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サイキッカーの異世界調査録(サーベイレコード)  作者: TOMA
第2部 黄金守りの不死竜と調査録 第2章 遙かなる古の遺産編
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第130話[表] 古代の演算装置

<Side:Akari>

 ――定期的に襲ってくる歪んだ魔獣を倒しつつ、魔石や魔金属、そして魔煌技術の話をあれこれしながら進んでいくことしばし……

 

「むむむ? この階段じゃが……少し前に登らなかったかのぅ?」

 と、エステルが首を傾げながらそんな風に問いかけてきた。

 それに対して私は「うん?」と返しつつ、階段を見る。


 ……これは……うん。一度登ってるわね……

「た、たしかに……。この階段、ちょっと前に登ったわね……」

 と答える私。

 そしてそのまま、

「どうやら、いつの間にかグルっと回って戻ってきてしまっていたみたいね……」

 と告げて、首を横に振った。

 

「感じ取れる『歪み』がグルグル回っているのか?」

 というロディの問いかけに、私は「そういうわけじゃないんだけど……」と返すと、顎に手を当ててから、今の状況を口にする。

「なんというか……『歪み』はもう、すぐそこのはずなんだけど……そっちへ進めそうな通路が全然見当たらない感じなのよね……」

 

「なるほど、そういうわけか」

 と、納得するロディに続くようにして、

「ふーむ……。普通の方法では辿り着けぬ場所なのやもしれぬな」

 なんて事を呟くように言うエステル。


「それって、隠し通路かなにかがあるって事?」

 エステルに対して私がそう問いかけると、エステルは頷きながら、

「うむ。あるいはテレポーターや昇降機の類でしか入れない、とかじゃな」

 と言ってきた。

 

 うーん、なるほど……。言われてみるとそれは大いにあり得るわね……

 でも、そうだとしたらどうしたものかしらね……

 と思っていると、蒼夜が問いの言葉を投げかけてきた。

「ちなみに、どっちの方向だ?」

 

「あ、えっと……あっちの方ね」

 私がそう言いながら人差し指で方向を指し示すと、

「ふむ、あっちか。よし、ちょっと『視て』みるとしよう」

 と言って、そちらへ顔を向け壁を凝視し始める蒼夜。

 

 あ……っと、そうじゃないわね。壁を『凝視』ではないわね。

 クレアボヤンスで『透視』し始める、ね。これは。

 

 などと心の中の言葉に自分で訂正していると、

「なるほど……たしかに『激しくノイズがかかって何も視えない』な」

 なんて事を言ってくる蒼夜。

 

「……クレアボヤンスを使って『何も視えない』という事は、イコール『確実に何かある』という事だよね?」

 カエデがそんな問いの言葉を口にする。

 するとそれに対して、

「ま、そういう事になるな。ああ、ちなみにその周囲も見てみたが、『何も視えない場所』へと続いているような通路はまったく存在していなかったから、テレポーターか昇降機のどちらかで行くんだろうな」

 と、そう答える蒼夜。

 

「昇降機なら真上を調べてみればいいけど、テレポーターだと、最悪この近くにないどころか、遥か遠くにあるかもしれないわよね……」

 私が肩をすくめながらそう言うと、

「そうね。でも、この不安定な場所にテレポーターで繋ごうなんて事、普通は考えないと思うわよ」

「そうですね。昇降機で繋がっていると考えた方が良いかと思います」

 なんて事をシャルとジャンさんが言ってくる。

 

「なるほど……。たしかにそうかも……。なら、とりあえず上に行ってみるのが良さそうね」

 私はそう口にすると、『真下から感じ取れる』場所へ向かって歩き出す。

 

 ――直後、再び歪んだ魔獣が出現する『予兆』が視界に入った。

 

「また出てきたわね……。なんだか、ただでさえ高い出現頻度が更に上がっているような気がするわ」

「そうだな。最初の頃に比べて半分以下の時間で現れるようになってるな」

 ため息混じりの私の言葉に対し、ロディが得物の剣を浮かせながらそう返してくる。

 そしてそれに続くようにして、

「……『何か』に近づいた事で、歪みが増した……と考えるのが自然だろうな」

 と、こちらも得物――と言っても、こっちは浮かせるのが前提だけど――を浮かせながら言う蒼夜。

 

 たしかに、こいつらの『歪みの根幹』が『目的の場所』によるものだと考えると、出現頻度が増すのもわからなくはないわね……。面倒な事、この上ないけれど。

 

 そんな事を考えている間に歪んだ魔獣が姿を現す。

 ……が、こちらの戦力は過剰とも言うべき状態なので、例によって一瞬で消し飛ばし終わった。私なんて、弓を構えてすらいない。

 

「また現れる前にさっさと移動した方が良さそうね」

 そう皆に告げて即座に移動を開始する私。

 

 ……そこから何度か歪んだ魔獣が出現したが、全て瞬殺しつつ移動を続け――

「――ここが真上になると思うわ。『真下から感じ取れる』から」

 と、私が告げたとおり、遂に『真上』へと辿り着いた。

 

 ちなみに真上にあったのは、妙に広い倉庫みたいな建物で、当時のものと思しき装置……らしきものが、大量に立ち並んだ状態で残されていた。

 なんというか……この遺跡で、当時のものがここまで残っているのって、珍しいわね……

 

 なんて事を思っていると、ジャンさんが周囲を見回しながら、

「ここに並んでいるこの巨大な箱状のものは、全て古の時代の演算装置の類……なのでしょうか? まあ、残念ながらどれも壊れているのが見てわかりますが」

 と、そんな事を口にする。

 

 うーん……。言われてみると、周囲に立ち並んでいる装置は、昔なにかで見た『スーパーコンピューター』みたいな感じがするわね。

 

「そうじゃなぁ……。大工房にもこれと同じようなものがあるゆえ、おそらく古の時代に使われていた演算装置じゃと思われるが……詳しくは調べてみないとなんとも言えぬのぅ」

「だが、演算……か。ゲートの類を研究していたとするなら、こういったものを使っていただろうな」

 エステルに続くようにしてそんな風に蒼夜が言うと、そこにさらにシャルが、

「なら、ここに下に行く手段――昇降機とかがあるって事になるけど……」

 と言いながら周囲を見て、

「延々と同じものが立ち並んでいるだけで、他に何もなさそうね……」

 と、そんな風に言葉を続けてきた。

 

「これだけの装置があるという事は、これを使って何かを実行させるための端末がどこかにあっていいはずなんだが……まさか、遠隔とかいうオチか?」

 ロディが腕を組みながらそう呟く。

 う、うーん……。そのパターンは勘弁願いたい所だけど、下へ行く昇降機の類が全く見当たらない事を考えると、不安でしょうがないのよね……

 

「まあ、もう少し調べてみないとなんとも言えないな」

 蒼夜がロディと同じく腕を組みながらそんな風に言うと、カエデが頷いて、

「うん、そうだね。この中と……あと周囲も調べてみようか」

 なんて言葉を建物の外へと視線を向けながら紡いだ。

 

「……でも、その前に雑魚を倒さないと駄目そうね」

 そう言って刀と剣を抜き放つシャル。

 私は現れた『予兆』を見ながら、

「……ちょっと、出現頻度が上がりすぎじゃないかしらね……。いやまあ、至近距離まで来ただけはあるって感じもしないではないけれど……」

 と呟き、やれやれと首を横に振ってみせるのだった。

前回の話が説明ばかりだったので、今回は展開(の進展)を優先してみました……


とまあそんなこんなでまた次回!

次の更新も予定通りとなります、6月21日(金)の想定です!

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