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サイキッカーの異世界調査録(サーベイレコード)  作者: TOMA
第2部 黄金守りの不死竜と調査録 第2章 遙かなる古の遺産編
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第108話[表] 冥界・魔王因子と通信

<Side:Akari>

「ま、ふたりの驚きも、もっともという物じゃの」

 クレリテは肩をすくめながらそう言うと、一呼吸置いてユーコと私を交互に見つつ、問いの言葉を投げかけてくる。

「じゃが……ここに来てから、カリンカの雰囲気が少し違っているのは気づいておるじゃろう?」

 

「それはまあ……たしかにそうね」

「はい。なんというか、気分が高揚状態にあるというか……」

 私とユーコのその返事を聞いたクレリテは頷きながら、

「そうじゃな。ま、軽く酔っているかのような状態――高揚感に包まれている状態……と、そう言うのが一番しっくりくるやもしれぬのぅ」

 と、告げてきた。

 

「あー……なるほど。たしかに言われてみるとそうですね……」

 ユーコが納得してそう返事をしたのに続き、

「もしかして……いえ、もしかしなくても、例の魔王因子とやらがここの何かに反応して、カリンカさんを高揚させているとか、そんな感じ……よね?」

 なんて事を、顎に手を当てて思考を巡らせながら口にする私。

 

「うむ。間違いないじゃろうな。冥界に入った時点では特に何もなかった事を考えると、冥界そのものに『何か』があるわけではないようじゃ。あくまでも、この『セントラル・ラボラトリーの中』に、その『何か』があるのじゃろう」

 クレリテは頷きながらそんな風に言うと、そこで一度言葉を切り、腰に手を当てて首を左右に振りながらため息混じりに続きの言葉を紡ぐ。

「……もっとも、それがどういったものであるのかは謎じゃがな。……なにしろ、カリンカ以外には今の所これといった影響は出ておらんからの」

 

「まあ、たしかね。実は僅かに何らかの影響を受けているのかもしれないけれど……」

 私がそんな風に言いながらユーコの方を見ると、ユーコは、

「うーん……。私も灯も普段と何も変わらない感じですが、その可能性は無いとは言い切れないですね……。とりあえず、例の書物の山を調べるのが一番ではないかと」

 と、私に対して返事をしてみせた後、地下への階段の方へと顔を向けた。

 

「そうねぇ……そうするのが最良だと私も思うわ」

 私がユーコに続く形でそう言うと、クレリテが首を傾げながら、もっともな疑問を口にしてくる。

「うん? 書物の山とは一体なんじゃ?」

 

「あ、うん。実はクレリテに頼みたい事があって、それと関係するんだけど――」

 わたしはそう切り出して地下――隠された部屋で見つけた物について説明する。

 

 そして、その説明を聞き終えるなりクレリテは、

「なるほどのぅ。それはたしかに急いでディアーナ様の空間へと送ってしまった方が良いじゃろうな。敵がいつ強硬策に出てくるか分からんからの」

 と、そんな風に言ってきた。

 

「強硬策と言いますと……ここに大群を仕向けてくる以外の方法……。例えば、この場所を吹き飛ばすような、そんな方法を用いてくるやもしれない……と?」

 ユーコが顎に手を当てながらそうクレリテに問いかけると、

「うむ。さすがにこのセントラル・ラボラトリーそのものを吹き飛ばしたりはせぬじゃろうが、妾たちのいるこの辺り一帯を吹き飛ばすなり、崩壊させるなりといった事を、仕掛けてくる可能性はゼロではないじゃろう。……特に、ここに奴らにとって都合の悪い物があるようならば、なおさらじゃ」

 と、そんな風に答えてきた。

 

「あそこにあった書物の中に、連中にとって都合の悪い物があるかは分からないけど、だからって悠長にしていて吹き飛ばされたらシャレにならないのはたしかよね。……それでクレリテ、蒼夜と連絡を取る手段があるのよね?」

「うむ。ディアーナ様と話を出来るオーブ……あれのレプリカのような物を開発しておったのじゃが……ここに来る前に完成しての。それを持ってきておるのじゃ」

 私の問いかけに対してそんな事を言いながら、自身の次元鞄からオーブ……とは、似ても似つかない、四角い機械の箱みたいなものを取り出してみせるクレリテ。

 

「……なんなの? これ。あのオーブと全然違う気がするのだけれど……?」

「ま、当然そういう反応になるじゃろうなぁ……。さすがに神器と言っても過言ではないあのオーブと同じ物を、妾たちが生み出すのは難しかったのじゃよ」

 私の問いかけに対し、クレリテは肩をすくめながらため息混じりにそう返してきた。

 

「なるほど……。それはまあ、たしかにそうかもしれないわね。それなら、これはどういう代物なの? レプリカのような物なのよね?」

 そんな風に再び問いかけると、クレリテは、

「うむ。これはこうして携帯通信機を組み合わせて使う代物での……」

 と言いながら四角い機械の箱みたいなものの上部にあったソケットに、携帯通信機を挿し込む。

 

「これは……。一種のブースター……ですか?」

「ほう、良く分かったのぅ。そうじゃ、その通りじゃ」

 ユーコの問いに少し驚きながらそう言って頷いてみせるクレリテ。

 

「ブースターってどういう事?」

「おそらくですが……これを使う事によって、冥界とグラスティアとの間で、通信が成立するようになるのではないかと」

 首を傾げながらユーコに問いかけると、そんな推測の言葉が返ってきた。

 

「うむ。まさにその通りじゃよ。まあ、元々は鬼哭界とグラスティアとで、通信を可能にする事を目的として生み出した物なのじゃが、ここ冥界でも問題なく使えるぞい」

「へぇ……。それはたしかに『オーブのレプリカのようなもの』ね。……普通に『グラスティアとの通信を可能にする道具』って言えばいいのに」

 クレリテに対してそう返しつつ、肩をすくめてみせると、

「……その言い回しじゃと、なんというかこう……負けたような気になるじゃろう……?」

 なんて言ってきた。

 

 それに対して私は、やれやれと首を横に振りながら、

「負けるって、一体何と戦ってるのよ……。いやまあ、言いたい事は何となく分かるけれど……」

 と、ため息混じりに返すのだった。

冥界編は元々そこまで長い予定ではないので、あと数話で終わる……はずです。多分(何)


ま、まあそんなこんなでまた次回!

次の更新も予定通りとなります、3月18日(月)の想定です!

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