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サイキッカーの異世界調査録(サーベイレコード)  作者: TOMA
第2部 黄金守りの不死竜と調査録 第2章 遙かなる古の遺産編
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第121話異伝1[表] 研究所と異形

<Side:Yuko>

 ……兎にも角にも、色々と調べてみないと駄目ですね……

 

 というわけで、私はとりあえず今いる部屋を調べてみる事にしました。

 

 うーん……。何かの資料と思しき物が散乱していますが、謎の数字が表に羅列されているものや、奇妙な図、数式のようでいて少し違う何かなど、どれも何の資料なのかさっぱり分かりませんね……

 

 書いてある文字は……アルファベットなので、英語……のように見えますが、違う気がします。見た事もない単語ばかりですし……他の国の言語……でしょうか?

 いえ、そもそも自動で翻訳されるはずなのにどうしてこのような見え方に?

 自動翻訳が働いていないのか、それとも自動翻訳をもってしても、こうなってしまうような古代の遺失文字なのかはさっぱりですが、少なくとも今の私の知識では、これはどうやっても読めませんね……

 

 他は……良く分からない器具が多数あるものの、どれも何に使うものなのかさっぱりですね。半分以上は『物理的に』壊れされていて、修理も復元も不可能そうな感じですし。

 

 ……

 …………

 ………………

 

 しばらく部屋の中を物色してみると、これといったものは見つかりません。

 うーん……ここはもう切り上げて、他の所を調べてみる方が良さそうな気がしますね。

 移動するとしましょう。

 

 私はそう判断し、ドアノブにガントレットで手を掛けて回してみる。

 ……しかし、ドアノブは回るものの、ドア自体が動かなかった。

 

 これ、向こう側になにかドアが開くのを阻害しているものがありそうな感じですね……

 ここはまあ、すり抜けてしまいましょう。今の感じからするとトラップとかではなさそうですし。

 

 ――早速ドアをすり抜けてみると、案の定というべきか、瓦礫がドアを塞いでいました。

 それにしても……ここで戦闘かなにかがあったのでしょうか?

 あちこちに弾痕やら何かで抉られた痕やら崩れた天井――瓦礫やらがありますね。

 

 そして瓦礫の真上……天井の崩れた部分からは、何かの配線とパイプが並んでいるのが見えました。

 

 まあ、一部断線して垂れ下がってしまっている配線や、大きな穴が開いているパイプがあるので、最早何の意味もなさそうですが。

 

 私は念の為、垂れ下がっている配線を避けながら、通路を進んでいってみます。

 すると、大して進む事なく、新たなドアが見えてきました。

 

 今回は普通にドアが開いたので、そのまま『すり抜けずに』部屋の中へと入ります。

 部屋の中には、ガラスの砕けた大きな培養槽が並んでいました。

 

 この培養槽……。一体なにを生み出そうとしていたのでしょう……?

 と、そんな事を思いながら部屋の中を調べていくと……

 

「っ!」

「ガッギギィ!」

 私が『殺意』を察知するのと、『殺意』が上から降ってくるのがほぼ同時でした。

 

 回避よりも迎撃の方が確実かつ安全だと判断し、私はまさに『アッパーカット』のような動きで『殺意』に向かってアストラルの刃を突き出します。

 

「グゲッ!? ゴアッ!?」

 声はそれだけ発されて沈黙。

 代わりに得体のしれない液体――色は赤くないですが血と思しきもの――が私に降り注ぎます。

「うえっ……」

 

 アストラル体でも液体はかかるんですよねぇ……

 霊体とは違うからなんでしょうかね……

 まあ、ちょっと精神を集中させれば、このくらいは弾き飛ばせるのでいいですが……

 

 私はそんな事を思いつつ、突き刺した『異形』を床に放り投げると、精神を集中。

 アストラル体に付着した血らしきものを、周囲に弾き飛ばして払拭します。

 まあ、残念ながらガントレットなどの『物理的な代物』に付着した物は、さすがにこれでは払えないので、振って払うしかありませんが……

 

 っと、それはそうと……この異形は一体……?

 少なくとも害獣でも魔獣でもないですね。

 強いて言うなら、キメラに近い気はしますが……

 

 もしや、ここは『竜の御旗』か『銀の王』が使っていた研究所とかなのでしょうか?

 そう言えば、一時期『黄金守りの不死竜』の皆さんが、キメラやキリングマシンなどを生み出していた研究所や工房などを破壊して回っていたとか……

 案外、その時に破壊された研究所のひとつなのかもしれませんね。

 

 ともあれ、研究所自体は完全に破壊されているようですが、得体のしれないキメラもどきの異形が、未だにうろついているというのは厄介ですね……。閉じ込められていた奴が、制御を失った事で、どこかからか這い出してきた感じなのでしょうか?

 

 なんにせよ、注意しながら進まないと危険ですね。

 真上という、人間の苦手とする場所からの奇襲を仕掛けてくるくらいの知恵はあるようですし……

 

 というか、多数襲いかかってきたらさすがに危険ですし、ここは一度出口を探す事に専念して、脱出ルートを確保してから探索する方がいい気がしますね。

 

 ――私はそう考え、あれこれ探索するよりも出口を探す事に注力。

 その道中で、先程とは違うキメラもどきの異形と何度か遭遇したものの、幸いというべきか、どれも強さは大したものではなかった為、簡単に迎撃する事が出来ました。

 そして――


「あ、このマークは……」

 ついついそんな言葉が口を衝いて出てしまったのは、地球――正確に言うと日本ではおなじみの『非常口』のマークと矢印を見つけたからでした。

 

「……どうしてこれが、このような場所に?」

 そんな呟きと共に、矢印の先に見える鉄の扉へと移動。

 そのままドアノブを回し――

 

「うん? 非常口が勝手に開き始めた? まさか……バケモンかっ!?」

 という男性の声が耳に届きました。

 

 そしてそれは、そこに人がいるという事。

 私は話をするべくドアを一気に開きます。

 

「……って、バケモンじゃなくて人間かよ。だが、どうしてあんな所から……?」

 困惑の表情で杖を構えたまま、階段の上からそんな事を呟く男性。

 そして、私の方を改めて見回してから、

「……お前さん、一体どこから入り込んだんだ?」

 と訝しげに問いかけてきました。当然と言えば当然ですが、警戒されていますね。


「あ、えっと、その……。――私はエレンディアの広捜隊に所属するユーコという者でして、この廃墟には、謎の地下施設で魔物との交戦中に発生した、奇妙な現象によって異空間に引き摺り込まれた後、渦のような場所から脱出したら、偶然辿り着いたというか、ここに出たというか、まあ、えっと、そんな感じです」

 と、そう説明する私。

 ……ちょ、ちょっとばかし話が纏めきれていないまま、一気に捲し立てすぎてしまったかもしれません……

 

 すると、案の定というべきか、男性は更に困惑――いえ、混乱しながら、

「エレン……ディア? ユーコ……? 異次元……空間?」

 なんて事を呟きました。

 

 や、やっぱりそうですよね……。普通に考えたらそういう反応になりますよね……

 ようやく何か情報を得られると思い、ついつい前のめりになりすぎました……

第2部では序盤以来の地球編です。

久しぶりの『異伝』表記です(なので、本編の本筋からは少しばかり話が逸れます)


とまあそんな所でまた次回!

そして、次の更新ですが……予定通り来週の金曜日だと遠すぎる事もあり、次の話がそこそこ出来ているので、平時よりも1日前倒して木曜日にしようかと思っています。


というわけで、次の更新は5月9日(木)を想定しています!


※追記

冒頭の表現を少しだけ変えました(なんというか……あまりにも簡素すぎる気がしまして……)

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