見張っているそうなので、そちらは心配しないでも大丈夫だと思いますよ」

 と、頬を掻きながら言うユーコ。

 

「ん、でも、たしかに逃走するような動きをされると、うん、ちょっと面倒な気はするかも。うん」

「――そうだな。ここは各出入口に分かれて、包囲殲滅する方がいいか」

 ロゼの発言に続き、蒼夜が顎に手を当てて思考を巡らせながらといった表情で、そう口にしてくる。

 

 その言葉に私は――

 

 でもまあ、たしかにそれには賛成ね。

 手分けして一気に倒してしまった方が確実だし。

 

 それに……全員で一塊になって突入するのは、明らかに戦力過多だし……ね。

 

 なんて事を思うのだった。

第1部第2章の異伝で登場した場所へと再びやってきました。


さて、次からは平時通りの間隔に戻る予定でしたが、それだと少し間が開いてしまうので、次は平時から1日前倒ししまして……9月5日(木)の更新を予定しています!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ