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サイキッカーの異世界調査録(サーベイレコード)  作者: TOMA
第2部 黄金守りの不死竜と調査録 第2章 遙かなる古の遺産編
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第129話[表] 魔石と魔金属と技術

<Side:Akari>

「ここは……工場か何かだったような感じがあるのぅ。それも大量生産系のな」

 地下の連絡通路から階段を上がった所で、エステルが周囲を見回しながらそんな風に言う。

 

「たしかに、こことか一直線に少し高くなっているし、ベルトコンベアみたいなのがあってもおかしくなさそうな感じだね」

 エステルに続いてそう言ってきたカエデに対し、

「言われてみると、天井にもクレーンがあったかのような溝とかあるわね」

 と、天井を見上げながら返す私。

 

「さっきは研究所みたいな場所だったよな」

「そうね。部屋と通路との間にシャッターみたいなのがあったりとか、妙に厳重そうな感じの所がチラホラあったものね、あそこ」

 ロディの発言に対し、そんな風に返事をするシャル。

 

 たしかにここのひとつ前に入った建物はそんな感じだったわね……

 

「オフィスっぽい場所に、研究所っぽい場所、そして工場っぽい場所……か。やっぱり古の時代の大工房的な施設だった可能性が高そうだな、ここ」

 蒼夜が腕を組みながらそう呟くように言うと、

「ええ、そうですね。オフィスビルのような建物と研究所のような建物だけであれば、学園の類である可能性も考えられますが、こうして工場のような建物まであるとなると、そう考えるのが妥当な気がします」

 と、ジャンさんが頷きながらそんな風に返す。

 

「まあ、妾から言っておいてなんじゃが、ここが工場だったと断定出来そうなものは存在していないゆえ、もっと別の用途がある施設で、実は学園だったという可能性もゼロではないがの」

 エステルがそう言って肩をすくめると、

「――断定出来そうなものを探させてはくれなさそうね」

 なんて事をシャルが呆れ気味に言いながら刀と剣を鞘から抜き放つ。

 

 直後、魔獣のようで魔獣ではない存在――『歪んだ魔獣』と私たちが呼称している存在――が実体化する『予兆』が生じた。

 

「……エンカウント率高くない? さっきも出てきたわよね……」

「いや、エンカウント率って……。いやまあ……言いたい事はわかるし、出現頻度が高くて鬱陶(うっとう)しいってのも、その通りではあるけどな……」

 私がため息をつきながら魔煌弓を構えると、ロディが剣を浮かせながらそんな風に私に対して言ってくる。

 

 そして程なくして、歪んだ魔獣が3体、私たちを取り囲むような感じでその姿を現した。……けど、正直言って大して強くはないので――

 

「ふっ!」

「よっ!」

「せいっ!」

 現れると同時に攻撃を仕掛けた、シャル、ロディ、私の3人だけで、あっさりと歪んだ魔獣は消滅する。

 

「この魔石の代わりに落としていく金属みたいなのって、使えるものなのかしらね?」

 散らばった魔石もどき――とりあえず魔金属と呼称している――を回収しながらそんな疑問を私が口にすると、

「魔石のような使い方は出来んじゃろうが、これはこれで集めて加工すれば、武具やアクセサリーの類は作れそうな気がするのぅ。それも、高レベルの魔法を組み込む事の出来るような、の」

 と、エステルがそう返してきた。

 

「え? そうなの?」

「うむ。あやつらの落としていく魔金属を全て『計測』しておるのじゃが、どれもこれも霊幻鋼と同等以上の『効率の良さ』と『強度』なのじゃよ」

 私の問いかけに対し、そんな風に答えてくるエステル。

 

「へぇ、なるほどねぇ。……って、あれ? という事は、これって……実は霊幻鋼の類――亜種かもしれないって事?」

「その可能性もないとは言い切れぬが……現時点では、別物という感じじゃのぅ。なにしろ、霊幻鋼と違って、属性の力を帯びておるからの。これで武具やアクセサリーを作るとなると、魔煌波生成回路は確実にその属性で固定されるじゃろうな」

 私のさらなる問いかけに対して、エステルは腕を組みながらそう言ってきた。

 

「要するに、これで武具やアクセサリー作ると、使える魔法の属性が決まってしまう……と?」

「うむ、そういう事じゃ。今は何の属性にも染まっていないもの――『ブランク』の魔煌波生成回路を作る事が容易かつ一般的じゃからのぅ。……まあ、数年前までは『ブランク』なぞ、そうそう手に入るものじゃなかったんじゃがな……」

 エステルが頷いてそんな風に私に言うと、

「――当時の新聞では『長年イルシュバーンの国立研究所で研究されていたブランクの精製法が遂に確立。共和国政府は世界全体の魔煌技術発展を考え、その精製法とそれに付随する各種術式について、全て無償で公開する事を決定した』……と、そんな風に記されていましたが、あれは『黄金守りの不死竜』が生み出して広めた……というのが実際の所ですよね?」

 なんて事をメガネをクイッと押し上げながら問うジャンさん。

 

 それに対して蒼夜はというと、

「ま、『イルシュバーンにあるエクスクリス学院の研究室』で『確立された』のは事実だけどな。……エステルの研究室だが」

 と、そんな風に返して肩をすくめてみせた。

 

 ……いやそれ、事実上『黄金守りの不死竜』が生み出したようなものじゃ……

 なんて思っていると、蒼夜が続きの言葉を紡ぐ。

「そもそも、あれの製法自体はディアーナから得た物だからな。個人、あるいは特定の国や組織が専有していいものではないだろう」

 

「なるほど……。女神様伝来の技術だから、世界にタダで広めたってわけか」

「ま、そういう事だ。――『竜の御旗』……ひいては『銀の王』の事を考えると、世界全体の技術発展は割と急務だったってのもあるが」

 ロディの言葉に頷きつつもそう説明してくる蒼夜。

 そしてそれに続くようにして、エステルが補足の説明を告げてくる。

「うむ。『竜の御旗』……というか『銀の王』たちは鬼哭界の高度な技術を持っておるからのぅ。それを駆使したあやつらの破壊工作に対抗するには、各国、各組織の技術力の向上が必要不可欠じゃったのじゃ。妾たち『黄金守りの不死竜』だけであやつらの破壊工作を阻止して回る……などというのは、現実的ではないからのぅ」

 

「なるほど……各国、各組織で奴らのテロ行為に対抗出来るようにしたってわけね」

 私が納得してそう口にすると、

「そういう事じゃ。……よもや、ここまで急激に技術が発展するとは思わなんだがの」

「そうねぇ。そのうち、あの『公表』が『技術革命』として歴史書に記されてもおかしくはない感じよねぇ」

 なんて事を言ってくるエステルとシャル。

 

 ……まあ、以前のこの世界を知っているわけじゃないからあれだけど、それでも魔煌技術の進歩というのは、とても感じられるのよね。

 なんか凄い魔煌具が出てきたと思ったら、数ヶ月もしないうちに、さらに凄いものが出てきて、ようやく買ったものが数日で大幅に値下がりしたり……ね。はぁ……

 

 と、過去の経験を思い出し、心の中でため息をつく私だった。

なんというか、ほぼ霊幻鋼やブランクについて、以前と今とでの状況の違いを説明する回に……

この辺り、もっと前に説明しておけば良かったと思ってはいます……

結果的に説明の会話が長くなってしまいましたし……


ま、まあ、そんな所でまた次回!

次の更新も予定通りとなります、6月17日(月)の想定です!

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