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サイキッカーの異世界調査録(サーベイレコード)  作者: TOMA
第2部 黄金守りの不死竜と調査録 第2章 遙かなる古の遺産編
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第143話[表] 地球・魔煌波と魔獣とユーコ

<Side:Akari>

「……たしかに向こうよりも弱体化しているとはいえ、十分強いような気がするわね……。これ」

 私は魔法の矢を消し去りながら、そう口にする。

 

「そうだね。魔煌具、幻導具なるものがあれば、あの異形――魔物への対処はかなり変わる事になるだろうね」

 支部長が頷きながらそんな風に言うと、

「ただ、魔法を使うと『魔獣』が生み出されるという問題があるからな……」

 と、呟く蒼夜。

 

「魔獣……ですか? それは、魔物とは違うのですか?」

 凜花さんが首を傾げながら問うと、それに対して蒼夜が魔獣とは何か、どうやって出現するのかを説明する。

 そしてその説明に対し、

「……なるほど、そのような問題点があるのですね……」

「魔物との交戦中に、新手の魔物がどこからともなく現れる事がある……という報告が稀にあるけど、もしかしてそれらは……?」

 と、凜花さんと支部長。

 

 って、新手の魔物が現れる……? PACブラスターは魔煌波には何の影響も与えないはずなのだけれど……

 なんて事を考えていると、

「……魔物の繰り出す攻撃には、魔煌波を変異させて放つ物が結構あるのです。なので、そういった攻撃によって変異が蓄積される事で、魔獣が生み出されるレベルでの歪みが生じてしまう……というのは十分に考えられる話なのです」

 と、そんな風にクーさんが言ってきた。

 

 なるほど……。言われてみると、まるで魔法のような攻撃を仕掛けてくる魔物は結構いるわね……

 そして、それによって変異がどんどん累積されていって、魔獣が生み出されるほどに歪んでしまう……と。

 

 でも――

「向こうでは、そういった攻撃を仕掛けてくる奴と戦っていても、魔獣が湧く事ってないような……?」

 という疑問が湧き、それを投げかける私。

 

「それは、幻燈壁の有無なのです。ある一定量までの魔煌波の変異、歪みであれば、幻燈壁という形で収斂して消滅、魔獣が生み出されるような事はないのです」

 クーさんがそんな風に説明してくるものの、私はいまいち理解が出来ず、

「幻燈壁って、魔煌波によって生じるものよね? 魔煌波によって生じるものが、同じく魔煌波によって生じる魔獣の出現を抑制している……?」

 という疑問を更に口にした。

 

「要するに魔煌波には一種の自浄作用があるって事だ。ある程度の変異や歪みならば、その自浄作用によって幻燈壁という形で変異や歪みを無害化出来る。だが、その無害化可能な限界ラインを超えてしまった場合は、魔獣が生まれてしまう……とまあ、そんな感じだな」

 蒼夜のその説明に、

「あ、なるほど……。つまり、今の地球は幻燈壁が出来る程の濃い魔煌波に満ちているわけじゃないから、魔物が魔法もどきの攻撃を多用すると、魔煌波の変異――歪みが、あっさり魔獣が生み出されるラインに到達してしまう……と」

 と、私は頭の中で咀嚼し、解釈しながらそう返す。

 

「はいです。詳しく調べたわけではないので、あくまでも過去の調査データに基づく推測ではあるですが、ほぼほぼそういう事で間違いないと思うです」

 クーさんが頷きながらそう言うと、話を聞いていた凜花さんが、

「異世界にも色々と複雑な法則があるのですね……」

 なんて事を呟くように言った。

 

「まあ、あくまでも人の手によって作られた世界――コロニーだからねぇ……」

 私が肩をすくめながら返事をすると、

「……? またノイズになってしまいましたね……」

 と言ってくる凜花さん。

 

 ……あ。たしかにこれはノイズ化する奴ね。

 

「人によってノイズになったりならなかったりというのも、なかなか妙な感じだよね。一体どういう原理なのか気になる所だけど……」

 支部長がそんな風に言った直後、会議室内に設置されている内線が鳴った。……うん?

 

 内線を取った凜花さんが、しばし内線の相手と話をした後、

「わかりました。ありがとうございます」

 と言って内線を切る。

 そして、

「超常現象調査室との連絡が取れました。リモートで繋ぎますね」

 と言って、タブレットを操作。

 

 会議室にある大型モニタに、ユーコ……とその他2人ほど映し出された。

 

「ユーコ!」

「灯! それに皆さん! まさかこんなに大勢でこちらに来られるとは……」

 私の声に対し、ユーコがモニタ越しに驚きの表情でそんな風に言ってくる。

 

「まあ、色々あって地球へと続く道……のようなものを作る事が出来たのよ。だからこうして大所帯で迎えに来たわ」

 そんな風に私が返事をすると、それに続くようにして、

「ま、地球がどうなっているのか気になったしな」

「ん。興味があった。うん」

 なんて事を口にする蒼夜とロゼ。

 

「うん? そっちの人は……勇さん?」

「お、蓮司か。久し振りだな。姉の方はどうしたんだ?」

 蓮司の言葉にユーコの横にいる男性――勇さんというらしい――が、そう返してくる。

 

「あ、あー……。色々あって見た目が変わってしまったが、私が姉の珠鈴だ」

 珠鈴が人差し指で頬を掻きながら、そんな風に告げる。

 

「はぁっ!? マ、マジかよっ!? 顔はたしかに似ているが、どっからどうみても竜人だったから、他人の空似だと思っていたぜ……。他の面々はそのままだしよ。クー坊も含めて」

「その呼ばれ方、凄く久し振りなのです。何故か妙に懐かしさすら感じるのです」

 勇さんの言葉に、クーさんがそんな風に返す。

 たしかにクーさんに対してそんな呼び方、誰もしないものねぇ……

 

「ところで、そちらの女性はどなたです? 昔はいなかったような気がするですが……」

「ああ、こっちは上津木美香。一応俺の上司――今の超常現象調査室の室長だ」

 クーさんの問いかけに対し、勇さんがそう答える。

 

 ……うん? 上津木……?

 

「日向さんと同じ名字……?」

 と、私が呟くように疑問を口にすると、

「……日向さんだけでも驚きなのに、美香さんまで関わっているとは……。いや、むしろ日向さんが関わっている時点で、美香さんも関わっているのは当然……なのか?」

 なんて事を蒼夜が口にした。

 

 ……ある意味、当然と言えば当然なのかもしれないけど、蒼夜はこの人の事を良く知っているみたいね。

 もしかして、また朔耶の親戚とかなのかしら?

再び『上津木』の名字です(もっとも、登場はこっちの方が先ですが……)


とまあ、そんなところでまた次回!

次の更新も予定通りとなります、8月12日(月)の想定です!


※追記

サブタイトルに「地球・」を付け忘れていたので追加しました。

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