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サイキッカーの異世界調査録(サーベイレコード)  作者: TOMA
第2部 黄金守りの不死竜と調査録 第2章 遙かなる古の遺産編
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第116話[表] 業火の攻防戦

<Side:Yuko>

 ――兎にも角にも回避しなくては……っ!


 連続して発生した未来視により、障壁では攻撃を防ぎ切れない事を認識した私は、即座に展開中の障壁を解除し、真上に向かって急上昇します。

 

 その直後、横薙ぎの炎――炎の剣を水平に振るったかのような赫灼とした軌跡が私の足元に生じました。

 ふぅ……。障壁を解除して急上昇していなかったら、まさに未来視通りになっていた所ですね……

 というか……本当に『振るって』いますね。剣ではなく腕ですが。

 

 そして……腕を振るっているという事はつまり、その攻撃を回避した事によって、魔物の腕が私の足元に来ている……という事です。

 チャンスとばかりに急降下し、腕に脚部のアストラルエッジ2本を突き刺す私。

 それに対して、「ガアッ!」という叫び声と共に、私を吹き飛ばそうと腕を激しく動かす魔物。

 

 いくらアストラル体の身体でも、気を抜けば吹き飛ばされるというものです。

 私はすぐに脚部のアストラルエッジ2本を突き刺したまま、腕部のアストラルエッジ2本も腕に突き刺しました。

 

 そう簡単に振りほどかせはしませんよ……っ!

 

 私は心の中でそう叫びつつ、バランスを取りながら刺しているアストラルエッジを抜いたり、また刺したりを繰り返し、魔物の腕を突きまくります。それはもうひたすらに。乱れ突くように。

 

「ガッ! グギッ!」

 魔物はそんな苦悶の叫びと共に、先程と同じく、別の腕を振るって私を排除しようとしてきました。

 なんともワンパターンな行動ですね! 既にその動きなら読めていますよ!

 

 未来視が発動せずとも見切っている攻撃の回避は容易いというもの。

 振るわれた腕をギリギリで回避しつつ、逆にアストラルエッジで斬り裂く私。

 

 続けて来る事も分かっているので、更に回避からの斬撃。

 そこから更に腕が来る……かと思いきや、さすがに見切られていると判断したのか、手のひらを目一杯開き、私を上から叩き潰そうと勢いよく振り下ろして来ました。

 

 私は斜め前方へ一気に踏み込み、その振り下ろしを避けつつ、床に叩きつけられた腕を斬り裂きます。

 

 と、その直後、

「グオアアアァァァッ!!」

 という咆哮が響き、床が広範囲に渡って、橙色と黒のまだら模様へと変色しました。

 

 これは……っ!?

 

 再びそこで未来視が発動。

 ――まだら模様に変色した床が業火に包まれ、それに飲み込まれる私と魔物の姿。

 

 ……って! この範囲から離脱しきれるものではっ!

 

 私は回避は不可能と判断し、防御障壁魔法を発動します。

 

 直後、ギィンッという重たい金属同士がぶつかりあったかのような音が響き、私と魔物が未来視通り、業火に包まれました。

 と同時に、魔物が腕を振るってきます。

 

 これは……ちょっとまずいですね……っ!

 

 案の定というべきか、防御障壁は炎と打撃によって、あっという間にヒビだらけになりました。まだ砕ける程ではないですが、そのヒビの隙間から業火が入り込んでこようとします。

 

 業火から発せられた火の粉が、そのヒビの隙間をすり抜けて私に当たりました。

「あつっ」

 熱さと痛みに、そんな声が口をついて出ます。

 

 まさか、このアストラル体に熱さと痛みが生じるだなんて……

 いやまあ……私の場合はアストラル体とはいえ、少し特殊なので、ある程度は熱さや痛みを感じるのですが、火の粉だけで、ここまでの熱さと痛みは感じた事がありませんでした。

 

「く……っ……う……っ!」

 ヒビが拡大する――細かく入り始める――度に、飛んでくる火の粉が増え、私の身体を焼きます。

 もちろん、本当に焼けているわけではないですが、焼かれるような熱さと痛みが生じます。

 

 と、そんな事を考えていると、業火がフッと消え去りました。

 ど、どうやら障壁は耐えきったようですね……

 

 魔物の方は、無傷といって良い状態です。

 もっとも、自分の生み出した炎でダメージを受けたりはしないでしょうが……

 

「グガアァァッ!」

 魔物が咆哮と共に、いつの間にか手に持っていた炎の剣と炎の槍――それぞれ2本ずつ――をデタラメに振り回してきます。

 

 くっ! デタラメゆえに見切りづらいですね……っ!

 

 魔物の攻撃を掻い潜り続けながら、隙を突いて攻撃を仕掛けようと試みますが、上手くいきません……

 ここは一度離れるべきかもしれないと考え、私は即座に振るわれる剣や槍の届かない距離まで後退しました。

 そして、魔弾での遠隔攻撃に切り替えます。

 

 と、次の瞬間、剣と槍から紅蓮の衝撃波が発せられ、それが魔弾をかき消しながら飛んで来ました。

 ……下がっても下がらなくても、こちらに攻撃が届く上に、こちらの攻撃を無力化してくる……というわけですか。なかなか厄介ですね……

 

 まあもっとも、魔物が衝撃波を放つ速さは、デタラメに振り回す速さよりも遅い分、まったく攻撃する隙のない接近戦よりは、マシですが。

 なにしろ、僅かにではあるのものの、衝撃波を掻い潜って魔弾が魔物に当たっていますからね。

 赤紫色の結晶もしっかり飛び散っているので、ダメージは入っているはずです。

 

 ですが……これだけでは倒しきれるか怪しいですね……

 出発前にエステルさんが改良してくれたお陰で、魔弾の消費魔力は軽減されていますが、それでも魔力の方が先に枯渇してしまいそうです。

 

 とはいえ、攻撃の手を緩めて穴から完全に這い出されてしまったら、一気に勝ち目が薄くなってしまうので、このまま魔弾による攻撃は継続しますが……

 何かこう……クリティカルなダメージを与える手段とかはないものでしょうか……

 

 私は魔弾を撃ち続けながら、そんな事を考えるのでした――

久しぶりに一方的に撃破するタイプではないバトルなので、ちょっと長くなっています……


とまあそんなこんなでまた次回!

次の更新も予定通りとなります、4月15日(月)の想定です!

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